2006/7/13

歌である事・・・・・・・・Joao Gilberto  木曜:Jazz & Classic Library

ポルトガル語などろくに知らないのに、聴くだけで添えられた対訳に近いニアンスを感じられてしまう不思議な声。他の楽器の何物にも優る声をいつも和やかなメッセンジャーに仕立て上げる匠。
ジョアン・ジルベルトの事を書こうとすると、どんなに深い尊敬と敬愛を示しても僕のボキャブラリーでは月並で平凡な言葉にしかならない。

ジャズを聴き始めた頃、同時に耳に入ってきた音楽がボサノヴァ。だから僕の中でボサノヴァはジャズで言うブルースと等しい。いや、ジャズという音楽と同等にボサノヴァがある。小学校の頃、ジャズはなかなか目に付きにくかったがボサノヴァは違った。白い帽子とミニスカートのキュートなルックスで白いギターを弾きながらボサノヴァを歌うソニア・ローザをテレビで見たり、何となく気に入って見ていたTBSのホームドラマ“待ってますワ”の音楽がナベサダさんだったり、街中のBGMが気が付くとボサノヴァだったり、1960年代後半はそんな時代だった。だからボサノヴァが自分の音楽ルーツと言うのも大袈裟な話しではないんだ。

いろいろなアルバムの紹介をしているけど、今夜はこんな形で紹介してみましょう


■青春を味わっている人達にお薦めのジョアン・ジルベルト・・・この1枚

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『AMOROSO/Joao Gilberto』(Warner Bros/1976.77年録音)

決して盛り上がっている時じゃないよ、落着いてる時そんな時に聴いてみるといい。
人生日々いろんな事があるはず。嬉しい事も、楽しい事も、哀しい事も、スリリングな事も。いろんな事の頻度とテンポが小刻みに過ぎて行くけど、そんな時にちょいとリラックスしながらゴロンと寝っ転がって空を見上げてもいい、ドライブのBGMでもいい、楽しかったり哀しかったりと高揚した気持ちを静める時でもいい。ちょっと背伸びするのもいい。そういう人生で何度もある“一瞬の時”を切り取って永遠に脳裏へ焼き付ける最高の雰囲気を作ってくれる。

真夏なら灼熱の陽射しが傾いた夕方から。
夏よりも秋。
眠れなかった夜明け。

聴きながら何かわからないけど「これも“その一瞬”かもしれないな」
そんな時にお薦め。

大好きな曲は2曲めのEstate。こんなに儚く雄大な歌を他に知らない



■そろそろ落着いた年代を楽しんでいる人達にお薦めのジョアン・ジルベルト・この1枚

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『JOAO/Joao Gilberto』(Philips/1989年録音)

満ち足りた空間の中で過すリラックスした時間。ダウンライトで軽く。騒がしい居酒屋はそろそろ卒業して、どうせ飲みに行くなら気の利いたBGMの流れるショットバーやスポット。馴染みの店もあり、会話など無くても満ち足りた空間である意味日常の雑踏とそこから少し離れた場所を行き来するのが心地よい年代。
プライベートを何よりも大切にし、その中で人生の伴侶と共に自分の歴史を一つ一つ築き上げて行く。

少しだけ自分の人生を振り返る余裕もある。
いろんな思い出はそっとそのままにしておこう。
新しく購入する家具について構想を巡らす。
そろそろ秋の旅行プランも考えなきゃ

一つの区切られた空間が妙に心地よく、安堵感と共に愛しい。
今も私の人生は“あの一瞬”を忘れてないかしら、、、うん、大丈夫みたい。
そんな時にお薦め。

好きな曲は2曲めSiga


■超ショートヒストリー・・・・
ボサノヴァがこの世で生まれた瞬間から“そこ”にいたキーパースン、それがジョアン・ジルベルト。1958年7月ジョアンが“chega de saudade”(邦題:想いあふれて/ジョビン作/ヴィニシウス詩)と“bim bom”(ジルベルト作)の2曲を録音した瞬間からこの新しいブラジル音楽は時代の潮流にのって世界各国へと旅立った。Bossa Nova(新しい潮流)と名付けられたこの音楽は世界中のポピュラーミュージックに影響を与え、ギターを弾きながら歌うスタイルはその後のロック、ポップスの基礎を作った。
ブラジルの作曲家アントニオ・カルロス・ジョビンはアメリカのジャズのハーモニーとブラジルのリズムをミックスさせてボサノヴァを作り上げた。「浮かれて踊ってばかりの音楽ではないもの」を目指したと伝わる。
ジョアンはソフトなヴォイスと共にギターのボサノヴァ奏法を作り出した。ハーモニーで冷静に音楽をサウンドさせる事とブラジルのリズム楽器タンブリンの指の動きをギターに応用して現在にも伝わる“あの”ボサノヴァのリズムをギターで奏でた。
初期のボサノヴァ作品(当時の音源)は長らく幻の記録とされていたが、1993年に当時の音源をそのままデジタル・ミックスした『The Legendary Joao Gilberto』(東芝EMI/1958-1961年録音)が奇跡的にリリースされ話題に。

ジョアンの作品は長い周期でコンスタントにリリースされており、一昨年の初来日のライブ盤など。

個人的にだけど、ジョアンは完璧主義の人なので僕はいつもスタジオ録音にこそ、この人の「やりたい事」が描かれていると思う。
音楽はライブだ、という意見もあるが、もう一度基本のスタジオ録音に戻って、その人の「やりたい事」に耳を傾ける事もこれからの音楽では必要な気がする。スタジオ録音もライブも同じだったらつまらないけどね(笑)


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左/軌跡の復刻『The Legendary Joao Gilberto』(東芝EMI/1958-1961年録音)
右/スタジオ最新録音『Joao voz e violao(邦題:声とギター)』(Verve/2000年)

ジョアンの声は年齢と共にKey(調)も下がり声も低くなっている。でもそれが今夜紹介したように年代や指向別に分かれたいくつものお薦めに繋がる。“その時”の音楽、これが歌である事の幸福。

おしまい



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