何処の国にも人々の間で使われる下品な恥ずかしい言葉(パロラッチャ)がある。
この "V”はイタリア語Vaffanculo「ヴァファンクーロ」の略で日本語に訳すと
「バカヤロー!、くそったれ!」と言う教会からも禁止されているパロラッチャ、一番恥ずかしい最低な下品な言葉だ。
そのバカヤロー・デーイが9月8日、イタリア左翼の砦で気品高い文化都市ボローニャの市庁舎前広場に数万人の市民を集め壇上から
「、、、有罪判決を受けた政治家のバカヤロー達を国会から追放せよ、、、、」と大声でバカヤロー!を連呼、叫んだ人はもともと左翼陣営の有名な喜劇タレント、ベッペ・グリッロ。
この日彼の呼びかけで全国で30万人以上が賛同署名した。
グリッロが連呼する「、、、、バカヤロー!、、、、バカヤロー!」に賛否両論で政界を巻き込み今ではグリッロ旋風を起こしている。
それにしても遂にイタリア社会はここまで品格が落ちたのか、、と想う。
しかし、庶民の気持を代表したこの 「バカヤロー!もう、いい加減にしろヨ!」が解らなくもない。
過去、中道右派政権が5年間、そして現行の左派政権一年半に成るのに庶民の状態は一向に良くならない。
痺れを切らした民衆がバカヤロー・デーイに賛同したのだ。
背景には市民の政治不信が大きく“政治はもういい加減にしてくれ、これ以上我慢できない”と言う不信感情があり、
右派の日刊紙では「ファシズムだ!」とこれまた大げさな見出しをつけた。
バカヤロー・デーイ第一は
機能しない政治に高い不信と危機感であろう。
イタリアの政治コスト高はEU連合国内でも有数に数えられ。
上院議員の歳費は月額22097ユーロ、下院議員は21521ユーロ(いずれも税引き前)で仏独国会議員歳費と比べるとイタリアは約44%も高いのだ。
更に政党助成金の交付(国会に議席を持つ政党)は2億ユーロを越え仏独の約2倍が諸政党に国庫金から支出されてる。
それにも拘らず市民の生活状態は改善されない事への痛烈な抗議だ。
バカヤロー・デーイ第二は
治安の悪化であろう。
正義は何処にある?と問う。
監獄が一杯になり42000人の収監者を恩赦で出獄させた。
もう、すでに50%以上の受刑者が再犯を犯し監獄に戻った。
右派のベルルスコニーと議会運営上の取引があった。
恩赦にによって出獄した受刑者の中にはかなりの重罪の凶悪犯も含まれ、
これですっかり左派政権の信用をうしなった。
その結果、各地で犯罪がミラノやボロニャの市長は自冶体にもっと「警察権」を要求してる。
バカヤロー・デーイ第三は
労働災害による死亡事故に抗議。
INAIL(労災基金)の発表によれば2006年には927000件の労働災害事故が発生して1302人の死亡者を出している。
先進国の名が恥ずかしい程この国は毎日、作業員が作業中の事故で4人づつ死んでる。建築作業現場での事故死がダントツである。
事故死者のほとんどが闇労働または事業主の安全対策欠如である。
あまりの酷さに大統領声明が政府、議会に発せられた。
第四バカヤローは
中道左派連合のクリーン度とモラルの低下であろう。
それらの幾つかを拾ってみよう。
* 最大与党のDSのクリーン度が剥げ委員長、書記長が介在疑惑を招いた左派系銀行のTOB事件。
党首と書記長の二人が左翼系のUNIPOL銀行の頭取からTOBの経過を電話で聞かされて、歓喜して異口同意に
「、、、え! われわれの銀行(UNIPOL)傘下に国立労働銀行も入る、、すばらしい!
われわれにその実現の夢を見させてくれ!!」と答えたと、2005年夏から秋への盗聴によって発覚したのだ。
今のところ、政治資金に係わる不正は無いが政党の最高幹部が
何故、「すばらしい!」と歓喜したのか謎である。
* 上院議長を含む主要政党要人たちがその地位を利用して購入した住居費が市価の20―30%超低特価であったこと、で市民から抗議が上がった。
* 法務相がミラノ・モンザで開かれたF1国際グランプリンレースに息子を連れ私用で政府専用航空機を使って見物に行ったこと、
批判に対して法相は前ベルルスコーニ政権はわれわれの倍以上に私用していたではないか、と反論。
* 国会議員の麻薬汚染であろう。
或る新聞社の言論を見ると国会議員の半分は麻薬の常用者だとショッキングな報道があった。
そのために前下院議長のUDCが呼びかけて議事堂広場に麻薬の検査車でテストを実施した。野党の119人の下院議員がテストを受け、シロだった。
原因は映画の甘い生活で有名になったローマのヴェネト通りの最奥にフローラと言うデラックスホテル内で起きた女の変死であった。
このホテルに泊まった男客が帰った後、二人の女性の一人が心臓麻痺で死亡、警察が調べた結果、同宿した男客はUDCの下院国会議員だった。
二人の若い女は売春婦で麻薬の常習犯で酒と麻薬が体内で化合して命を奪った。
この議員は翌日離党した。
この国では売春行為は犯罪ではない。
麻薬も本人が一日の使用量が3グラム以内なら許されている。
この国会議員は「妻が妊娠中でもあり、議会が開かれていたので自宅に帰らずホテルに泊まった。
女性が麻薬の常習者とは知らなかった。
自分は麻薬は使っていない、」と懺悔した。
バカヤロー・デーイ第五は
公務員のモラルと公務サービスが改善されないため市民が怒っている。
イタリアの公務員数は約361万人(2005年)、その内、約50% が国家公務員で前労働協約が切れてからおよそ16ヶ月ぶりにこの程、一人平均月収101ユーロの賃上げで新協定が妥結した。
北イタリア南チロル州のボルザーノ市で5人の職員が解雇された。
理由は怠け者で万年欠勤、さすがに誰も5人の怠け者を擁護しなかった。
平均20%の公務員が毎日、722000人が全国で欠勤している。
一方、彼らを養うための歳出は国民総支出の約11%を占め一人当たりの平均賃金は29.654ユーロ(2005年)。
高年齢化して35歳以下は8%に過ぎない。
この国の公務員の意識の中には「公僕精神と専門職意識」を持っていないか、
または全く欠如している。
最近は公務がコンピュータ化したので一面便利になったが、PCが何らかの理由で機能が停止すると、とたんに業務が停止され、責任をPCが停止したから業務出来ないと言い訳をする。
その最悪の例は納税者宛に申告漏れやミスの修正申告書と納税加算通知が送られてくる。それらの通知書はコンピュータの操作間違いで送られる事が大半である。
税務署に出頭して抗議すると役人は決して非を認めず、PCが機能しなかった、と言い訳するのだ。
納税者が間違えると罰金に追徴金まで加算請求されるのに役人の間違えはただの言い訳で幕引き、こんな役人の横暴さが許されていいのか!
だから、納税者は「バカヤロー!」と叫びたい。
そしてバカヤロー・デーイ第六は、
我慢ならないのはマーフィア汚染にバカヤロー!。
マーフィアに対して<国家は正義を保障せよ!、マーフィアにピッツオ(上納金)を払う会員は除名する>とイタリア経団連会長が声明した。
世論は活気的な歴史的変換だ、と評価した。
マーフィアの経済力は高利貸しが300億ユーロ、恐喝100億ユーロと言う。
ピッツオの内訳(月額)は青空商人60、小売店457、卸業 508、ホテル・レストラン業578、
建設業2‐4%、高速道路建設請負業最高17000(1回限り)単位はいずれもユーロ、出所はパレルモ大学と経団連シチリア支部調べ。
カターニアの建設業会長のヴェッキオ氏は「私も市民として散歩や妻と散歩したいが私の命は警察に装甲されていて自由でない。
しかし、マーフィアは私の行動(マーフィアを断ち切る)を止めることは出来ない。」
と、正に命がけの戦いだ。

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