イタリアは秋が新学期です。
今回は、イタリアの教育事情をお伝えしましょう。
基本データ・低レベルの教育予算
少子化のイタリアは、人口約6000万人で1世帯当り人員は2.4人。生徒数は、小学生(5年制)282万人、中学生(3年制)173万人、 高校生(5年制)273万人。授業は週27時間(北部40時間)、教員の受持は1週22時間です。
教員の平均年齢は50.2歳(若くない!)。
給与は15年勤務で年29287米ドル、EU諸国平均より約8900米ドルも低い状態です。OECD の白書で、イタリアの学校教育費は内容が悪く、教員への支出が低いと「落第」の診断がされました。
教科書代が上がり、家計を圧迫しているという声もあります。
イタリアでは、教科書の採用は教師とクラス評議会が決め、学校運営費は学校評議会が決めます。
35歳の女性教育大臣の「新方針」
今年、最大の話題は、 右派政権の下で35歳の美女が教育相に就任して提案した「新方針」です。
これをめぐり、野党や教員3大労組との間で議論の火花が散っています。
その内容といえば…。
教師数・教室の削減→ 小学校低学年は1人の担任教師が全教科を教える。
これは30年前に逆戻りです。
これまで1クラス(平均15人)に2〜3人の教師がいました。
その上87000教室を閉鎖。
理由は、教育予算を3年間で80億ユーロ減額すること。
17000人が職を失います。
「品行・態度」点数評価制度→中学と高校で、品行・態度点数評価制度
(5点以下は落第)を復活する。
この制度は、子どもの人格と成長をさまたげるとして、10年前廃止されました。復活の理由は、道徳教育の欠如が不良行為の低年齢化を生み、校内外の暴力件数が急増、麻薬使用や登校拒否を招いているというものです。
憲法教育の義務化→中学・高校で共和国憲法の主要部を地理、歴史、社会科で週1時間、年33時間教える。理由は、共和国憲法を否定したり、勝手な解釈がまかり通っているからというのです。
これには「教育内容への権力的な介入」といった反論が出されています。
「学力低下」と教員攻撃
このほかに、理数科目の学力低下が教育関係者を嘆かせ、特に北部・南部間の学力格差が問題にされています。右翼の北部同盟は、教員の3分の2以上が南部出身で資質が低いと攻撃。しかし南部出身者の3人中2人は臨時の代用教員であり、労組は正教員に採用することが質の向上につながると反論しています。
移民外国人
外国からの移民者が300万人になり、その子ども57万4000人がイタリアの学校に通い、このうち20万人はイタリア生まれです。これら外国籍の子どもに対して、右派政府による「隔離化」差別政策がささやかれています。

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