2006/6/30

ビブラート効果の考察・・・後半  金曜:vibraphoneやmarimbaの為のジャズクリニック

毎週金曜日はVibraphoneやMarimbaをやっている人向けのお話し。金曜第十五回目の今日は先週の「ビブラート効果の考察」の後半です。

ヴィブラフォン(実際の発音はヴァイブラフォン)とネーミングされたこの楽器、最大の特徴は鍵盤の余韻にある「うねり」です。ペダルを踏んで音をサスティーンさせると直に音の空気振動を身体に浴びる事ができます。鍵盤が震えながら演奏する楽器=ヴァイブレーション、共鳴管付き、という事でVibraphone。分かりやすい楽器です。さらにその効果を高める為に共鳴管の上部に付いたファン(プロペラ)をモーターで回転させてビブラートを付ける事が出来ます。このファンの回転による効果はギターやシンセのエフェクターのコーラス機能や、ハモンドオルガンのハーモニック・ドロー・バーと似ていますが、恐らくそういう人工的な「震え」のする楽器の元祖がこのVibraphoneでしょう(Vibraphoneは1930年アメリカ生まれ、ハモンドオルガンは1934年アメリカ生まれ)。
但しエフェクターやオルガンが電気合成波形であるのに対してヴィブラフォンは生音を振動させる所に違いがあります。

さて、そのビブラート機能ですが、先週書いたように大まかなコントロールは出来るものの、細部に渡った効果を反映させるには構造的に無理な事もあり、僕自身も一時はエフェクターを使ったコントロールをステージで試した時期もありました。究極的にはシンセヴァイブかアコースティックヴァイブかの選択を迫られましたが、シンセヴァイブが自身の発音体を持たない点で不満が残り(音源モジュールを使うならキーボードと同じ音しか出ないので見掛けだけの道具になる)、アコースティックを選択しました。なので楽器に装着されたビブラート・キットは使わず鍵盤からの直接的な空気振動だけで表現を開拓する事にしました。

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鍵盤の下の共鳴管の上部でファン(プロペラ)が回転するビブラート機能が備わる

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共鳴管の上でファンが回転し開いたり閉じたりを繰り返してビブラートを作る(鍵盤を外した状態)

面白い事に、このファンの回転方向はメーカーによって異なります。基音側から派生音側に回転するメーカーと派生音側から基音側に回転するメーカーがあります。
「そんなのどちらでも同じじゃん」ってツッコミありがとう
比べてみるとビブラートの聞こえ方が違います。恐らく奏者の立ち位置に聞こえる波形が異なっているのだと思いますが、そんな事も気になりました。

さて、ビブラート・キットを使わないならプロペラは必要ないではないか、と思われますよね。


僕の楽器はビブラート・キットの内、モーターと操作パネルは取り外していますから(実はこれが案外重たいので運ぶ事を考えて外しています)、他も無くてもよいのでは?と言う事。実際にMusser社のカタログではプロペラシャフト、モーター、操作パネル等のビブラート・キットが無い機種を選択出来ます。
バークリー時代、校舎にあるヴィブラフォンの多数がこのタイプのものでした。モーターが付いていても壊れて動かないものもありました(笑)。



しかし、実はこのファン(プロペラ)は非常に役に立つものなのです



鍵盤をヒット(打つ)すると波動は共鳴管の中に入り増幅されて底まで行くと再度共鳴管の外へ出ようとします(押し出される)。その時に楽器の構造上、出口に鍵盤があるので増幅された波動の何割かが再び鍵盤を振動させて余韻がさらに継続される仕組みになっています。
しかし、ダイレクトに波動が押し上げられると、各々の鍵盤の振動帯域によっては発音側と増幅側の波長が一致する事により「デッド」(同期によりお互いの振動を引き合う、殺しあう)な響きになる音域が出てきます。いわゆる「つまった感じ」の音、音の「抜けが悪い」とか表現するあの音です。

その状態を回避する為に、プロペラを使って共鳴管の中にある増幅された音を出口でコントロールします。よりヴァイブレーションされた音色を作る一つの秘密です。

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ファンを少し傾けるだけで増幅された波動を鍵盤に直撃させる事を回避出来る

ホールのステージ上部にある音響板と似ています。このファンの角度は楽器を演奏する場所の響き具合によって異なります。セッティング時にファンが閉じた状態でペダルを踏み音を出して、ファンを少しずつ開けて行きます。あるポイントになると増幅された音が共鳴管の中から一気に外へ飛出す感じになります。そこが一番リッチな音を発する位置です。
このポイントを毎回探ってその日の楽器から最高の音色を引出すセッティングをします。

この方法を試すとファンの「全開状態」というのが思ったよりも増幅振動を上手く利用していない事もわかるはずです


ちなみに、このファン(プロペラシャフト)は固定しないと演奏中に揺れてグルグル回ってしまいます。

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ボックスを開けるとファンベルトが

僕はファンベルト(ゴム製)を「紙縒り」風に束ねてプロペラシャフトを固定しています。他にもいろいろな方法があります。


自分の楽器の事を隅々まで研究して演奏しましょう
もっと音楽が楽しくなりますよ


おしまい



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