おひなさまの季節。
立春の頃に飾るお宅が多いとのことで、今人形屋さんは配達で大忙しです。
野田の人形店「
織原」さんでも、年の暮れからお雛様を並べるのに家族総出。今年は1月3日が大安の日曜になるということで、お正月休みを一日返上してお店を開けたそう。そんな忙しい中、撮影やお話を伺ってきました。
「あの『小石丸』も出しといて」
話の途中、2代目が、3代目に指示を出します。
え??小石丸???って、あの小石丸ですか?????
と、思わず聞いてしまいました。
小石丸は蚕の一種。
非常に上質の糸をはきますが、生産量が少なく飼育も難しいため、近代化の流れのなかで絶滅の危機にあった蚕です。奈良時代の絹に近い品質なので、正倉院裂の復元などにも用いられるという、貴重品。
それがお雛様の衣装に!
本物の、宮中の雅を感じられますね。
五月人形でも、こちらのお店は印伝、皮威、和紙小礼などの本物素材にこだわったものをそろえてますが、ここまでくるとただの飾りではなく、立派な工芸美術品!
お子様の幸せを願うお人形に、「本物」の魅力を感じられるものはいかがでしょうか。
☆
新松戸と南流山の中間、けやき通りから一歩入ったひなびた風情の残るあたりにある人気店「かやぶき蕎麦やぶ」は、12月、松戸市内唯一のかやぶき職人さんの手により7年に一度の差し茅(さしがや)を終えたばかり。

差し茅というのは、全部を葺き替えるのでなく、古い茅を少しずつ替えていく方法。全部葺き替えると1000万円くらいかかってしまうといいます。それでも8キロの束を450束、丁寧に替えてもらうのは大変なこと。
苔むしたかやぶき屋根は風情がありますが、手入れをしないと屋根がだめになってしまいます。
こちらの店主は「しかし、一度無くしてしまえば、二度と建てられないものですから」と、維持の大変さも厭わない様子。
お正月に伺ったときには、立派な、昔ながらの門松がお客様を迎え、日本の原風景を見た思いでした。
なお、屋根に細いテグスが張り巡らされているのを不思議に思い、聞いてみたら、「カラスよけです」…烏にとっては、格好の巣材なんですね

小川原記

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