2010/12/24

(ますます)疑わしきは罰せず・・・オルタード・ドミナント・スケール(その2)  金曜:vibraphoneやmarimbaの為のジャズクリニック


毎週金曜日はVibraphoneやMarimbaをやっている人向けのお話し。
金曜第百九十八回目の今日は、先週の『疑わしきは罰せず・・・オルタード・ドミナント・スケール(その2)』です。

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今日はイブですね。
予定がある人も、特に予定の無い人も、平穏で幸せなイブが迎えられますように。クリスマス

クリスマスが終わればもうすぐ新年。
そのせいか若い人から来年の事の相談が急増。
あれこれ思案するものの、なかなか上手く世の中と折り合いがつかないのは若い時に誰しも経験済み。

昨夜も有能な若者から報告。
彼はとても端正な音楽を作り演奏する人。
「それが好き」な人が聞けば、ツボにはまったサウンドと完成度。デモCD-Rもあり、ライブなどでも売ってるらしい。それに気を良くしたのか、そのデモCD-Rをどこかのレーベルからリリースできないものか、と随分以前に相談を受けていた。
いくつかの心当たりをあたったようだが、「面白いですねー」という反応はあるものの、一向にその先まで話が進まない。このご時勢だ。売れるものと売りやすいもの以外はなかなか難しいのは本人のせいじゃない。

「どうしてなんでしょうねぇ。。」と。

焦るな、焦るな。
まず、本論から逸脱している話しだ。

誰の為に作った、誰の為の音楽?
音楽が自分の自己表示みたくなってなーい?
そのCD-Rを聴いて思った素直な気持ちを伝えた。

「好きな人にはある程度通用するかもしれないけど、その辺りを歩いている人を振り向かせるだけの魅力が音楽にないね」「所詮デモはデモだよー」「やりたい事はわかるけど、二曲続けて聴くのは辛いなぁ」。。。

最近同じようなデモを聴く機会が多い。
デモはデモでしかない、そういうレベルの音楽と傾向が日常に蔓延しているようだ。
飛びぬけた存在が今の若手にいないのかもしれない。
どれを聴いても「想定内」、なのだ。

そのくせ最近の若者はなぜか“せっかち”だ。
ちょっと待つ、とかが出来ない。
「どうでしょう? これ」と聴かされる音源には問題を解決しないまま“見切り発車”的なものが多い。
そういう音源に共通している傾向は、1曲目は面白く仕上がっているけれども2曲目、3曲目と聴き進む内に、どれも同じに聴こえ飽きてしまう。先の展開が読めてしまうのだ。
もちろん本人は好きだからそれを飽きずに24時間聴いてられるけど、、、、ねぇ。

そんな状態で人に聴かせておいて、あれこれカツカツと動くものだから、ちょっとその為に動いてくれようとしている人の耳にそのカツカツ振りが聞こえてきて気を悪くしているのに気付かない。

「なーんだ、そっちに声を掛けるならそっちでやればいいじゃん・・・」と突き放される。

この世界、裏ではみんな通じ合っている狭い世界だ。どこで誰がどんな事をやっているかは全てお見通し。知らぬは本人ばかりなり・・・だ。

まぁ、そういう事は経験する内にわかってくる社会勉強のようなものだけど、ね。

そもそもデモ程度の気持ちで録音したものが売れる確率は限りなくゼロに近い。
まして、他の企業なりを動かせるほどの魅力があるとは思えない。
あくまでもライブに来るお客さん、つまり身内を対象とするのが関の山。
デモはデモでしかない、というのがこの世界の掟。
商品とするなら企業の意図や現場の意見などが反映されて初めてGOサインが出る。
つまり、それを売る時に関わる人の入る隙間のないものは、売れない、正確には売りにくい、という事。
だからどんなに気に入ったデモでも、それを一旦捨てて、改めてゼロから作り直しになる。

そこでいろんな事がわかる。
本当にデモのような音楽をコンスタントに演奏出来るのであれば何度録音してもクオリティーは変わらない。
たまたま、偶然的に上手く出来ていた、、、なんてところは再演出来ないからだ。
いろんなところに他人の手が入って来るものだけど、本質が変わらなければそれらを乗り越えられるはず。
それが乗り越えられないのであれば、まだ時期尚早、という事だ。

ジャズはその場限りの即興・・・・
それは半分は本当で半分は嘘だ。
音楽がハップンするその瞬間をいつでも用意出来なければならないし、かと言って完全に同じ事をやっているのでもないからだ。
もしもその場限りのものを聴かされて「よし、ではこれを一緒にやろう!」と言ってくれるレーベルがあると思う?
選択肢としてコンスタントに何処まで何が出来るのかが最初のボーダーラインで、その上に何が加味されるかで決まる。

ここまでの話しって、ある意味「オルタード・スケール」の存在と似ているような・・・・(笑)

「どう? その後。僕が言ってた事の意味、わかったでしょ?」

電話の先で「はい」と明るい声。
どうやら上手く行ったようだ。

誰しも若い時は「欲耳」というのに翻弄される。
自分よりも上手い人を自分と同じレベル、自分と同じレベルの人を自分より劣る、と決めつける。
それは自分を保護する為だ。
その為の要塞のようなオリジナルを作って、「それらしいサウンド」で自分の周りを固めていた彼が、ようやくそれに気付き、自分を一度リセットしたようだ。

自分の演奏を客席から聞ける耳を持て、という言葉が突き刺さったそうだ。
前に「君が客席に向かって立てば、君の右手は客席から見れば左側にあるという事を早く知れ」という言葉を教えた。

「俺、たまには“いい事”言うでしょ!?」

電話の向こうで明るい笑い声がした。
来年が楽しみだね。

Have a nice X'mas!

さて、クリスマス・イブながら、先週のお題の続きを待っている人も多いようなので今日もやりましょう!

■オルタード・ドミナント・スケールを過信してはいけない!

ここまでの解説の中で出て来たコードスケールにオルタード・ドミナント・スケールを加えていない。
コードの事を調べ始めた頃に「ここはオルタード」「ここもオルタード」「みーんなオルタードで演奏出来るんだ」みたいな説明を見た。

「本当か?」

嘘ではないが本当でもない。

先週取り上げたメロディーとコードで検証してみよう。

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(クリックで拡大/以下同じ)

問題になるのは三小節目。
そこにあるBb7のコードスケールの特定だ。

この曲のBb7として考えられるコードスケールを挙げてみると以下の候補となる。

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メロディーとの照合を行うと・・・

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うん。
この部分のBb7は[4.]のオルタードだね。

メロディーが#9thだし、同じ小節内にはb13thもあるし。
問題なし!
終わり!

ちょっと待て!

メロディー音は確かに#9thだし、同じ小節内のメロディーもGb=b13thだし、これらを満たすコードスケールは[4.]のオルタード・ドミナント・スケールとしか考えようがなさそう。。

でもね・・・

「じゃ、質問するが、このBb7には5thは無いのか? 本当に。」

オルタード・ドミナント・スケールを最初に知った時、これが頭に引っ掛かった。

ベースは本当に5thを弾かないのだろうか・・・・?

ここに5thがあると“違和感”があるのだろうか・・・・?

オルタード・ドミナント・スケールを鵜呑みにしてはいけない理由がコレだ。

コードは完全音程を持つ事によって「安定」する。
ところがオルタード・ドミナント・スケールを見ると、その安定を示すコードトーン5thがどこにも見当たらないのだ。
って事はココはとても不安定な響きを求めているわけか・・・?

っんなわけない。ましてAセクションの最後のドミナント・モーションだ。
安定しなければ曲が締らない。

そこで、オルタードに疑問を持って改めて見直すと・・・

あれれ?

ある事に気が付いた。

ココ、本当はこうじゃないの?
これで“丸く”納まってくれるんじゃないかなぁ。。。

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ナント三小節目のBb7をVm7のBbm7にすると、全ての説明がついてしまう。
本来ならココはBbm7って事じゃないのか?

逆に見ると・・・・

オルタードって呼ばれているところって同じ根音を持つマイナー・セブンスコードにすると「しっくり」馴染むって事。

つまり、本来はマイナー・セブンスコードがピッタリのメロディーがある所に、かなり“強引に”ドミナント・セブンスコードを挿入してインパクトを与えようとしている。
特にブルーノートともなる#9thの響きも伴うので昔はカッコ良かった、って考えてはどうだろう。

では、この部分の解析を続けよう。

ココは本当にオルタードなのか?
本当に5thの音は無くてもいいのか?

バークリー時代に「オルタードは存在しない」と力説していた教授に深く共感したのも、5thの存在を見逃さなかったからだ。

もしもコードスケール上に5thがあれば、これはオルタードではない。

するとどう考えても三小節目の三拍・四拍目だけ「F」の音が消えうせる、とは思えないし立証できない。
確実にこの部分、このコードのサウンドには5thが存在している。

ならば「しっくり」と馴染んだBbm7を軸にコードスケールを割り出せばいいじゃないか。
軸にするとは、、限りなく近い音を残すという事だ。

すると、、、

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Bbm7のコードスケールにMaj3rdを加えただけで出来るコードスケール、スパニッシュ・フリージアンが現れて来る。
演奏上はアヴォイド・ノートとなる Eb=11th を省いた七音スケールとすれば無理やり当てはめるオルタード・ドミナントスケールよりも整合性がある。

オルタード・ドミナントスケールを疑う事はない。
しかし、この「御都合主義」的なコードスケールは、コードスケール選択肢のかなり下の方、つまり「他のコードスケールが当てはまらなかった場合のみ」に登場する優先順位の低いコードスケールという事になる。

5thが無いスケールの方が少ない。

オルタード・ドミナントスケールの出番は、少なくて当たり前なのだ。
だから過信してはいけないよ。

(この項続く)



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