レンツイ首相はどん底イタリアに奇跡を起こす男になれるか!?
イタリアはレンツイブームで沸いている。2014年5月25日欧州議会選挙でベルルスコーニのFI党から150万票もPD党に流れ40,8%と記録的な共和国歴史上最高の得票を獲得した。党内野党も首相を絶賛し、PD主導による国家機構の改革を進める意向だ。 レンッイ首相は5月25日の結果は<イタリアが心配を払拭してより強い希望が勝利した。政府はより強いイタリア再建、一連の諸改革を任期満了の2018年までに仕上げる。>と言明した。
雇用促進、選挙法の改正、上院の改革、県制度改革
これより先、2014年4月11日(金)付アメリカの週刊誌「ニューズウイーク」は<伊国の新首相 は He's Only Human猛烈な仕事人間でツイッター中毒……イタリア再生という不可能な任務に挑むマッテオ・レンツィの素顔と実力>どん底イタリアに奇跡を起こす男と報道をしていた。
2014年5月25日欧州議会選挙
ヨーロッパ連合の加盟国で作るヨーロッパ議会の選挙が、5月22日から25日までの日程で行われた。 5年ごとに行われるヨーロッパ議会選挙はEUの政策に民意を反映させるため各加盟国に割り当てられた751の議席を選ぶもので、有権者は28か国でおよそ4億人だがイタリアは73議席が割り当てられ激しい選挙戦が展開された。
今回の欧州議会選の特徴はドイツ主導による緊縮政策が経済不況を長期化させ、各国の信 用不安、失業率が特に南欧諸国を中心に過去最悪レベルに達し、生活苦の市民不満が極右政党などEU統合に懐疑的な勢力に投票し約、20%の議席を増やした。
上の欧州議会選挙結果表は如実に欧州の危機を語っている。ドイツを中心とする緊縮財政運営から雇用と経済成長を主とする政策変更をイタリアは訴えた。
イタリアにおいても投票率は56%で前回より19,2%も低く、市民の半分近い棄権者がUEへの懐疑主義を高めて居る。
今年の下半期はイタリアがEU連合国の議長国を執ることからレンツイ首相はUEの政策変更を強く訴える。
左翼連合は4%を得て3議席を獲得した。<結果に満足しているが、より強い我々をメデイアから無視された。これから反ヨーロッパ主義者と緊縮、耐乏政策、新ファシスタとの闘いを進める。>とコメントした。
今後については5星運動との提携を模索して新しいイタリア左翼の形成を模索している。
5星運動は選期間の終盤でリーダベッペ グリッロは<PDを上回る得票を得て、勝利の暁には政治家、大統領、財界の幹部を人民裁判に掛けてイタリアを粛正する。>と言い放った。FIベルルスコーニは<彼は独裁者で危険!> 結果はPDの半分の得票しか得られず5星運動は失望し<イタリアは年金生活者の社会で改革を出来ない国だ!>とコメントした。
そして、下部組織からはリーダベッペ グリッロの辞任を要求している。
しかし、彼は英国で第一党に成った極右政党の共同戦線に加わろうと模索している。一方、割れた分派5星運動は左翼連合との提携を考えている。
北部同盟は昨年政党助成金の大規模な私腹化が暴露されて書記長始め党首脳が一新した。
新しい若い党首はフランスの極右政党レ・ペンを訪ねて統一戦線を張ろうとしている。 その目的はユーロ通貨体制から離脱、移民者を拒否するための共同行動を執ることだ。
中道右派の本流FIのベルルスコーニは最高時2008年国政選挙の半分以下のたったの16%の得票でガックリ、それでも<私の党がなければ改革は進まない>と言ったが、彼の凋落ぶりは歴史的であった。
その他、中道連合は現状維持に留まった。
規制緩和や構造改革に着手
イタリアの政界は左右両派とも硬直し20年間の停滞は妥協と欠陥だらけの旧体制、経済を牛耳る既得権益層に切り込む意志を示さなかった。 時代が要求する旧体制と対決する新世代の政治家レンツィ(39歳・PD書記長)はしびれを切らした労働界、経済界の意向を受けて前レッタ政権から政権をもぎ取り今年2月末に誕生した。 旧世代の政治家としらがみの無い若いレンツィ首相は各界での人気は群を抜いて高く、支持率70%台をキープし、首相就任後まもなくTV出演し25%のシェアー200万以上の聴衆者を集めた。 39歳のレンツィ民主党書記長は上・下両院に信任され50数日後、復活祭休日を前に10項目の緊急政令法を閣議決定し直ちに発効させた。
1994年、新時代を担うと期待され颯爽と登場した“メデイア王” ベルルスコーニ政治は、「一族は繁栄し、国家と民は貧す」だったと、言えよう。 5月4日付けレプブリカ紙は<たったの10家族の資産家が労働者50万人世帯分の価値に匹敵する>と富の格差をレポート、ベルルスコーニ家は6位に位置する。一方、国家統計局2013年版の発表によれば失業者数は630万に達し、10万人の青年が外国に職を求めて祖国を離れ国富の頭脳が流失した。
イタリア人が2014年に期待は雇用
レンツイ政権は青年の新規雇用について新しい政令を公布した。
1, 雇用有期間は最高36ヶ月で以後は無期限契約に移行。
2, 上記契約更新は5回出来る。旧契約は8回だった。
3, 企業は20%以上の雇用有期間労働者を採用した場合に企業は罰金を支払う。つまり、有期間労働契約20%以上をを認めない。
但し、5人以下の企業は除外される。
4, 見習い労働者(29歳まで)の採用は20%まで許容される。但し、50人以上の企業。
5, 連帯契約は社会保険料の負担を軽減する。
以上の対策によって数百万の青年(14歳から35歳)が安定した雇用に繋がると説明している。
1000万人以上の勤労所得者に月額80€を還元と法人税10%引き下げ
イタリア人の給料日は昔から毎月27日と決まっているが5月27日の給料支払い日から毎月ボーナスと称する所得税、80€が還元され給料袋が膨らむ。
年収8000から25000€までの給与所得で対象者は1000万人を越える。
首相は4月19日復活際休日国民にアッピールして<80€のボーナスは料理皿の「前菜」にすぎず、これからはファミリーへの援助を本格化する。>とアピールした。
財源捻出は国家歳出の見直し
*公用車を1省当たり5台、合計で600台に削減して余った車は競売する。
*高官のの執務室広さを44から24平米に縮小
*地方自治体が毎年垂れ流す公務費の膨張による赤字を認めない
*国防費の削減、F35戦闘機購入1億5000万€を削る
*州、県、市町村の費用支出は削減してオンラインシステムとする。
*イタリア中央銀行の評価額を高め26%を課税する。
*役所の高給官僚や公団・公社のトップは24万€に引き下げる。
*無益な公団・公社は廃止、市営事業1000社に絞り込む。
皮肉にもこの日、国家中央統計局は2013年労働所得がゼロだった世帯は113万世帯であったとショキングな発表が有った。
2012年の申告所得は平均19747€、自営業者の80%は20000€以下だった。
年所得30万以上の高額所得者は30240人、経済危機で35万人が所得申告がなかった。年所得が15000€以下の納税者は2人につき1人だった。
報酬ジャングルの終焉と高額給与所得カット
イタリアの高給官僚の報酬はジャングルと言われその実態が隠されて居たがレンツイブームでその一部が明らかになった。高給官僚の月収は財務省次官294000、国家の総会計士303353、会計監査院長311000、イタリア放送協会RAI総支配人65万、国家警察長官313200、破棄院長(最高裁長官)311000ユーロ。 以上の役職者の給与はすべて5月から一律24万€の報酬に引き下げる。 政府系の公団公社社長の給料は現行575000から133000€であるがこれらも一律25%カットになる。
レンッイに言わせれば無益な公共事業は1300億€にも達している。
尚、民間のFIAT系雇われ社長F1のフェッラリー社長の月給は474166€である。
5月25日の統一地方選挙結果 欧州議会選挙と同時に行われた今年の地方選挙はレンツイブームに乗って民主党を中心とする中道左派が圧勝。ピエモンテ、アブルッツオの2州知事が右派から左派が奪還を果たした。29県庁所在地の首長改選は中道左派がフィレンツエ市長はじめ9市で圧勝、中道右派は2市に留まり、決戦投票に持ち込まれた18市(中道左派14、中道右派が4市)でも中道左派が圧倒的にリードしている。
完

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