非正規労働者84万人が解雇の危機
今、イタリア人は“プレカリオ!短期契約労働”の正否を問うっています。米国の金融資本主義・カジノ経済破綻によって惹き起こされた経済恐慌の影響は市民の実体経済にも及んでいます。今年の経済予測でも国民総生産 −2%、失業 8.2%、財政赤字 3.8%対GDP、国の借金 109.3%対GDP、どの数字をとっても対前年比は過去最悪です。特に青年短期契約労働者260万人(全雇用の12,3%)を直撃し、その内、31万人が契約更新の保障がない社会的セフテイネット網からこぼれ陥る不安に慄いています。また、危険な兆候として先月、英国中部に在る製油所拡張工事をイタリアの建設会社が受注、イタリア人労働者を採用予定したが、英国人労働者が大規模な抗議行動を起しEU連合域内に労組側からも保護主義的な主張が出ました。
政府の経済景気対策
一方、政府の経済危機対策をまとめるとUE連合の基準に照らして以下の経済景気対策を進めています。売り上げ付加価値税の納税延期、法人所得税10%の軽減、鉄道と高速道路通行料の値上げ凍結。自動車や家電製品の買い替えを促す補助金支出が中心で今年中にエコカーに買い替える場合、値引き相当分として1台につき1500ユーロを政府が自動車メーカー に補助する。購入後5年以上たった家具や、冷蔵庫、皿洗い機などの家電製品を9月末までに買い替えた場合も補助の対象です。
非正規雇用者と低所得者へのセフテイネット構築
失業対策に一時帰休制金庫に80億ユーロを積み上げました。
(1ユーロ=約125円前後)政府の補助金又は補給費は次の通り
日本の麻生政権下のそれと比較して見て下さい。
* 年収6000ユーロ以下の低所得世帯に月額40ユーロ補助する。
* 年収22000ユーロ以下の世帯に200/1000ユーロの一時金。
* 年収31000ユーロまでの世帯に150/300ユーロの家賃の補給
* 年収15500の30歳までの青年世帯に家賃962ユーロを補給
* 学生の下宿家賃500/2633ユーロまで補給
* 住宅ローンの利子を760/4000ユーロまで補給
* 保育園の保育費1児童あたり120/632ユーロの補給
* 4人の子供扶養の両親には1200ユーロの補給
* 年収4万までの肢体不自由児の世帯に399/2100ユーロを補給
最大連合労組がストに突入!
これら政府の対策についてイタリア労働総同盟CGIL(561万人)は非正規雇用者と低所得者に対して充実したセフテイネット構築、未来展望が開ける経済政策の実施と高額所得者の税負担増額額を要求して12月、単独で100万人を超えるゼネスト、更に2月13日同傘下機械金属労組と国家公務員労組が第二次のストライキ、70万人を動員しました。しかし、他の2連合労組は参加しませんでした。ベルルスコーニ政府はこれまでの国と労使の3者合意慣行を無視してCGILの合意を抜きにして他の2大連合組織と協定を結びました。CGILが合意できなかった大きな争点は全国の労働協約を決める基準になるインフレ係数をこれまでのイタリア政府発表からEU連合のそれに替えました。通常、EU係数の方がイタリアのそれより低いのです。つまり、EU係数導入は実質的な的な賃下げになるからです。CGIL単独のゼネストについてN2の教会系の連合労組は「前世紀の古い形の左翼体質だ!」と批判しました。
教会も貧困者へのセフテイネット構築強化を要求
ストの背景として、国家機関ISTATの発表によれば750万人のイタリア人が貧困状態にあり、全人口の11.1%を占め貧困傾向はここ数年続いています。(貧困基準は消費物と社会サービスの支出月額が単身者世帯が591、二人世帯が986ユーロ以下を言う。)中産階層の没落、南北格差の拡大、貧困層65%は南イタリア、14%は工員世帯に集中しています。更に貧困予備軍家庭は89万世帯に達していると警告しています。この格差拡大について追い討ちを掛けたのが今、世界中に吹き荒れている経済恐慌です。一方、裕福層は10%と変わっていません。10%の世帯が全イタリア全財産の60%を保有しているそうです。
このように貧富の格差を左派勢力や教会によって是正要求がされ、右派政権は非正雇用者と低所得者へのセフテイネット構築政策の導入を余儀なくし、それも、EU諸国より遅れ、首相ははじめこの危機を過小評価していたのです。
イタリア左翼陣営は分裂したまま
一連のCGILの単独ゼネストに対して右派政権は「ストは破綻した!」とコメントして勤労市民を分断する居に出ました。経済景気の「景気」は“気持ちの景色”と書きます。政府当局がこれだけ市民の気持ちとかけ離れた言動をしては、青年の先行きをますます暗くさせてしまいます。青年や市民が国家に期待しているのは、右派連合政権か左派民主党のどちらが政権をとるのか、ということではなく、いかにしてこの閉塞感漂う現状を解消して未来への展望を切り開くか、ということです。
しかし、この間、不幸な事に左派陣営は分裂したまま、最大野党民主党はサルデニア州知事選で大敗し党首辞任に追い込まれ、結党の危機に直面しています。

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