2006/9/22


毎週金曜日はヴィブラフォンやマリンバをやっている人向けのお話し。金曜第二十六回目の今日はマレットの替え時のお話しです

クラシックと違ってジャズの場合は曲毎にマレットを持ち替える事は殆どありません。100%ではありませんがジャズプレーヤーの殆どはずっと同じマレットを使ってどのような曲でも演奏します。

理由はただ一つ。

音色自体が即興演奏も含めた演奏者のキャラクターとなっているからです。

なので、よくわかってない人(アレンジャー)がスタジオなんかで譜面のあちこちに「Hard Mallets」とか「Soft Mallets」とか書いてあると・・・・・・・

全て黙殺(笑)

そこまでひどくはありませんが、まず録音されたトラックの中でハードに演奏するか、ソフトに演奏するかはその日のセッティングによって演奏者とエンジニアが決めますから、マレットの種類を指定する場合は事前に打診が必要になります。
大体「少しハード」とか「少しソフト」な程度のものは演奏者もそれとなく持って来てるはずですからね。

さて、その長い時間使うマレットの替え時というのは、実際にはどうなのでしょう。

人の事はよくわかりませんから、自分の事を書きます。

この7年の間に1度マレットが替わりました。
90年代は「綿巻き」のマレットも使っていましたが、粒立ちの良さと引き換えに音圧が上がらずライブの時などは散々苦労をする内に、若干粒立ちは犠牲になるものの音圧の上がる「毛糸巻き」のマレットへと移行しました。
概ね、何かのレコーディングを境に使うマレットが固定しています。

マッシュルーム・ヘッドという未知の分野のマレットに移行したのは、1999年に録音したこのアルバムが最初でした。

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『NEXT DOOR〜birth of the“Swift Jazz”/赤松敏弘』(ベガ・ミュージックエンタテイメント)

「毛糸巻き」マレットの弱点だった粒立ちを鋭角なヘッドの形で得られるというもので、それまでずっとスタンダードな(球形)ヘッドのマレットに慣れていたので、最初は随分「違和感」を感じて苦労しました。球形ヘッドのマレットならどの角度で叩いてもほぼ同じアタック音が出るのに対してマッシュルーム・ヘッドのマレットは角度によってアタック音が変ってしまうわけです。最初はとても厄介でじゃじゃ馬のようなマレットに感じましたが約1年使って「癖」を克服出来たので上記のアルバムの録音に用いたのです。

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GOOD VIBES M-229 (1998年から2004年冬まで使用)

それ以降のリーダー作やスタジオ録音はこのマレットを使っていました。

実はこの型番のマレットを使うのは二度め。但し以前使った時とは型番は同じでも感触はまったく別物と言ってよいほど変っていたのです。

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GOOD VIBES M-229(旧モデル/1980年代にボストンで購入)
このマレットは1990年のアルバム『アンファン』(ポリドール)で使っています。
マレット・メーカーは大企業ではないので材質や感触が不安定な為、気に入ったマレットがあると“その時”の在庫からまとめ買いしないと後悔する事が多いのです。この品番などはマレットの色まで変ってまったく別モノのような印象です。

さて、大きな転機は皮肉にも上記に続いた自分のアルバムが高音質カッティングで制作された事にありました。レコーディングした音がそのままCDになっていると思っているかもしれませんが、恐らく70%程度の質感に劣化しています。これはCDの製造工程で技術的に解決出来なかった問題でしたが、JVCが開発したXRCD24というシステムを使うとその劣化が90%台にまで回復しほぼアナログ時代のプレスと同等に。劣化を見越して「キツめ」のマスタリングをするのが常でしたが、このシステムが開発された当初はここまで音のエッヂが立つとは誰も予想していなかったのです。光栄にもこのシステムの世界第一弾プレスとなったアルバムを聴いて、今までとは違う音の出し方の必要性を痛感しました。
続くXRCD24仕様の二作目では前作の問題点はほぼクリアー出来ましたが、既に頭の中では「音色の転機」を感じていたのです。

試行錯誤で様々なマレットを約2年間密かに試していましたが、ライブなども行いながら自分で「次の音」と決めたのがこのマレット。

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Inaki Sebastian VCS-3 2004年から使用中

決定的にこのマレットで「行く」事を決めたのは、このアルバムのレコーディングでした。
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『Fankacoustics/角松敏生』(BMGファンハウス/2004年)

角松敏生さんの二枚組のアルバムのDisc-1のソロ・トラックですが、それまでにもライブで使って馴れたところだったので「確信」がありました。鞄にはそっとGOOD VIBESを忍ばせてはいたんですが・・・(笑)。
スタジオでプレイバックした時、自分で思っていた通りのサウンドに仕上がったのです。それはとてもフレッシュでした。マリンバの音色(中音域が好き)のような伸びやかなサウンドをヴィブラフォンに生かしたいと願っていたのです。

以降、全てのレコーディングにこのマレットを使っていますが、初期に購入した物はリペアーに出す状態で、明日から入院予定。予備のマレットの出動となります。

品質が安定しないという弱点が気になります・・・・

おしまい



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