山廃造りは昔の造りだと、杜氏さんに伺ったことがある。話を聞いても意味をのみこめるわけがない。乳酸菌の生かし方が今日の普通の酒とは違う、手間のかかる造りと聞いて、あの変に酸味のある味はそのせいかと思った。
昔風のつくりで手間がかかると云うのに、それでも山廃酒は近代の酒とのこと。
江戸時代はもっと大変なつくりの 生酛 ≠ノよる仕込みだったのが、明治時代になると、酛つくりでの重労働「 山卸 」と云う作業を止めるような工夫がうまれた。つまり「山廃」は、「
山卸
廃止酛」のことだと、坂口謹一郎博士の酒の本に書かれていたが、素人に、にわかに理解できる内容ではない。
にいがた酒の陣 ♂場でみつけた生酛つくりの酒。


江戸時代、二百五十年前の宝暦年間の酒を模して研究を重ねて復元醸造した酒だそうである。さっそく試飲の利き猪口に注いでいただく。
慣れている透明な酒ではない。うすく色づいた酒を含むと、口中いっぱいに複雑な味わいが広がる。まずほのかな甘味を感じて、適度の酸味が調和している。口中の千変万化の遷りがゆるむころ、ようやく喉もとに落すのだが、その瞬間の味わいもまたおもしろい。
二百五十年昔を模したつくり酒だから、自然発生した乳酸菌を活かした発酵の製造方法である。生酛の昔つくりの酒は酸度と糖度が高いのが特徴となっていた。
アルコール分:15度
日本酒度 :−50
酸 度 :8.0
アミノ酸 :8.7
おいしい甘味を感じた「 雪中梅 」の、日本酒度:−3 に比べて驚くことは、これまで三郎次の知らなかった 日本酒度 :−50 である。これに 酸度:8.0 が絶妙にからんでいるのであろうか。
甘い味もする、酸っぱい味もする。果物の香りもする、麹の香りもある。さまざまに混じりあった雑味というのか混沌とした味がする。原料米の精白度が90%とあるから、これが米の味わいなのだろうか。 淡麗辛口 ≠ニ評判されて、飲みなれた新潟の酒の対極にある異質の酒と言うことになろうか。
一本を買い求めながら三郎次の感激を述べると、蔵元の上原さんからこの酒粕をサービスに頂いた。
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いつもの見慣れた酒粕とは違う。白い粒々がある。醪 もろみの米粒が溶けないままなのかと、単純に思っていたら、これはアミノ酸の結晶体であるとのこと。
帰りに新幹線の車中でも、このなんとも不思議な酒粕に見入っていると、座席となりのご婦人が興味深そうにのぞきこんできた。伺えば酒田の方とのこと、本間さまの酒田だそうであった。山形県にも、同じような 酒粕 ≠ェあると聞いて嬉しくなった。きっとそこにも芳醇濃厚なお酒が愛されている気配を感じたからである。
越後 鶴亀 諸白 上原酒造 生酛

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