2006/4/17

マイクロフォンの選定と音楽  月曜:ちょっと舞台裏

月曜日は毎回ちょっと舞台裏のお話しをしています。今日はレコーディングの時に最も密接な関係のあるマイクのお話し

ヴィブラフォン(vibraphone)の録音で一番信頼性のあるマイクロフォンとして有名なのがノイマン(Neumann)社のコンデンサーマイクです。このマイクロフォンはおおよそ何処のスタジオ録音でも登場する、いわばレコーディング業界のスタンダード・タイプと呼べるでしょう。ほとんどの楽器と歌に対応する優れものとの事(僕は音色はわかるけどマイクの種類や詳細に関してはそんなに詳しくないので、、、)

この写真はアルバムの録音で毎回お世話になっている世田谷のクレッセント・スタジオでのセッティングの様子です。
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楽器の上方に見える丸っこい二つのマイクがノイマンです。
このマイクは全音域(vibraphoneの)を比較的シャープに記録してくれると感じます。特に倍音の響きを忠実に記録すると思うのでピアノやシンバルに使われるのをよく目撃しますね

このノイマンのマイクで殆ど録音して来ましたが、昨年(2005年)の二つのアルバムは少し違います。

マレットを変えた事で音色も少し変った事から、いつものマイク・アレンジではない方法をエンジニアの花島君が提案してきたのです。僕もそれを望んでいたのでレコーディング初日の1曲目のラフ録りの時に試してみました。

選んだのはコレ
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ノイマンに比べるとかなり薄っぺらい感じのマイクで、何処か懐かしい感じの形をしていますが、これはソニー(SONY C-38B)のコンデンサー・マイクなのです。
同時に二種類のマイクで録音した音をコンソール・ルームで聴き比べた結果、今回のアルバムのコンセプト(ソリッドな音よりもブレンドした音)には、ソニーの音色がよりフィットすると判断したわけです。

さて、マイクのセッティングに関してです。

鍵盤からやや離れてセッティングしていますが、vibraphoneは発音体が鍵盤全域の上部にあるので上方にセットする事によって集音するマイクの本数を減らす事が出来ます。
実はマイクは数が少ないほど源音に近い響きが記録されると思うのです。
対して、マイクをもっと下方にセットすると、かなり「生々しい音」が記録されて“ある意味では上手に演奏されているように”聞こえます。いわば一つの録音のマジックですね
でも、インストのアルバムではそんなごまかしは効かないので、楽器から“聞こえるがまま”のセッティングに

楽器がセッティングされている場所は、実はとても狭い小部屋。vibraphoneがちょうど程良く納まる感じの広さ
スタジオにはビッグバンドが入るくらいのメインブースと、このような小部屋(ブース)がいくつかあり、当然メインアーチストは広々としたメインブースに・・・と思うでしょうが、僕はこのブースを好んで使うのです。

あ、決してクレッセント・スタジオのスタッフが僕をイジメでるんじゃありませんよ

全部のブースとメインブースはガラス張りのドアと窓で見通しが効くので演奏に支障はありません。死角となる場合はカメラをセットしてモニターで互いの疎通を図れます。

クレッセントにはベーゼンドルファーとスタインウエイという二台のピアノがあり、録音の前はピアニストにどちらを使うかを選んでもらっているのですが、ピアノという楽器はvibraphone以上に音が空気中に散る楽器なのでブースに入れるのとメインブースに出すのとでは音色に大きな差があります。比較的ピアニストも弾き慣れているスタインウエイはブースで録ってもバランスの良い音になりますが、ベーゼンドルファーはなかなか手強くメインブースで録ると、より良く響くのです。
デュオの場合はヴァイブは小部屋、ピアノは大部屋に分かれてセットします。

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メインブースのユキ・アリマサ(p)の周りには写真で見るようにノイマンのマイク3本と離れた位置で残響を録るマイク2本という仕掛け。後方には最後まで彼が選定していたスタインウエイのピアノも。その後スタインウエイはピアノブースに撤収。

まぁ、これに比べればvibraphoneは小部屋でシンプルなセッティング
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僕がこの小部屋が好きな理由には、小部屋の中であればヴァイブの音が充満し、僕自身の身体に直接その波動が伝わってくるので「より通常」に近い感覚で演奏できるという、


実は大きな秘密があるわけです


ヘッドホンのモニタリングで演奏するのは苦手という人もいますが、ココでも肝心なのは・・・・やはり創意工夫です。

演奏となると、お互いに相手はガラス張りのドア越しに見えるものの、音はまったく聞こえませんから、二人ともキューボックス(手元で音のバランスを調整するモニタ)とヘッドホンを使って聴き合いながら演奏するわけです

スタジオのコンソール・ルームにモニターがあり、エンジニアは演奏の様子をガラス越しの視線とモニターを併用しながら作業するわけです

コンソールでカメラマンがその画面を撮ったショットがあります。いかに僕らが楽しみながら演奏しているかお分かりいただけるかな
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マイクの選定やセッティングはエンジニアの人と相談しながら自分達が演奏しやすい環境を作る共同作業なんですね。


おしまい



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