2009/4/23

スティーヴ・スワロウにツラレてハンス・ウルリク(sax)  木曜:Jazz & Classic Library


実のところ最近のヨーロッパ・ジャズ事情に少し詳しくなったのは、ホントについ最近の事でそれまでのヨーロッパのジャズというのは70年代のECMミュージックで完結していた(僕の中でのお話し)。

最近というのはMySpaceを通じて欧州のミュージシャンとの繋がりが出来たからだ。

ヨーロッパ・ジャズとの出会いは60年代の後半にアルト・サックスのフィル・ウッズが率いたヨーロピアン・リズムマシーンというバンドが最初で、それ以降70年代のECMミュージックを除くと「知らない」に等しい。
ECMにハマる直前に当時北欧に拠点を移していたジョージ・ラッセルの作品で、ヤン・ガルバレク(ts)やテリエ・リピダル(g)、アリルド・アンデルセン(b)やヨン・クリステンセン(ds)などの演奏を耳にしてアメリカと同じように若いミュージシャンが育っている事は知っていたが、そんなに夢中になる、いや、なれるような情報も音源も日本にはなかった。

これは別に悪いことだとは思わない。
全世界中のジャズはアメリカを中心に回っていて、ジャズファンの心理もビジネスも常にアメリカを向いていて当たり前なのだ。

かくいう僕だってECMミュージックを夢中で聞いた70年代に買ったECMのアルバムは8割以上がアメリカのミュージシャンが新天地で見出した活路だった。
皆、アメリカ本国のジャズシーンが衰退している時期にドイツのECMレーベルから純度の高い音楽を発信していたわけだ。

さて、時代は過ぎて数年前に日本ではヨーロピアン・ジャズ・ブームというのがあった。
一向に70年代ECMミュージックを上回る演奏も噂も聞こえてこないヨーロッパに無関心だった僕は意外に思ったけど、まぁ、そういう「掘り出し物好き」が世の中にはいるんだな、と思っていた。

ヨーロッパのジャズは革新的か?
ヨーロッパのジャズに惹かれる魅力があるか?
ヨーロッパのジャズに見たことも無い新鮮さはあるか?

答えは全てノー、だ。

では、嫌いか?

それもノー、だ。

内情はとても日本のジャズシーンと似た進化を歩んでいると感じた。
だから特別な物は無いし、驚くような演奏者もいない。

安心して聞ける、これが今のヨーロッパ・ジャズを一括した言葉になると思う。
そう、今のアメリカのジャズシーンがマンネリズムからの脱却で複雑怪奇な味付けに手を染めつつあるのに対して、「どこのジャズクラブでも聞けそうなくらい安心してそれでいて古臭くなく聞けるジャズ」がヨーロピアン・ジャズ。

適度に70年代ECMミュージックの名残と、適度に80年代フュージョンの名残と、適度に90年代ミニマムミュージックの名残がジャズスタンダードなどともミックスして「ニュートラル」な音楽に。

さて、こんな長い前振りで紹介するのがデンマークのジャズ・ミュージシャン、ハンス・ウルリク(Sax)のアルバム。

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『BILIVE IN SPRING/Hans Ulrik』(stunt/2008)

「ビリーヴ・イン・スプリングとか超有名曲だからそういう曲理由で買ってくれる人がいるよ・・・」な〜んていまどきにしてはかな〜り野暮な発想とも思えるアルバム・タイトルは一向に感心しませんが・・(笑)、まったく予備知識なしでアルバムに手を出す時の判断基準はいくつかあります。

もちろん試聴なんて誰でも出来るような手法は無用。
試聴してすぐわかるほど簡単なものなら買う面白さはないかもしれないし、、ねぇ。

・メンバーや編成
・ジャケットやタイトルのセンス
・演奏曲目(知らない曲度85%が理想的)
・録音年月日

このウルリクの場合、まったく彼の事は知らないのでメンバーに入っているベースのスティーヴ・スワロウに注目。
さらにゲストで数曲ピアノのボボ・ステンソンが加わっている事。
スタンダード半分、オリジナル半分でその中でもスワロウ作のヒット曲“Falling Grace”が演奏されている事、この辺りで録音日を確認して購入決定!
という流れでした。

音楽などの楽しみ方には二種類あると言います。

自分が知っている曲を何度も繰り返し聞いて楽しむ人と、知らない曲を何度も聴いて好きになる人。
僕は明らかに後者で、知らないから次々に音楽を聴くわけです。

どちらが良い・悪いという分別ではありませんよ、誤解なきように。
CDを買う時に試聴などしない、というのもそういう理由からで、もちろん「思いっきり外して」しまう事もあります。
でも、その、自分の・・・・なんて言うんでしょ、勘というか予知能力というか、そんな力をいつも研ぎ澄ませながらCDを買うのが好きなんです。

で、今回のウルリクのアルバム。
全体の感想は前振りに書いた通り。

ゲスト・ギタリスト、ウルフ・ワケニウスとベースのスティーヴ・スワロウのデュオから始まる“You Must Belive in Spring”の最初のテーマはスワロウがベースのハイポジションでメロディーを弾きワケニウスがギターでアルペジオで伴奏しているのだけど一瞬どちらがどちらだかわからなくなるほどミックスされていて面白い。その後ウルリクが入ったテンポの中での演奏も小気味よい。

メンバーを記しておくと、
Hans Ulrik(sax)
Steve Swallow(b)
Jonas Johansen(ds)

のトリオをベースに、

Bobo Stenson(p)
Ulf Wakenius(g)
が一部の曲にゲストで加わる

なので、基本的にはコード楽器の役を担うのがスティーヴ・スワロウのベースという事になる。
もちろんいつものエレキ・ベースだからコードも弾ける。

本当にこの人の弾くベースはハーモニーを邪魔しない。
むしろハーモニーを予感させてくれるベースラインはこういう1ホーン・トリオでは絶大な効果を発揮する。
エレキ・ベースでありながらジャズをしっかりと伝える貴重なスタイリストであることがこのアルバムでも立証されていので、ベースはアコースティックという固定観念をお持ちの方は是非御一聴を。

さて、特にすばらしい出来となっているのが3曲目にピアノのボボ・ステンソンが加わったテイクで録音されたマル・ウォルドロン作の“Soul Eyes”。マルの曲は他のミュージシャンが取り上げて“ハッ”とするような曲だった事に気付かされる事が多い。
ここではウルリクのソロが特に素晴らしい。
ジャズクラブでゆっくりと聞きたいような出来の演奏。

ただし途中ステンソンのミスコードをそのまま残しているのはちょっとプロデュース・センスを疑う。
ライブでは見過ごされる事でもアルバムでは御法度。その二つの違いがそこに凝縮されていなければならない。

一番面白く感じた演奏は5曲目のボサノヴァ〜BPMの重鎮シコ・ブアルキ作“O Que Sera”。曲の解釈も面白いし、ウルフ・ワケニウスとベースのスティーヴ・スワロウのデュオから始まるアイデアもいい。

ちょっぴり変拍子の味付けがスパイスのファスト・スイングは“I'll Remember April”、スワロウ自身の“Falling Grace”、そしてウルリク作の“August 1972”なども上々の演奏。

サド・ジョーンズの名作“A Child is Born”の前にちょっと不釣合いなイントロとも思えるウルリクのオリジナル曲がくっついていたり、選曲の幅がオリジナル〜ジャズ・スタンダードに加えて“Brouadway”のようなスイングまであってややアルバムのコンセプトが散漫な面はあると思うんだけど、それらを差し引いても聴き応えがあります。

やはりスティーヴ・スワロウの存在がとてつもなく大きいようです。

ストレートなジャズではなくフュージョンバンドで演奏中のウルリク。
デンマークのジャズシーンの日常でしょう。
日本と変わりませんね。


新曲アップでさらに充実!世界のヴィブラフォン奏者へ直結!
そう、デンマークのヴィブラフォン奏者Morten Grønvadともフレンドリンク。
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チェキラ!
タグ: Jazz ジャズ CD



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