我孫子市の人気ウオーキングスポットのひとつ・布施。
利根の田園地帯を望み、畑や昔ながらの農家が連なる細い道を歩きながら、私もよく布施弁天やあけぼの山に子どもを連れて行ったものです。
そこに、立派な長屋門があるのは有名。
野口善左衛門宅。古くからの豪農で、この門は日露戦争の折に記念して建てられた、100年もの歴史があるものだとか。

新興住宅地で育った私は、「ずっと、こんな風景が残るといいなあ」と、漠然と感じていました。
しかし、この野口家の若き後継者が急逝。事実上絶えてしまいました。
他家へ嫁いだ娘が門や農地が無くなるのを嘆き、その娘で、他家の農家に嫁いだ仲原千津子さんに「他に農業経験者がいない。なんとかならないか」と懇願。
そして、千津子さんの奮闘が始まったというのです。
新松戸に家庭を持つ千津子さん。
「門と、屋敷などの修繕・維持には、年2、30万はかかる」と言われて唖然。
広い農地はありますが、女性の細腕ではとても世話をしきれず、金銭的・肉体的な負担が大きくのしかかります。
「いっそ、門を市に寄贈して、保全してもらえば」とも考えましたが、昨今の経済では、市もとても保護できないとのこと。
「それに、この長屋門自体にはたいして税がかからないけれど、その敷地分は宅地と同じ税率がかかるんですよ」という千津子さんの言葉にびっくり。
たしかに人が住めるくらいのスペースではありますが、住めるわけでもないのに…長屋門に、そんな固定資産税がかかるなんて!
それで、せめて固定資産税と維持費だけでもまかなえないか、と始めたのが「野口善左衛門ふれあい体験農園」です。
1区画30平方メートルの農園は、樹木以外なら作物や花を植えてもらって可。このために井戸を掘り、残滓を肥料にリサイクルするコンポストも区画ごとに用意。
…しかし思うように借り手が見つからず、増える赤字と、勢いよく伸びる雑草に悩みながら毎日を過ごしています。
ここでの作業を終えて帰宅するのは夜8時。食事や入浴を済ませ、就寝。そして朝暗いうちにまた来て作業、朝7時に一度帰宅し、ご主人や子どもたちを送り出して新松戸の農作業を行い、また我孫子へ……
いっそ我孫子に拠点を移したい、と思うそうですが、ご主人には仕事があるし、お子さんたちも学校があるので簡単に引越しはできません。
農作業を援農ボランティアに託したら、と人に勧められたりもしましたが、援農ボランティアは専業農家が対象。他のお仕事をするご主人がいらっしゃる以上、「兼業農家」ということになるので引き受けてもらえなかったとのこと。
それでも、個人的に手伝ってくれる人を探し、暑い中、せっせと畑を守っています。
「農業はばくち。天候等で収入が左右されてしまう。でも門の維持費と、固定資産税だけでも安定して確保できれば、なんとかなるんですが…」
それでも、お子さんと一緒に農作業をやると、「土をいじって育った子は何かが違います」など、農業の魅力や、意義をたくさん語ってくれました…
ほどよく便利な場所で、プチ農園を楽しんで見ませんか。
土とふれあい、収穫を楽しみながら、歴史ある長屋門を守れます。
野口善左衛門ふれあい体験農園 090-2632-3844 小川原記

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