2009イタリア地方選挙結果
今年の統一地方選挙はEU議会選挙と同じ6月6・7日に、決戦投票が選挙法の賛否を問う国民投票と一緒の6月21・22日に行われた。
主要な改選は59県知事・県議会、30県都(市)・市議会だった。
第一回目の投票では中道左派が14県、中道右派が26県知事・県議、県都(市)では中道左派が5市、中道右派が9市長と市議が決まった。決選投票は1回目の投票で50%に達しなかった22県(トリノ、ミラノ,ヴェネチア等々)と99市(ボロニャ、バリー、フィレンッエ、パドヴァー等々)で投票が行われた。その結果、第一回目の投票と決選投票で決まった県と市の首長と議員の勢力分布は中道左派が28県(50)、中道右派はトリノ、ミラノ,ヴェネチア等々34県(9)、県都(市)で中道左派は16市ボロニャ、バリー、フィレンッエ、等々(26)、中道右派は14市(4)( )内は2004年の地方選。
各党首は選挙談話
PDLのベルルスコーニは「この勝利は野党が私を放逐しようと画策したが失敗に終わった。私は苦痛の慰めと攻撃の間の中にあり、私に対するクデター的選挙戦であった。」
PDのフランチェスキーニは「右派勢力が伸張する中でわが党が反騰する環境を創り出し、右派の衰退が始まった。」
結果をどう見るか!
最終結果は全体として中道左派は改選前の50県から28県に、26県都から16市に大減少した。中道右派と北部同盟が大きく伸びた。
第一党になった県首長は中道左派が26、中道右派は76、北部同盟が6であった。
伝統的に赤い中北部4州の県、市町村の首長が選投票に持ち込まれた最大の原因はレーガ北部同盟の伸張であった。マルケ州内のフェルミニャーノ市では
33.5%にエミリアロマーニャ州フェラーラ県ボンデーノ市では22.5%に達した。
レーガ北部同盟の伸張が対前年国政選挙比3.4%から5.6%に達した 県庁所在地のある県都(市)はSondorio Pordenone Cuneo Reggio emilia Asti Udine Imperia Pesaro Urbino Modena Forli Cesena Alessandria Prato Ravenna Savona Parma
このことから中道右派勢力が勝った34県から北部同盟分を差し引くとPDLは19県でPDより9県も少なくなる。ここでもベルルスコーニ党は負けたことになる。
一方、中道左派が10%から最大16%失った県庁所在地のある県都(市)はCrotone Ascoli Ancona Macerata Fermo Chieti Terni Pescara Rieti Taranto
Brindesi L‘Aquila Lecce Perugia となっている。
旧イタリア共産党の遺産であるロッカフォルテと呼ばれる強固な地盤が崩れかかった、と言えよう。特にペルージャに象徴されている様に見える。
従って、今回の統一地方選で中道左派が中南部で政権を維持できた政治勢力はもっぱらIDVの支持票があった。
中道左派連合が負けた原因は何か?
1、移民外国人への恐怖なのか?
今回の統一地方選最大の争点は雇用を護り、市民生活を”外国人・社会不安“からどのように防衛するかにあった。有力日刊紙レプブリカが発行しているイル
ヴェネルデイ週刊誌6月26日号に「外国人に対する世論調査」が特集されている。以下に抜粋してみると、
Q1 外国人はイタリア人から仕事を奪いますか?
1998 2003 2009年
はい 57 41 47
いいえ 43 59 53
Q2 外国人はわが国にとって資産を産みますか?
はい 42 64 55
いいえ 58 36 45
Q3 外国人は犯罪だけをイタリアにもたらすのですか?
はい 51 45 35
いいえ 49 55 65
Q4 暴力事件の増加について原因は何だと想いますか?
刑罰が軽すぎる 68%
外国人が多すぎる 45%
社会が貧困だから 25%
警察力が弱いから 26%
Q5 一般的に移民外国人が怖いのは何故ですか?
彼らに仕事が無い 36%
外国人が多すぎる 25%
イタリア人と違うから17%
彼らが犯罪を犯す 14%
Q6 あなたは移民外国人が怖いですか?
はい 48
いいえ 52
以上の世論調査の結果を見るとイタリア人は人種偏見者ではないが
半数近いイタリア市民は移民外国人の受け入れについて不安を抱いている。
その原因は仕事が無い外国人に在ると言えよう。今回の選挙結果は先の外国人排除法を可決した中道右派政権の政策を市民が支持した事を裏付けている。
北部同盟が政権にある北イタリアの各都市では武装した自警団を組織しようと試みている。特にルーマニア人による凶悪犯罪が頻発している。このためイタリア政府はルーマニア政府に申し入れを行ったがルーマニア政府は「国内の凶悪犯罪者がイタリアに逃亡して貴国内で犯罪を犯しているがルーマニア人全体に対する貴国の市民感情は許せない」と拒否された。
外国人がらみで中道右派が中道左派から奪った県は Savona Milano Belluno
Billa Novara Verbania Cremona Lecco Lodi Piacenza Macerata chieti Pescara Venezia Ascoli piceno Frosinone 県都(市)はBergamo Pavia Verbania Cremona Prato Ascoli Pescara Campobasso
マフィアの汚染・政治との癒着
6月25日イタリアの会計検査院は公金の買収/贈賄が600億ユーロに達した国家財政の腐敗による危機を勧告した。その主な経済犯罪は医療保険関係、請負下請け契約、ごみ処理ビジネスでそれらの“闇税金“と言われる上納金が30%も増えた。さらに脱税は1000億ユーロに達しているそうだ。贈収賄はコンサルタント料、旅費返済と言うように手口も巧妙化している。その象徴がナポリで県政が第1回目の投票で中道左派が完敗した事実であろう。7月に行われるG8サミット開催地は震災地ラクイラに決まったが早くも復興金を巡ってマフィアの汚染が心配されている。
今回の地方選でもマフィアがらみで中道右派が中道左派から奪った県と県都(市)はNapoli Avellino Salerno Teramo Bari Lecce Taranto Crotone Caltanisetta と想われる。
中道左派の再構築のために
左派のたち直りにはその中心政党であるPDがきっちりしたリーダの選出は勿論だが先ず、政策を確立しなければならないであろう。中道左派連合の最大政党民主党PDの書記長が2月に行われたサルデニアの敗北責任をとって辞任してしまった。そのあとを継いだ旧キリ民党左派の出身者フランチェスキーニは良くやったと評価されよう。今回の教訓は中道左派連合の統治能力とクリーン度を問われた、事だと言える。
その象徴が繰り返すが、ナポリ県知事、県議選で第一回目の投票で完敗した。
言うまでのない、ごみ処理問題であった。15年間も州、県、市の各首長はすべて左派政権であった。左派の彼らは問題の解決を先送りにしてきた。
更に度重なる汚職が蔓延し、組織暴力団カモラがうしろで操っていた。
昨年にはアブルッツオ州知事が医療費問題は収賄で逮捕され、辞任議会解散に追い込まれた。出直し選挙は11月に行われたがもちろん右派が大勝した。
ベルルスコーニドリームはいつまで続く!?
幸いな事にイタリアはまだ地方政治に於いても投票率が高い。
しかし、選挙民の意見は半々に別れている事を認識したい。
ベルルスコーニの女性関係で私生活スキャンダルは今では国政リーダのモラルが問題化して国のイメージを大きく落とし、反省の無い、むしろ新聞への攻撃を強める首相に対して外国紙から首相の紊乱を連日報道され、英国紙の複数紙は首相の辞任を示唆している。教会もベルルスコーニに私生活の自重を促している。更に、重症は伊政府と中央銀行総裁、国際金融機関のIMF, OECDとの間に大不況下にある経済認識に大きな違いがある。
発表された経済指数イタリア政府 伊経団連 伊中央銀行 OECD IMF
国民総生産2009 −4.2 −4.9 - 5 - 5.5 - 4.4
同 2010 0.3 0.7 0 0.4 0.4
失業率 2009 8.6 8.6 8,2 8.4 8.9
同 2010 8.7 9.3 10.0 10.2 10.5
消費率 2009 - 1.9 - 1.9 - 2.6 - 1.9
同 2010 0 0.7 0 0.1
財政赤字 2009 4.6 4.9 4.5 5.3 5.4
同 2010 4.6 4.7 5.0 4.5 5.9
輸 出 2009 -15 - 17.0 - 20.9
同 2010 0.7 2.5 - 0.7
上表のように発表された経済指数はどれも史上最悪である。
事実、世界中の指導者が今回の経済危機を「100年に一度」と重要視してその対策に奔走しているのにベルルスコーニ政府はむしろ彼らを「悲観主義者、破局主義者」と非難して「わが国はどこの国よりも早く危機から脱出する。誰一人取り残さない」と、この選挙戦に臨んだのだった。しかし、ベルルスコーニのカリスマ性と金力で戦った選挙でも半数のイタリア人が中道右派政権を支持していない事実を見せ付けた。つまり、中道右派の政権は決して強硬な政治的基盤を持って居ない。もし、左派勢力が選挙民から指示される政策を確立させたらこの政権はすぐに倒れるのではないか?
ベルルスコーニ政権を助けているのはPD党を中心とした左派政党と労働界の内部が分裂状態、にあるからだ。
完

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