日本における原子力発電所立地受入れの政治過程  (2)日本の原子力発電 1  政治のはなし

U 日本の原子力発電

1 日本の原子力開発の歴史と特徴
 日本の原子力政策は、1954年、民主党の中曽根康弘を中心に進められた保守3党による原子力予算の計上をもって幕を開けた。翌55年には、自民・社会両党による議員立法として「原子力三法」(原子力基本法、原子力委員会設置法、総理府設置法改正)が成立し、現在の原子力行政の基礎ができあがった2)。当時は、資源小国でありかつ被爆国である日本は積極的に原子力の平和利用を推進していくべきであるという考え方が、広くコンセンサスとして成立していた。そして原子力エネルギーは「未来のエネルギー」であり、科学技術の進歩が人類の輝く未来を約束しているように考えられていた時代だったのである。人工衛星によって人類の宇宙飛行の夢が実現に一歩近づいたのとほぼ時を同じくして、57年8月27日、茨城県東海村に初めて「原子の火」が灯った。まさに「科学技術の輝く勝利」であり、原子力発電にとっては「バラ色の時代」であった3)。このような時代状況を背景として、60年代には日本各地で原発の新規立地が進んでいく。
 しかし、60年代後半頃からこの状況に変化が現れる。新規立地の計画が浮上した地域で受入れ拒否が相次いだのである(図表3)。この時期は公害が社会問題化し、大規模開発への疑問が投げかけられ始めたころであった。さらに70年代に入ると、原発の安全性に疑問を投げかける大きなトラブルが相次いだ。71年、アメリカでの緊急炉心冷却装置(ECCS)の実験結果が予想と異なったという情報が飛び込んできてからは、安全性に関しては十分実証済みといわれてきた原発技術に対する批判的意見が強くなってきた4)。中でも、74年9月に原子力船「むつ」が航海中に引き起こした放射能漏れ事故、79年4月のアメリカ・スリーマイル島原発事故などはマス・メディアで大きく取り上げられ、さらに80年代に入っても81年4月の日本原電敦賀原発放射能漏れ事故など、原子力開発の過程でのトラブルが頻繁に報道され続ける。そしてこの過程で、国民の間に原発への不安の意識(少なくとも原発の安全性に対する懐疑)が徐々に浸
透していったのであった5)。
 一方で、エネルギー源としての原子力の重要性は、70年代の2度のオイルショックの経験以降、さらに高まっていった。オイルショックの教訓から、通産相の諮問機関である総合エネルギー調査会は、75年8月「50年代エネルギー安定化政策一安定供給のための選択一」と題した答申を出し、従来までの「豊富・低廉・安定」というエネルギー政策における国としての政策理念のうち、安定性を最優先課題とすべきであるとした。これを受けて、通産・大蔵・農林・労働・経済企画などの閣僚を構成メンバーとする総合エネルギー対策閣僚会議は、75年12月、政策大綱「総合エネルギー政策の基本方向」を決定する。そしてここでは、準国産エネルギーとしての原子力6)の開発を推進することが、今後のエネルギー政策の中心の1つとして掲げられることになる7)。
 以上のように、原発を取り巻く環境は、70年代を境に大きく変化した。すなわち、原発の「バラ色」のイメージが崩れ、代わって「危険性」というマイナス面の認識が広がった。70年代に新たに受入れを決める自治体はなく、原発の新規立地は困難な情勢であった。他方で国家戦略における「石油代替エネルギー」としての原発の位置づけは一段と高まっていった。80年代の原発立地政策の置かれていた環境は、その実施の困難さと緊急性という両者の緊張関係によって語られよう8)。
 すなわち、日本の原発立地政策の特徴は次の2点に集約される。まず第1に、冒頭において指摘したように、日本の電力需要の伸びに対応すべく原発の建設が進められ、設備容量を着実に増やすとともに、総発電量に占める原子力の割合も増加してきた。しかしながら第2の特徴として、原発の「新規立地受入れ」は70年代に入ると突如として途切れており、原発の建設は、60年代以前に計画が決定していた地点において長いリードタイムの末に建設にこぎつけたり、すでに立地していた地点に増設を進めることによってまかなわれてきたのであった。
 本稿では以下、上記の2つの日本の原発立地政策の特徴を手がかりとして、原発を受入れる過程に焦点を当てながら、考察を進めていく。
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