「くしゃみ」の名前は、魂を外に出さないように生まれた言葉です。
風邪や花粉症の季節に、立て続けに出る「くしゃみ」。
「くしゃみ」とは妙な名前ですが、これは「クサメ」の変化した言葉です。
語源は、民俗学者の柳田氏は、「糞食め」であるとし、「糞食らえ」と同様に相手を罵倒する言葉に由来していると主張しています。
{徒然草}第七段には、「くさめ、くさめ」と言いながら歩く尼の話があります。
その理由を問われて尼は、世間ではハクショント言った時、「くさめ」と言わないと死ぬといっているからだと答えています。
「くさめ」は風邪をひいて死なないように唱える呪文だったようで、「休息万命」の略ともいわれています。
中世の人々は、くしゃみの激しい勢いで息とともに、鼻や口から霊魂も吐き出されてしまうのではないかと心配していました。
くしゃみは不意にもよおして、意識的にコントロールできません。
そのような不思議な現象であるくしゃみを、人間以外の何か邪悪な存在の仕業と考えていました。
くしゃみの後に口にした「くさめ」や「糞食らえ」と言う言葉は、自分に取り憑いて霊魂を離脱させようとしているかもしれない邪悪なものに向って発する、災いを封じるおまじないのような言葉でした。

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