ドウの洲の番所高札にみえた鶴白鳥禁制の背後に、三郎次が夢想したのは、子どものころに無心に唄っていた、小正月の 「とり追い歌」 です。
三郎次の追憶の鳥追い歌 (
北魚沼郡川口町 野田 )
“ 鳥追いだ、鳥追いだ、だんなショの鳥追いだ
どごからどごまで追っていった
シーナ(信濃)の国からサード(佐渡)が島まで追っていった
何でもって追っていった、しばの棒で追っていった
いっちにっくい鳥は、
ドウとサンギと小雀
みんな立ちあがれ、ホーイ、ホーイ ”
これまで何回も触れてきた 「とり追い歌」 です。
小正月の鳥追い行事は豊作を願う予祝行事と説明されています。
田んぼの稲を荒らす、ドウ(
朱鷺)とか鷺、そして秋の稲穂に群がる雀など、許せない害鳥として、鳥追いの歌は唄っている。
だが ホーイ、ホーイ と追い立てる掛け声があまりにも優しく響くのであって、けして憎しみいっぱいの怒声ではないのである。この不思議を三郎次はずっと思い続けてきた。
→ http://sun.ap.teacup.com/sab9613/100.html
→ http://sun.ap.teacup.com/sab9613/101.html
日本のこの列島の古代の人たちの信仰は、鳥はけっし単なる悪役、害鳥ではなかったこと。とりわけ白い鳥は聖なる霊鳥として崇められていたことに思い至ったとき、ドウと鷺の立場は一転して、追い払われる存在ではなく、祈りを託す対象としてあらわれることに気づくのです。
白鳥天女は、水辺の神事に羽衣を以って奉仕する神女の信仰にとなり、沖縄や奄美のオナリ神の霊は、白い鳥となって船の艫に止まり、大和への航海安全を守護するとの信仰になっている。記紀神話の日本武尊の霊が白い鳥となる物語とか、和那美之水門に白い鳥を捉えて天皇に献上するなどの物語の背景にあるものを考えるなら、そこには古代の霊鳥信仰がみえてくる。
鳥追い歌の ホーイ、ホーイ ≠ェただ優しい響きだけでなく、村はずれではひときわ大声で ドーゥ ドーゥ ≠ニ叫んでいた子どものときの記憶がある。この無心の叫びは、ドウの鳥を脅して追い立てることでなく、むしろ呼びかけの声ではなかったかと気がつくのです。鶏を呼ぶときには、その鳴き声をまねてコーゥ・コーゥと声をかけるように、 ドーゥ ドーゥ の叫びはダォーンとなく白い鳥への呼びかけだったはずである。
鳥は穀霊神の象徴として信じられていた昔がある。春に稲種をまいたとき、苗代田に小枝を立てて、穀霊神の象徴である鳥を招く祈りのあったことが、三郎次祖母の語りに聞いていた。

稲作発生譚 :
鶴の落し穂伝承
鶴の落し穂伝承は各地にあって、稲作発祥生の
物語と結んでいることが多い。稲鶴姫の伝承も、
鳥が稲穀霊と結んでいることを示すのであろう。
沖縄・南城市の受水走水の御穂田は、
鶴の落し穂によって、沖縄の稲作発祥となった
聖地とされている。写真の受水走水の御穂田は、
( ↑ クリックで画像拡大 ) すばるさんのブログ(2月16日)から拝借しました。
小正月の鳥追い行事は、稲穀霊神の象徴の鳥に、豊作をもたらすことの祈願の信仰が、いつか忘れられて、ただ現実的な害鳥の追い払いの意味に没落してしまったのだと、三郎次が抱きつづけてきた考えです。
またここで、一月に曳いた
ヒカラビお父さん のブログ を、再度ひかせていただきます。
ヒカラビお父さんの写真では、 小正月鳥追い行事で、鳥追いの子どもたちを迎えるお年寄りは、手をあわせて拝む祈りの姿となっています。鳥にかかわる原初の信仰の姿がそこに写されているのです。
ドウの洲の白い鳥は、信仰の対象であって、やたらとそれにかかわることのタブーの気持ちが、古代信仰にはあったはず。その鳥を捉えることは特別の神事儀式でのみ許されたこと、鳥を追うこともただの追い払いでなく、霊鳥に託す祈りがあってのこと。この日本人の原初の信仰が、変異をともないながら受け継がれ、ドウの洲の禁制となったものと、三郎次の理解です。
そして禁制は、今日的なかたちの上では自然保護と一致しています。自然破壊の反省の上での、近代の自然保護の思想とは違って、自然とかかわる祈りのなかに、自然との共生が内在する日本の思想です。現代なら
「ワシントン条約」と、ヒカラビのお父さんからコメントをいただいていますが、本質のところで違いを含む日本の思想です。
しらぱと(
白鳩)の 飛びうる なんみい(
波之上) や、
嵐ん風んおさまてる、鳴ちゅる
沖縄の聖地、波之上海岸に飛ぶ白鳩からも、この列島に住み継いできた我われの、白鳥(
しらとり)によせる気持ちを教わりました。
田んぼの仕事が始まっています。白い鳥に稲穀霊鳥の信仰をみたので、ドウの洲のことは、田んぼのことに話題を移さねばならないと思っています。
→( 参考:古代信仰の農耕儀礼と鳥 )
★ えちご魚沼、川口町です、三郎次。
魚沼産コシヒカリ < 三郎次の米 >
魚沼産コシヒカリ < 減農薬・特別栽培米 > 新潟県認証
魚沼の銘酒 < 八海山 >

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