イタリアの中道右派政権は来春、総選挙か?
首相の座が未だ任期2年半あるにも係わらずベルルスコーニ政権は持ち堪えられない情勢で、来春、総選挙に打って出る可能性が強まった。前回の総選挙後、首相が連立を組む政党「北部同盟」との連携を強めたことから、下院議長の反発を招き、4月に行われた与党「自由国民」の党大会で、首相と党ナンバー2の下院議長が怒鳴り合いを演じ首相が「下院議長を辞めろ」と迫り、議長は「おれを追い出す気か」と叫んだ。 その後、イタリア共和国憲法が保障する「表現の自由」を侵す危険性がある盗聴規制法案、通称「さるぐつわ法案」が上院で可決されたが、ストップしている。この秋になって「自由国民」は決裂、フィーニ下院議長は新党FLIを立ち上げた。この為、首相は下院で安定多数を失った。”法は全ての人に平等である。“ に反する、首相の保身画策が相次ぎ今夏には憲法で禁じられている秘密結社P3に関与していた疑いがある。9月には青年支持者集会でヒトラーを擁護する発言を行い、首相としての資質を疑問視する声が高まっている。
政界入り後、弁護士への謝礼・裁判費用が計2億ユーロ
この10月15日には、ローマ地検が首相と長男に対し、新たな脱税容疑で本格的な捜査を開始、新容疑は一族で経営する企業グループの傘下にある民放が制作したテレビ番組や映画をめぐって、首相らはその制作で得た著作権料を申告せず、脱税した疑いが持たれている。数々の汚職疑惑や女性スキャンダルが発覚したベルルスコーニ首相は、1994年に政界入り後、弁護士への謝礼・裁判費用が合計2億ユーロに達し、汚職裁判などこれまで自らが絡んだ裁判は100以上に成る。今も、首相は裁判の証人に60万ドルを渡し偽証を依頼したと贈賄罪に問われる被告。
首相の宣伝メディアがイタリア経団連会長を脅迫?
実態経済が40年前に 逆戻り、租税の負担割合も43%(対GDP)に上昇、財政問題では、赤字の増大で、来年から2年間で240億ユーロの歳出削減を決めるなど、国内経済は停滞感が漂っている。ベルルスコーニ政府はこの現実を直視せず、経済危機の始からむしろ批判者を「悲観主義者、破局 主義者」と非難して「わが国はどこの国よりも早く危機から脱出し、誰一人取り残さない」と、豪語した。このような、首相の経済運営を厳しく批判するのは野党や労働界に止まらずイタリア経団連の女性会長も<、、、もう少し、政府が出来ることがあるはずだ。。>と批判した。首相の弟が社長で“首相の宣伝メディア”と呼ばれ、ミラノに本社を持つ日刊紙イル・ジョルナーレ(120万部発行)新聞社の副編集長が経団連の会長秘書に対し<首相に対する批判をやめなければ、会長の私生活を暴露する>と言う脅迫めいた電話を繰り返した容疑が浮上。その後の記者会見で同紙の編集長は、会長側と副編集長の会話は「ジョーク に過ぎない」などとうそぶいた。
経済危機が生んだ200万人を超える失業者
大富豪家・首相の不倫騒動は離婚した夫人に毎月30万ユーロもの慰謝料を支払っている。この金額は事務職員標準月給の160人分に相当する。一方、市民はこの10年間に一人当たり5500ユーロの減収(国家中央統計局)に達した。2008年に始まった未曾有の世界的経済危機は80万人が職場を失い、失業者は200万を超え、特に青年短期契約労働者20万人が解雇の瀬戸際にあり、60万人が一時帰休失業に投げ込まれた。
CGIL機械金属労組がローマに30万人を集めゼネストを要求、
労組設立100周年を迎えたイタリア最大の労働総同盟(550万人)傘下のFIOM機械金属労組が10月16日、労働、権利、民主主義、合法性をスローガンに掲げ単産でローマに30万人を集めて大決起集会を開き、雇用と労働のため経済政策を政府に要求してゼネストをアピールした。イタリアを代表するフィアット自動車の経営危機を再建する経営側の提案について(分社化、生産拠点をポーランドに移し、30分間の休憩時間短縮による量産増)中道左派支持組織の3大労組が統一行動が取れなく、労使交渉が分裂妥結を生んだ。労働総同盟傘下のFIOM機械金属は再建案を批准しなかった。理由は、もし、批准すれば労働者の権利がまた侵される。FIOMはイタリア基幹産業の機械金属労働者150万人の先頭に立ち、イタリア労働運動の機関車的役割を担ってきた。そのFIOMが再び労働運動のリーダーになれるのかが、問われていただけに、今回の決起集会は今後の政局、特に中道左派の結集に大きな影響力を与えるかもしれない。右派政権が崩壊の崖っぷちに立たされているにも拘わらず、イタリア中道左派政党は未だ、政策の統一方向が見えない。野党最大の民主党は左翼部を切り捨てる意見が多数を占め、党内すらまとまっていない。野党の統一意識は先ず、現与党に有利な選挙法の改定を要求している。

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