「三日結婚」(東條未知子作)
ここだけの話だが、三日間だけ、結婚したことがある。
友達にも まだ誰にも話してないけど。
相手は外資系の銀行員で34歳で独身・・あたしと結婚したから
その言い方もおかしいな、ま、34まで独身だった。
あたしは人を本当に好きになったことがない。
27才になってもまだ、男を身長、年収、学歴と
数字でしかかぎ分けることしかできなかった。
心がすべて?見た目で選ぶなんて子供?
それは数値の低い人間の言い訳
人を好きになる、という気持ちがわからない。
人を愛してる、って何?
自分じゃなくて他人を好き?
一人でいるのが一番癒されるのに
好きって
何?
何?
何?
何?
何?
何?
12
25
33
45
58
87
99
100
135
いたずらに増やした男性経験の数は、26歳の秋で実に135人であった。
何か見えるかと思ったが一向に何も見えず
いつも出会って多少きゅんとして
乗り心地の悪い車に乗り
すべてがパターンとなってあたしの記憶をなぞる。
自分を捧げたい!と思うほどの男がいなかったので、
処女は17のとき、自分でビール瓶で破った。
不手際により、子供が出来たのは一回。
三年前、24の時だ。
自己責任、という言葉は
口にするととてもオトナになった気がするけど、
ゴムなしも自己責任、たった一回つけなかっただけで
これも自己責任だ、と割り切れる人が世の中にどれだけいるのだろうか。
少なくとも私はオトナではない。一瞬だけ、目の前が真っ暗になった。
そのあと、変に心が澄み渡り、もうどうでもいいような気になった。
病院に行くのも面倒だったから
練馬区東大泉のマンションの三階から飛び降りた。
死ぬ気はない。ただ、すべてが面倒だった。
地面に強く叩きつけられた瞬間、強烈な衝撃を覆うように
物凄い快感が全身をじわーんと襲った。
自殺など、死に瀕すると人間は痛みを和らげようと
脳内麻薬を出すのだと聞いたことがある。
あんな快感はあとにも先にもこれ一度だけだった、
あの、脳があたたかい布につつまれて尿がいまにも漏れそうなかんじ
死ぬときは飛び降りにしようとそのとき決めた。
静かな住宅地 おっさん、おばさん、
犬を連れた主婦みんな能面みたいな顔して歩いてたくせに
「飛び降りだー!」
と大声が遠くでして そっちにおびえてしまうほど
皆が自分を失って大騒ぎしていた。
それでも子供は流れなかったので、
病院に行って始末した。
男はそこまで責任感のありそうなヤツでもなかったが、
いまだに「あの子の墓参り行こう」とデート気分で
誘うのでウザイなあと素直に思った。
人を愛した事がない。7年付き合った恋人がいたけど、
「ミコはまだ僕に心を開いてない」
といわれたな。
昔いじめに遭ったから?両親が不仲だったから?
グレて退学になったから?
人に沢山傷つけられてきたから?
そんな理由くだらない
誰でも 自分も 理由付けしたがる
誰かに心を開かないのは
自己愛に過ぎない
あたしは 根性が汚いだけよ
お金や仕事は裏切らない 人は裏切る
性欲はある 体は時々熱くなる
一度、健康優良児で表彰されたという男と付き合ったことがある。
ヤツは健康管理が完璧で、病気したことがなかったので
人の弱さや疲れを一切理解できず、
一緒にいてそれは優しくなく、
体調不良でデートを断れば不機嫌になり別れをちらつかせ、
やられるだけやられて
疲れたので奴の部下と浮気して捨てた。
本人が悪いわけではない、知りたくても理解できないのだ。
自分が健康だから。病気じゃないから。
あたしは、自分が人を好きになれないのを、
欠点だとは思わない
恋愛は 人間の「バグ」のようなものなのではないかとあたしは
踏んでいる。
バグの一切ない、健康な人間だから人の気持ちなどわからないのだ。
あたしは、恋愛における健康優良児。
何も悩んでなんかないわ
二十代後半になって、結婚のきざしが一切見えないことを
のぞいては。
あたしは友達に触れ回ってた
三日結婚したい あたしは運命の相手というものがどういうものかまだわからない
みんな なんのために結婚してるのだ
好きな人がいなくても? 世間の為に戸籍を汚すのか
でも それを無視して 独身で通すほど あたしは強くも無い
たとえ三日でも結婚すれば どんなに年をとっても
「○○歳で独身」という言われ方をされないですむ
34歳の自信過剰ないけ好かない男が
「君が三日結婚したい子かい」
とダメ元で貼ったネットの出会い系経由できた。
それが高志だった。
年収五千万、外資系銀行員、
結婚の意志はなく、彼女が二人いた。
いきなり頼まれたのは、
「俺さあ、今、本命じゃないほうの彼女
切りたいんだよ。俺らほら、一応結婚するわけだし。
一緒に来てくれない?」
だった。
その「本命になれなかった彼女」の職業は、
花形職業、スチュワーデスであった。
続く
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東條の小説が読んでみたい!とお世辞か嘘か言われることが
多いので、とりあえず一作・・まだ草稿なんですけど・・
ちょみっと出してみたいと思います。
続きはここに出すのもウザイので、
よそでダウンロードできるようにしてあります。
見たい方、メッセくれ。
小説を書いているとよく言われるのですが・・
そして上に出した小説をミクシィに過去出したりしてたときに
言われたのが
「これ、未知子ちゃんの実話でしょ!」
違〜う!
主人公と作家はベツだよー
作家になりたい私といたしましては。
作家と作品は全く分けるのがプロだと思っております。
主人公はなるべく突き放して。
まったくの虚構の世界を作れなければそれはプロではないわけで。
でもま、これは未知子の実話なのでは・・・と誤解してくれるのは
実はとても嬉しいことなんですねえ。
そう思ってほしいから、なるべく
リアリティあるように書きたいとつねづね思っています。
ときおりフッフッと自分が入ることもありますが、
基本、チョー冷静で作品を書き上げたい次第です。
機械のようにクールな頭で小説を書きたいの助。

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