2006/8/4

ジャズではクロスグリップが主流ですが・・Independent Grip  金曜:vibraphoneやmarimbaの為のジャズクリニック

毎週金曜日はVibraphoneやMarimbaをやっている人向けのお話し。金曜第二十回目の今夜はインディペンデント・グリップ(Independent Grip)と音楽との関わりについてのお話しです。

この金曜特集の「第四回目」でも触れましたが、今日4本のマレットを使って演奏する場合にいくつかの「持ち方」があります。
第四回に詳しく書いたので重複は避けますが大まかな区分けをすると次のようになります。

【種類】
(1)クロスグリップ系
 a:トラディショナル・グリップ
 b:バートン・グリップ
(2)マッサーグリップ系(インディペンデント・グリップ系)
 a:マッサー(ムッサー)・グリップ
 b:スティーブンス・グリップ

「こう持たなければならない」という原則はありません。個人的に自分が一番「持ちやすい」グリップを選択しそれぞれの短所を日々の練習で克服すればよいのです。持ち方については第四回目のところに弟子達の協力でそれぞれのグリップを載せています。参考に。

本日はこの中で(2)にあるインディペンデント系のグリップについて。
ジャズ叉はヴィブラフォンではクロスグリップ系が主流で、ゲイリー・バートンを筆頭に広く親しまれています。
しかし、欧米では特にマリンバを中心にインディペンデント系のグリップが広まりつつあり、日本でもこれから(あるいは現在)インディペンデント系のグリップでジャズを演奏しようと考えている人もいるはずです。
そこでクロスグリップ主義の立場からいくつかのヒントを記しておきましょう。

■インディペンデント系の弱点を克服しよう。

インディペンデント系のグリップはマレット個別の操作性に優れている長所がありますが、欠点はクロスに比べると「音量」が出ない点。独奏が主流の音楽では問題ありませんが、アンサンブルやバンドに加わると大きな障害となります。

・マレットによって音量を出す試行のススメ
・楽器自体を改造するススメ

“マレット”は様々な種類があるので根気よくニーズに合うマレットを探す事です。注意すべきは「ハード」なマレットはアタック音は強くなるが全体の音量は上がらないので「減衰時間の長くなるマレット」で「音量の出る」マレットを見つける事です。
“楽器自体の改造”は主にピックアップを装着する事でアンプを介して音量を上げる方法です。電気回路をMIDIまたはデジタル対応とすれば、様々なエフェクトを使ったエレクトリックな表現も強力な「武器」となります。注意すべき点は「音源だけ」に頼った楽器にならない事です。いくら4本、叉は6本を駆使してもキーボーディストの10本の指にはかなわないのです。必ず何処かに「らしさ」を残したアレンジを忘れないように。


■先人のスタイルから学べ!

ジャズにおいてインディペンデント系のグリップで最も先進的かつ意欲的な演奏を行っているヴィブラフォン奏者となると、マイク・マイニエリを聴け!です。マイニエリ氏ほどインディペンデント系のグリップを有効に使ったプレーヤーを僕は他に知りません。

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『Blues On The Other Side/Mike Mainieri』(Argo/1962年)
オーソドックスに、それでいて御機嫌にスイングするアコースティック・ジャズです。インディペンデントとクロスは何が違うかというと、コードを弾く時の音量にあります。伴奏に選ばれる音はそんなに違いありません。面白いのは、ソロの途中メロディーをハーモナイズする時に、クロスだとメロディーの下にフォローする音を入れるのですがインディペンデントだとメロディーの上にその音を入れています。これだけでもニアンスに違いが出てきますから演奏スタイル(音楽の)も異なってきますね。

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『Love Play/Mike Mainieri』(BMG/1977年)
アンプリファイアされたヴィブラフォンやシンセヴァイブを使ったマイニエリ氏の代表作。クロスグリップの僕でさえライブのマイク・アレンジでは苦労するほどヴィブラフォンはステージでの集音が難しいのですが、初めて聴いた時その悩みに「直球ストレート」で答えを出された気がしました。
音量の出ないインディペンデント・グリップの弱点を見事に補って、さらにエレクトロニクスと直結。誰もがヴィブラフォンという楽器の新しい展開を予感させられたアルバム。

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左/『Smokin' in the Pit/Steps』(Better days/1980年)
右/『Steps Ahead』(Elektra/1983年)

マイニエリ氏のリーダーバンド「ステップス」(後にステップス・アヘッドと改名)。伝説の1980年12月六本木ピットインでのライブ盤は今日でも多くのミュージシャンやファンの脳裏に焼き付いている。04年、そんなステップスを敬愛するミュージシャンの一人、ベーシスト須藤満氏が同じ六本木ピットインで主幹した「ステップス・ナイト(ステップスの曲だけを演奏する日)」で僕自身初めてステップスの曲を演奏する経験を得た。メンバーそれぞれがステップスを採譜して持ち寄るというものだったが、マイニエリ氏の曲を採譜する内に気が付いた事。
採譜して軽く楽器で音を出していたらどうしてもミスタッチしてしまうテーマの早いパッセージが。ちょっと練習するものの上手く行かない。そこで、もしやと思いパッセージをクロスの手順からインディペンデントの手順に代えたら「とても楽に演奏」できる。
発想や観念を変えると、その向こうに広がる音楽の核心に触れられてより親しみが沸くものです。

おしまい



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