あるレストランの店主に、きんもくせいが匂う頃は栗が一番美味しい時、と聞いた。
日本には栗の種類が多くあるようだが、子どもの頃に食べた小さな柴栗や、保存用に干したカチグリと呼ばれる硬い栗を飴のようにしゃぶって、その甘みを楽しんだ事が懐かしい。
最近は丹波栗に代表される大きな栗もよく目にするし、贈答品として頂く事もある。
栗を調理しながら以前ともに働いたれすかのスタッフ I さんを思い出す。
明るくてきぱきとしていた彼女は、夫の郷里に引越し、子育てをしていたが病で亡くなった。
それまで、毎年、郷里に近い岐阜の銘菓「栗きんとん」を編集室に送ってくれていた。
栗の味を最大限に生かした極上の味わいをみんなでいただきながら、季節を思い、彼女の人柄をしばし語り合ったものだ。
この先も、栗の季節になるときっと彼女の笑顔が思い出されることだろう。 黒澤 記

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