取材に向かうため、北国分駅から新鎌ヶ谷まで、北総線で移動中のこと。
座ってすぐ目を閉じて電車の揺れに身を置いていると、東松戸駅から、風呂上がりのような、ちょっと強いけれど嫌ではない香りがしてきた。
香水にしては強すぎると思いそっと目を開けて匂いの方を見ると、髪を肩まで伸ばした190センチはあろうかという浴衣の男性が立っていた。
素足に下駄をはき、吊革につかまってまっすぐ車窓から外を見ている。
浴衣には佐渡嶽の文字が。
まだ髷を結う前のお相撲さんの卵らしい。
スッキリとした顔立ちで、がっちりながらすらりとした体型の若者は一駅先の松飛台で下車。
ちょっと甘くて強い匂いも彼とともに消えた。
松戸界隈で時々すれ違うお相撲さんもいい香りがする人が多い。
お相撲さんておしゃれなんだ。
お相撲さんと出会える街で生活するっていいものだ。 黒澤 記

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