2011/10/27

カート・ローゼンウィンケルのアルバムはまるでアンサンブルルームのDeja-vu・・・  木曜:Jazz & Classic Library


ジャズは聴く音楽か?
それとも
やる音楽か?

又は、

ジャズは聴いて楽しむ音楽か?
それとも
やって楽しむ音楽か?


これは近年何処へ行っても「大きな課題」として漂っている問題。

その行く末はお隣のクラシックの世界を見ればわかるのだけど、プロという職場が何処にあるのかも定かではない。
オーケストラの団員になったとしても大学などで教えない限り音楽の専業とするのは難しい。
ソリストとしてクラシックの世界でやって行くには、自らの音楽や作曲作品を出版しながら売り歩くしか方法がない。
もちろんどの世界にだって「営業」と「本題」の仕事があるが、その区別すら定かではないのが日本のクラシックの現状だと思う。

その背景には、豊富なクラシック愛好者層と社会人演奏団体のネットワークがある。
では、邦人の新しい音楽家に対して将来への展望を支える環境作りはどうかと言えば、演奏の場はそれなりに用意はされているが、それだけでは喰って行けないのが現状だ。

だから、クラシックの若い音楽家の卵たちは、世界のありとあらゆる「コンクール」に登場し、願わくば優勝なりの話題が日本のマスメディアの注目となる事を祈るしかない。

しかし、それも近年では減っているのだと言う。

海外へ出る事への強い期待と不安を天秤にかけると「不安」が優る、というのならまだ可愛いのだけど、「とりあえずこんな事も、あんな事もやってまーす」みたいな感じで演奏家としての基礎固めも終わらぬ内に営業に入ってしまうのだそうな。

自分が本領を発揮する場所が無いのだから、自分の本題が何かがわからないまま営業を本題と勘違いしているらしい。

「忙しくて・・・」と嘆く人に「君、まだ営業しかやってないのに嘆くなんてだらしないぞ。本題の時にはこんなものじゃないんだから」と、渇を入れたつもりなのに意味不明な顔でキョトンとされて・・・。

「これじゃ、実力のある若者は出て来ないよ」と、知り合いのクラシック関係者はボヤく。

まぁ、それもあるけど、日々「厳しく」周りが観てないからじゃないの? と言うと、「確かに!」と(笑)。

もう随分前になるが、音楽産業就労人口の老齢化、という事が話題になっていた。
「人間、歳をとると物わかりが良くなりすぎて“つまらんもの”も許してしまうんですよ」と。

当人からみれば“孫”のような若手が“やんちゃ”をしているのに咎めなくなってしまう、というものでした。
つまり、「どうでもいい事」が「普通に蔓延してしまう」事への警鐘だったような気がします。

結果、クラシックの世界からは、国際的なコンクールでパフォーマンスを評価される演奏者は育っても、肝心の音楽を進展させる大元たる「作曲家」がまったく育たなくなってしまったように見えます。
やはり、「初めに曲ありき」ですから、そういう作曲家を育て上げるシステムや補助を充実させない限り、日本のクラシックは世界の中で羽ばたけないかもしれませんね。

ジャズも「お隣の事情」とは言えなくなりつつあります。
「厳しい年頃」の世代が育っていないようなのです。
一回り下の世代に対して「厳しい事を言う」世代が少なくなっているようです。
別に「オヤジの小言」の事を言ってるんじゃなくて、「良い」「悪い」はハッキリと伝えなければダメ。
だって一回り若い世代は「何が良い」か、「どこが悪い」か、全然知らないでやっているわけですから。

さて、そんな音楽の現状のお話しの後で聴くジャズ。
ジャズをやりたければ、聞きましょうネ、ジャズを。
別に古いのじゃなくてもいいし、新しいけりゃいいってものでもない。
ジャズはライブだ、とか言ってる人もいますが、ライブもアルバムも半々。
いや、繰り返し聴けるように制作されているアルバムならライブよりも確実に耳の肥やしになり得るゾ。
もうそれだけ十分豊富なボキャブラリーで満たされた世界になりつつあります、ジャズも。
大切なのは、いつまでも、初心でジャズに触れた時の気分を忘れない事です。

物知りになれば、自分が知識の全てを体得したような気分になる。
しかし、自分を振り返れば体得したような気分だけが残って、
何も体得していない自分が恥ずかしさに赤面しているかもしれない。
いいじゃない。
赤面する内はまだそのギャップを埋められるだけの距離なんだから。


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『REFLECTIONS/Kurt Rosenwinkel』(wommusic/2009年)

カート・ローゼンウィンケルは今や中堅ジャズ・ギタリストとして独自のフォーマットを広げて支持を得ている数少ない存在だと思う。
以前、このコーナーでも取り上げた彼のアルバムも刺激的だったが、今回のアルバムも、一見地味ながら聴き込めば彼らしい魅力に溢れた作品。

2011年7月28日木曜ブログ『最もポスト・メセニーなコンテンポラリー・ジャズギタリスト・・・カート・ローゼンウィンケル』→http://sun.ap.teacup.com/applet/vibstation/20110728/archive

わざわざカート・ローゼンウィンケル・スタンダーズ・トリオと名乗るだけあって、大半はミュージシャンズ・スタンダード・ソングで占められていて、彼のオリジナルは1曲だけ。

1.Reflections
2.You Go To My Head
3.Fall
4.East Coast Love Affair
5.Ask Me Now
6.Ana Maria
7.More Than You Know
8.You've Changed

Kurt Rosenwinkel (g)
Eric Revis (b)
Eric Harland (ds)

2009年7月、ブルックリンで録音

リズム隊のダブル・エリックはそれぞれサイドメンとして名が知れているが、特にどうのという事はない。良い意味でフツー。やはりカート・ローゼンウィンケルに耳が行くアルバムだ。

今日のタイトルとした「まるでアンサンブルルームのDeja-vu」とは、彼も僕も学んだボストンのバークリー音楽大学の校舎内にある大小様々なアンサンブル・ルームで日夜繰り広げられるセッションのような“良い意味でラフ”な作りのアルバムだと感じた事を表わした。

アンサンブルルームではアンサンブルの授業はもちろん、夜になれば学生達に開放されて毎夜セッションからリハーサルまで多種多様な用途の音楽が壁に吸収される。

そんな中で、このアルバムは僕らもよくやった「リアルブック・セッション」の雰囲気がそのまま伝わってくる。

世界中のジャズ・ミュージシャンの必須バイブルとして今も昔も一家に一冊、これがなければジャズ界では“もぐり”と言われるほど世界標準の譜面集『THE REAL BOOK』。逆にコレ一冊あれば世界中何処へ行ってもジャズメンと共演出来る『THE REAL BOOK』。

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気の合ったメンバーが集まって、各自が持参した「リアルブック」をパラパラとめくって、
「よし、じゃ、今度は341の“PEARLIE'S SWINE”をやろう」。
「ラジャー!」
「誰かこの曲知ってる?」
「うんにゃ」
「よっしゃ、じゃファスト・スイングでやってみよう」
「ラジャー」
「one-two-1-2-3-4」

レコーダーで録音しながら知ってる曲も、知らない曲もどんどん演奏してみる、そういうセッションだ。

知ってる曲はともかく、知らない曲になると妙に“燃える”。
後で原曲を聴いてビックリな〜んて事はザラ。

でもその時の集中力たるや凄い物がある。

そんな「リアルブック・セッション」のように“燃える”部分がありつつ、事前にちゃんと考えられ、練習し、計算された部分のある、「良い意味でラフ」なアルバムだ。

実は、冒頭に書いた文言はココにかかる。

ジャズは聴く音楽か?
それとも
やる音楽か?


もう少し補足すれば、

ジャズは「何処で」聴く音楽か?
あるいは
「何処で」やる音楽か?


バークリー時代、そういうセッションの中で、突然白昼夢のようなインスピレーションに閃いた瞬間があった時など、もしもコレを何処で演奏するのが相応しいか? と考えたら、そのアンサンブル・ルームが最適だったりする。

いや、そういう現場(セッション)を聴きに来る連中だっている。
基本的にリハーサル以外は扉をロックしない、正確にはノックさえすれば誰でも入れるのだ。

だから、僕らにはそういうアンサンブル・ルーム的なジャズ・セッションという「現場」が音を出す場所の一つに存在する。

レコーディング・スタジオでもなく、ジャズ・クラブでも無い、音を「聴き」「演奏」する場所。
カート・ローゼンウィンケルの、このアルバムを聴いていてその場所の事を思い出して仕方が無い。

1曲目“Reflections”はピアニストでもあり作曲家でもあったセロニアス・モンクの作品。モンクの作品とは書いたものの、この人の作品は非常にアプローチが難しく、他人が演奏する為の曲と言うよりも自分が演奏する為の曲、と言ってよい感じが殆ど。それをギターで上手くまとめたな、と思うテイクだ。

2曲目はスタンダードの定番的なバラード“You Go To My Head”。ギター・トリオのサウンドがピッタリのカクテル・アワーを連想する演奏。なんでギターって同じ音を連発してもカッコいいんだろうねぇ。羨ましい。

3曲目はウェイン・ショーターの“Fall”。かつてバークリー時代のビックバンド・アレンジでこの曲をリアルブックからピックアップして音出しをした事があるが、その時点では原曲を知らなかった(たまたまその時にベースを弾いていたのが納浩一で、「こんな曲があったんやねぇ」と言われたのを思い出したが、原曲を知らずしてアレンジしたから、きっと奇々怪々だったのだろう)。
しかし、ここでのカート・ローゼンウィンケルもかなりはみ出していい感じ。
ちゃんと曲をリスペクトしつつも少しずつはみ出して行くのがいい。
ただし、ベースのエリックはピッチが悪いし、ドラムのエリックのキックたるや浮足立っていて、好きじゃないな。こういうところにデリカシーが無いのはダメ。「音楽的に良いからどうの」とされるレベルではない。その分がちょっぴり残念なテイク。

4曲目“East Coast Love Affair”はギターのソロで出て耳慣れないサウンドがいいなぁ、と思ってクレジットを見たらカート・ローゼンウィンケルのオリジナルだった。
やはりオリジナルはいいね。
途中からリズム・インしてワルツになるのだけど、何となくモンクっぽいところやミンガス的なところもあったりして、彼がミュージシャンズ・スタンダードを取り上げたアルバムを作る理由がわかった気がする。

5曲目は再びモンクの曲で恐らく広く知られているナンバーでもある“Ask Me Now”。この曲を取り上げるミュージシャンは異常に多い。それほどセロニアス・モンクという人の世界が凝縮している曲なのだろうね。ここでは少しだけリズムをジャンプ・ビート化させてローゼンウィンケルらしい世界に仕上げている。
先にも述べたが、モンクの曲を自分のモノとするのは結構大変な事で、僕もかつてモンクの“Ruby, My Dear”を取り上げた時に悩んだあげくワルツとした経験がある。敬愛する曲であればあるほど、そのままでは余りにも大きな存在に自分の居場所が見出せない時があるもの。一種の自問自答なんだよね。

6曲めは再びウェイン・ショーターの“Ana Maria”。モンクとショーターのライン上にローゼンウィンケルの音楽観って成り立っているのかぁ、と、ここまて来てちょっと発見。
アルバムっていろんな発見があるものですね。何となく、ローゼンウィンケルというミュージシャンのバックグラウンドに触れられるようで面白い。

7曲目“More Than You Know”は最初のルバートなイントロの部分で「まったく知らない曲」と思って聴き進んでいたのだけど、リズムインしてからは「あっ、この曲知ってる」と思わず口ずさむ。が、途中から知らない曲だった・・・(汗)。
まぁ、そういうのもある。
でも、このセッション(アルバム)中、一番従来のジャズ・ギタートリオ、というイメージにピッタリ。
ピアノトリオでも、ヴァイブトリオでもない、ギタートリオ。
その言葉を見てパッとイメージ出来る演奏と音なんだな、これ。

最終曲は言わずと知れたスタンダード中のスタンダード、“You've Changed”。
ちょっぴり“斜に構えた”感じでジャズバーにでも座っていたいような、そんなちょっぴり「えーかっこしー」なジャズ好きにはたまらないナンバー。っあ、「粋」って書けばいいのか。
でも、こういうのがカッコいい時代が、日本にも、確かにあったんだよねー。

そういう気分に浸る内に演奏は終了。

そうかぁ、ギタートリオの醍醐味はバラードだ。
昔からそう思っていたが、改めて再認識させられたアルバムでした。






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