2006/9/1

ヴィブラフォン奏者のマリンバ開拓史  金曜:vibraphoneやmarimbaの為のジャズクリニック

毎週金曜日はVibraphoneやMarimbaをやっている人向けのお話し。金曜第二十三回目の今日はヴィブラフォンと同じマレットキーボード楽器のマリンバをヴィブラフォン奏者が使った演奏スタイルについてのお話しです。

そもそもヴィブラフォンもマリンバも1930年代までは今のような形(含む音域)ではありませんでした。ヴィブラフォンなどは30年代に生産が始まったくらいでそれ以前は楽器そのものが存在していないのです。マリンバも今のように豊かな重低音を発するものではなく、この時代のマレット楽器と言えばシロフォン(木琴)がメインでした。

ジャズでこの時代の演奏を色濃く残していた奏者にレッド・ノーヴォ(Red Norvo)がいます。幸いにもノーヴォは数多くのアルバムを残しているので今日でもその演奏を聴く事が出来ます。
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『RED&ROSS/Red Norvo & Ross Tompkins』(Concord/1979)

ともすれば、ヴィブラフォンがジャズで注目され始めた時代以降の事に歴史が偏り気味ですが、シロフォンの時代から受け継がれたノーヴォの演奏にマレットキーボード・ジャズの原型があるように思い、ジャズそのものの原型とも言えるラグタイムに通ずる雰囲気があります。一度聞いてみると良いでしょう。

さて、ヴィブラフォンという楽器がライオネル・ハンプトンによってジャズで紹介されると、残響の少ないシロフォンから一気に残響のあるヴィブラフォンに注目が集まり、様々なプレーヤーが現れました。同じようにマリンバも残響や材質に改良と工夫が加えられ、より豊かな音色を得てシロフォンとは違った楽器となりました。
1940年代以降、マレットキーボードはヴィブラフォンとマリンバという二本柱で進化を遂げるのです。

お互いに別々の発展を遂げたマレットキーボードですが、ジャズの世界では1970年代になってヴィブラフォンをエレクトリック化する反面、アコースティックな表現としてマリンバの音色に注目する奏者が現れました。


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『FUTURES PASSED/David Friedman』(enja/1976年)

7月28日の金曜特集『Chamber"Jazz"music とヴィブラフォン&マリンバ』でも紹介したデイビッド・フリードマンはドラムの補助楽器としてマリンバを習った事が切っ掛けでマレットキーボードも始めジュリアード音楽院でパーカッションを専攻、卒業後ニューヨークフィルのトラ等音大を卒業した学生の多くと同じコースを歩んでいましたが、ある日見たスタン・ゲッツ(ts)のバンドのゲイリー・バートン(vib)に魅了され、即ヴィブラフォンの弟子入りをした経歴のある新世代感覚のプレーヤー第一世代です。
マリンバという楽器をみっちりと学んだ経験と、元々ジャズドラマーがアイドルだった事を生かして、木琴的な印象を拭い去ったマリンバの豊かな表現方法をジャズに持ち込んだ第一人者。彼はヴィブラフォンとマリンバの長所を適材適所で引き出すセンスが抜群で、作曲に於いてもそのバランスのよいサウンドが人気です。


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『LINGER LANE/Bobby Hutcherson』(Blue Note/1976年)

ボビー・ハッチャーソンは純粋なヴィブラフォン奏者でデイヴ・パイクにヴィブラフォンを習っています。1960年代から活躍しヴィブラフォンとマリンバを最初から併用するスタイルでスピード感溢れた演奏に人気があるプレーヤー。60年代のアルバム『HAPPENINGS』は特に人気があり、このアルバムでも二つの楽器を使い分けている。スタイルとしては、比較的オーソドックスなマリンバの使い方で、特にマリンバとしての特徴はない。むしろ、シロフォン的なスタイルを発展させてヴィブラフォンのハッチャーソン・スタイルが出来上がっているようで、単調になりがちなヴィブラフォンの音色にアクセントを加える意味(アルバムとして)でマリンバを使っている。紹介したアルバムはコレに続く『KNUCKLEBEAN』(blue note)と共にハッチャーソンが一番コンテンポラリーなアプローチを目指していた時期のもの。このアルバムではマリンバの方がメインでヴィブラフォンがサブに使われている。


代表的なスタイルとして、また、アルバムの発売時期も70年代半ばに揃えてジャズで使われるマリンバのサウンドを比較してみましたが、マリンバに対するイメージがこの二人の違いのように大きく二つある事がわかります。
その後、ヴィブラフォンもマリンバもこなすプレーヤーが増え、益々新しいアプローチが相互に行われています。

現在もこの2つのマレットキーボードは有機的に融合しながら、さらに新しい発展に向けて進化しているわけですよ〜。

おしまい



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