経済危機の嵐がイタリア社会を直撃している中で。。。。。
今年のイタリア統一地方選挙は史上最悪の政治社会経済情勢の中、5月5―6日、決戦投票が20−21日に行われた。選挙民は930万人、投票率は史上最低を記録して、40%近くが棄権した。 人口15000人以上の市では中道左派系が56から95市に躍進、PDは第一党に。左々派系の「価値あるイタリア」と市民運動系の5Stelle運動は右派を食っての旋風を巻き起こした。
一方、中道右派系は98から34市に大きく後退、北部同盟系と共に崩壊した。
特にLega Nord は3分の1に大激減、その他派が14から39市に増加した。
県都の市長・市会選挙結果を見ると中道左派市はAlessandria, Asti,Genova,
Como, Monza, L’Spezia,Piacenza, Lucca, Pistoia, Rieti, L’Aquila, Isernia, Taranto, 以上12市。中道右派はGorizia, Frosinone, Trapani,
Catanzaro,Lecce 以上5市、その他党派がCuneo, Verona, Parma, Belluno, Palermo, Agrigento以上6市だが内、3市は左々系であった。
今年も成長経済がマイナス−1,7と予想されるが、4月 20日付け日刊紙La Repubblica は4面全ページを使ってかっては、持ち家だった資産を手放した北イタリアの中流勤労世帯の実態を伝えている。夫46歳(月収手取り1250€IT教師)、妻46歳(事務職の補助)に息子(倉庫作業員)と娘(学生)の4人暮らし。夫は勤務先からすでに8ヶ月給料の未払いで、PCを教える闇労働で300−400€の収入、妻は7時間労働で月収150€、両親から数百€の援助を受けている。最低の固定支出は1863€で生活が成り立たなくCaritas(カリタス)<貧困者援助活動事業>のメンサ(食堂)に列んでいる。自殺者が年間3800人(ドイツは約2倍)を記録し、今年だけでもすでに昨年を上回っている。今年に成ってから企業の倒産は毎月1000社を越え、企業家の自殺者はすでに35人に達した。原因は経営が成り立たずが第一位でいずれも、資金手当が出来なく、倒産や自殺を出している。このような惨事についてモンテイ首相は<政治が手当てしなかった10年間の失政責任は旧政府にある>とした。当然、PDLが反論してモンテイ政権を信任しないと、揺さぶっている。
一方、脱税と戦う各地の税務署が何者かによって破壊、爆弾が仕掛けられ12税務署が襲撃されている。加えて、アナキーストが各地で暴れ殺人までも犯してまさに騒然としたイタリア社会だ。
エソダーテイと労働憲章18条雇用問題
政労使3者間の激しい攻防戦が展開している、「労働憲章18条(15人以上の企業は正当な理由無く解雇できない)」の改定提案について政府は頭初、「正当な理由無く解雇出来ないが、罰金を払うことによって解雇を可能とする」という内容であったが、労組側の結束した強い抵抗にあって<罰金付き解雇自由>は手直しされた。現在、最大の争点は“エソダーテイ”と呼ばれる年金受給を先送りされた50〜65歳の失職した無収入者の処遇である。(Esodato è il lavoratore senza lavoro e senza pensione con età compresa tra 50 e 65 anni che si trova nella condizione di aver lasciato il posto di lavoro per ristrutturazione aziendale,)
モンテイ政府は“エソダーテイ”を63000人と計算しているが、CGILによれば13万人といわれる。 この“エソダーテイ”の待遇を巡って労組側は5月にゼネストを構えて社会的セーフティの改善を逆提案して政府と交渉を続けた結果、65000人が救済された。さらに、政府は23億€を南部の青年、老人、保育園に対して出資することなり、CGIL書記長は<初めての前進>と評価した。
左々派系の「価値あるイタリア」と市民運動系の5Stelle運動の大躍進
この2つの政治勢力はもともと、PD民主党を中心とする中道左派系の選挙民であったが、PDの説得が実現せず、それぞれ独自候補を立てた。
北イタリアパルマ市は人口18万人で1502年創立のパルマ大学がある瀟洒な都市に5Stelle運動の市長がはじめて誕生した。パルマ市は食文化、農業加工産業の中心地(パルマの生ハム、チーズのパルミジャーノ)であり、改選前はPDL右派の市長であったが莫大な負債金額を残し、はじめの投票で敗れた。決選投票では中道左派候補と5Stelle運動の間で戦われた。5Stelle運動の新市長は「我々は大きな工業都市で初めての<実験市>となった。 政策の実行成果を見て欲しい。新しい政治であり、第三の共和国の出発であり決して反政治ではない。」と記者会見した。
一方、シチリアの州都パレルモ市人口67万人で改選前はPDL右派の市長であったがはじめの投票で敗れた。決選投票ではIDV「価値あるイタリア」のオルランド候補と30代の若いPD候補との決戦投票に成りIDVのオランド候補が72,4%を得て4度目の市長に返り咲いた。ここではPD内の事前投票でマフィアに暗殺された検事の姉を候補に立てたが若者に敗れてしまった、経緯がある。左々系の伸張は中道左派=穏健な左派に飽き足らない市民が新しい左派を求めている。それはインターネットによるネットワークを通じた市民参加の場であり、従来の左翼理論を持った政党や活動タイプで無いポピュリズモが特徴である。その代表が<5星運動>である。パルマ市長独自支持率20%を頂点に4市村長を選び163の村議員、平均年齢は38で最年少者は18歳であった。世論調査の傾向では17%で既成政党は戦々恐々である。
Il MoVimento 5 Stelle 5星運動
2005年7月、5星運動としてインターネットに基礎を置きインターネットを媒体とする市民団体としてベッペ•グリッロ氏と友人達が立ち上げた。リーダーは ベッペ•グリッロ氏で1980年代は売れっ子の政治風刺コメデイアンとして活躍していた。 イデオロギー ;5星運動のシンボルは1)公的水資源、2)運輸送手段、3)社会正義の発展、4)持続可能なモビリティ5)エコロジー。以上に見られる市民生活の根本に関わる空気汚染や温室効果ガスの排出量 ; 騒音公害 。 混雑 事故 。 都市部の劣化(歩行者を犠牲にして車両によって占有されるスペースによって引き起こされる) 土地の消費量(道路やインフラの建設によって引き起こされる)の環境汚染から人間を守る直接民主主義を掲げる運動で2012年登録者は20万人と言う。2008年地方選に5星運動として市民リストで11議席を得る。2009年10月全国組織として5星運動を展開する。
定款の1条には「5星運動は“協会”では無く、www.beppegrillo.itに表示されたエコロジー保護と政党支配に反対するコンピュータのネットワーク市民運動体である」と規定された“インターネットワークの政党”である。
政策綱領 には「国家と市民」の関係を次のように規定している。現在の国家組織は官僚的、越権的、コスト高で機能していない。国会は機能せず議員は政党のシンボルにすぎなく、憲法は適用されて居ない。憲法はすべての公的レベルで教えなければ成らない。国会議員の特権はすべて廃止して、報酬は国民の平均収入に準じる。県制度は廃止して住民5000人以下のコムーネは統合する。兼職の禁止、公的政党助成金の禁止と廃止等を掲げている。また、係争中の市民は結審するまで選挙に立候補出来ない。議員の報酬の重複受領の防止(例:市長とMP)
大統領との選挙論争の模様
選挙期間中、大統領は<5星運動がブームを呼んでいるとは想わない。選挙後、統治能力や政治問題について政党界や市民からからいろいろ反省の意見が出てくるだろう。> 一方、5星運動のリーダーは<1年後には総選挙があるし、その後、あなたの任期は終わる>と応酬。モンテイ首相は<この選挙の結果は政府には関係ない>と等距離を置いている。
第3次共和国はどこに行く?
5月23日大統領と首相はじめ共和国の首脳がシチリア島パレルモ市に集まり
マフィアに暗殺された検事ジオヴァンニイ ファルコーニイの20周年記念追悼式で<マフィアの撲滅>誓い合った。何も、新しいニュースでは無い。
歴代政府がマフィアと戦った。しかし、マフィアは20年前よりむしろ強くなっているいる。それはマフィアの汚染が中北部へと拡がっているからだ。イタリアの闇経済30%の内、少なく見積もっても15%以上はマフィアに握られている(政府銀行)と想われる。従って、市民が国家と政党政治に信頼を置くときは第一の課題にマフィアを負かす強力な国家を必要としている。第2は清潔な政治である。選挙後、日刊紙La Repubblicaは下院議長フィーニ氏が<1992年以来最悪だ!>(注、タンジェントポリ・構造的大疑獄事件)と政治危機感を伝えている。その裏付けは地方選で市民棄権者が40%越えた事実が政治に対する不信感を証明している。連日マスメディアをにぎわす各州政府で汚職が摘発され、国から交付された政党助成金の使途不明(マルゲリータ、をはじめ)や、特にLega Nord、は政党助成金と国から引き出した補助金を私用に流用して私腹を肥やし、党首のボッシはじめ直系の幹部は辞任に追い込まれた。選挙結果は政治勢力が3分の1以下に落ち込み反ボッシの北部同盟内野党でヴェローナ市長のみが当選。一方、ベルルスコニーが引いるPDLの凋落は党解体に瀕している。党首の<失われた10年>の失政、金権政治と国政を私物化した結果であろう。第3の課題は諸制度の改革である。下院は5月22日、政党助成金の使途を明らかにし、交付金を50%に削減する法律を可決した。次は選挙法の改定が上がっている。来年5月には上下両院の解散、総選挙が実施される。これから1年間に選挙法の改正をはじめ、憲法改正を伴う諸制度(大統領、国会、議員数、政府機能等)の改革法がどの程度進行するかに掛かっている。これらをひっくるめて<リフォルマ>と呼ばれる改革の実施がイタリアの各界から一致したかけ声が上がっている。経済危機に追い打ちを掛けたのが北イタリア北部ボローニャ付近で起きた震災だ。モンティ首相は5月22日、の被災地を訪問しその後、ローマでの閣議で政府は非常事態を宣言。被災地支援に全力を挙げるとした。(完)

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