“君が代”は天皇家の歌ではない。他王朝の歌からの“転用”あるいは“盗用”である。
その経緯を略述しよう。
“君が代”に当る歌は、古今和歌集に出ている。賀歌の部である。
題しらず 読人しらず
わがきみは千代にやちよにさざれいしのいはほとなりてこけのむすまで
(巻七、三四三)
当集中、“読人しらず”とされた歌は少なくない。
その内実は、一に実際に編者、紀貫之がその歌の作者名を知らなかった場合、二に“知っていた”が、これを記することを避けた場合、その二種類があるものと思われる。
有名な、平家物語(巻七、“忠度都落ち”)の場合のように、“朝敵”となった平忠度の名を伏せて“読人しらず”として勅撰集(千載和歌集)に収録したという逸話が知られている。
古今集の場合も、この第二のケースが少なくないかと思われるけれど、右のような“伝承”が記録されていない限り、一般には判別しがたいのである。
けれども、今問題の“わがきみは”(三四三)の場合は、いささか状況がちがっている。
なぜなら“わがきみ”という以上、これは当然“特定の人物”を指す。歌の内容からすれば、“特定の君主”と見なすのが自然である。
( “自分の恋人“ を指す、とか “自分の御主人“ を指す、といった理解もあるけれど、いずれも実証なき、一種の “恣意的“ な解釈であろう。)
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