ドラマを見て初めて、西山事件について調べてみた  読書メモ(09.6〜)

 恥ずかしながら、もっくん主演のTBSドラマ『運命の人』が、山崎豊子原作で、外務省機密漏洩事件(いわゆる西山事件)を描いたものだとは、見るまで知らなかった。
 この事件については、高校の政治経済の教科書にも、国民の知る権利と取材の自由をめぐる裁判として登場するが、「最高裁は、取材の自由については認めつつも、その限界について示した」という解説がちょろっとついている程度である。

 ふと本屋に入ると、店頭に置かれていたのがこれ。
澤地久枝『密約―外務省機密漏洩事件』(岩波現代文庫、2006年)
(もともとは中央公論社から1974年に出版したものらしい。)
 沖縄密約をめぐる外務省機密漏洩事件を、情報漏洩に手を貸した外務省女性事務官と同時代を生きた女性の視点から描いたものである。

 むちゃくちゃな裁判ではないか。

 政府が国民に嘘をついた。政治家と官僚が徹底的に隠そうとし、検察は男女の情事のレベルに問題を矮小化し、メディアが煽り、裁判所がそれを追認した。
 そもそも「国家機密」とは国民の生命と財産を守るために外国のスパイに対して守られるべき情報であり、政治家や官僚のウソは機密ではない。政策実現のために一時的に伏せられるべきものであっても、それは時間が経てば明らかにされなければならず、「20年経って調べたら全部処分していましたのでわかりません」というのは「機密」でもなんでもない。
 そしてそれを暴こうとすると、完膚なまでに葬り去られ、その後、毎日新聞社が倒産に追い込まれた。ドラマにはナベツネであろう人物が、政界を泳ぎながらのし上がっていくようすが対照的に登場する。

 おそらくこの事件のあと、日本から「政治記者」がいなくなってしまったのではないか。官房機密費を受け取りながら、記者クラブの中で政治家や官僚たちと共犯関係を結ぶようになったことで、国民の目となり耳となって、政治家や官僚のウソを見破る役割を果たす人がいなくなってしまったということではないか。

 とすると、原発をめぐる「報道のウソ」は、何も今始まったことではない。
 沖縄密約をめぐり、ライバル社が政府のお膳立てに乗って、毎日を潰した。それと同じことではないか。

 なお、民主党政権も最初の3ヶ月はこの問題に取り組み、自民党政権が否定しつづけた密約の存在を明らかにした。その後の腰砕けぶりと比べて、これだけは評価してよかろう。そして、情報公開こそが民主党に託された重要な政治的使命のひとつであったはずなのに、すべてに頬被りを決め込んだ時点で、民主党は自民党と同じ穴のムジナとなったということか。
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