安倍晴明公と言えば、式神(しきがみ・しきじん)を操ることで有名です。安倍晴明について語る際 式神は欠かせないものです。
式神は陰陽師の卓越した能力の象徴でもありました。
テレビや映画では、式神は人形(ひとがた)をした紙が人間になって、晴明公の世話をしたり、蝶々が人間の姿になったりしていました。
昔の文献には、晴明公が式神を京都の一条戻り橋のたもとに隠していた、と書かれていたりします。
式神とは一体何なのでしょうか?
今昔物語・宇治拾遺物語で式神は「識」神と記されていることが多いですが、この文字は古代中国では「魂」「精霊」に近い意味を持った言葉です。「使鬼」という表現も見られます。
式神は「識神」であり隠された知識を「識る」ことで、意のままにできる霊的存在と考えられました。
陰陽道に特有な式神として最もよく知られているのは十二神将(しんしょう)でしょう。
十二神将とは、青龍(せいりゅう)、勾陳(こうちん)、六合(りくごう)、朱雀(すざく)、騰蛇(とうだ)、貴人(きじん)、天后(てんこう)、大陰(だいおん)、玄武(げんぶ)、大裳(たいもう)、白虎(びゃっこ)、天空(てんくう)に由来するものです。
式神の「式」は「用いる」と言う意味で、式神と言えば、「神を用いる」ということであり、もともと式神という神が存在していたということではありません。
晴明公は、この式神を妻が恐れるので、橋の下(京都の一条戻り橋)に住まわせた、という記述があります。この式神は一種の生き物として扱われています。
実際、晴明公は、式神として実際の生物の魂を使役していたのです。
例えば、猿、蛇、鯉、金魚、フクロウ、鷲、タカ、キジなどを一条戻り橋の下で飼育しながら、必要に応じて、それらの魂に命令をして、様々な方術を行っていたのです。
晴明公の方術が卓越していたのは、この式神を縦横無尽に使役していたことも一つの要因といえるでしょう。
現代の「猿回し」は、その昔、陰陽師が式神として猿を飼育していたことに由来しています。


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