2006/9/15

ヴィブラフォンとギターの相性  金曜:vibraphoneやmarimbaの為のジャズクリニック

毎週金曜日はヴィブラフォンやマリンバをやっている人向けのお話し。金曜第二十五回目の今日はヴィブラフォンと相性の良い楽器のお話しです

相性の良い楽器には二種類あります。
一つはお互いの楽器が持ち合わせない領域を出し合って「ひとつ」のサウンドを生み出す場合。例えば管楽器とピアノ、ドラムとベースなどのように和音の出ない楽器と出る楽器の組み合わせとか、音程のある楽器と無い楽器の組み合わせとか。
もう一つはお互いの楽器が共有する領域を出し合ってサウンドを構築する場合。例えばギターとピアノ、マリンバとヴィブラフォンとか。
前者が「分担」という明確な役割を持っているのに対して後者には明確な役割がありません。つまり後者の場合は、楽器の相性と言うよりも演奏者の相性という事にウエイトが置かれている場合が多いのです。

ヴィブラフォンの場合は楽器の機能から見るとピアノに近い性質を持っています。メロディーもハーモニーも弾ける(つまりソロもカンピングも出来る)、そしてペダルで音をサスティーンさせるという共通した機能が備わっているわけです。
ところが、これだけ共有する部分が多いと和音をどのように組み合わせるかとか、音域をどうするかなど、お互いの音が「ぶつかる要因」も増すわけで、演奏者同士の持つ音楽的なセンスの相性というのが何よりも重要性を帯びてきます。
特にヴィブラフォンが4本マレット奏法の場合は「分担」という役割を超えてサウンドを出すのでピアニストがどのように「隙間」のサウンドをコントロール出来るかで演奏の印象は大きく異なってきます。

対してヴィブラフォンとギターの相性を見ると、お互いにメロディーもハーモニーも弾けるものの、特にハーモニーの出し方に違いがある事がわかります。ひとつはヴィブラフォーンがどのような音形の和音でもサスティーンペダルを使って弾けるのに対して、ギターは運指(ポジション)によって出せるサウンドに限りがある事です。対してギターはどの調でもほぼ均等な形(ポジション)でヴォイシングが出来るのにヴィブラフォンは鍵盤の位置で形が固定されている為に調によって不均等な形(フォーム)となります。
フレット楽器とキーボード楽器の成立ちの違いが大きいという事になりますね。

さて、そうは言うものの、ヴィブラフォンとギターは、ピアノよりも近い性質を持っているのです。そう、ピアノは10本の指を同時に操る事が可能な事に対して、ヴィブラフォンとギターは同時に4〜6個の音しか出せません。この「出せない」ところが、この二つの楽器の相性の良さに結び付いているわけです。サウンドが「ぶつかる要因」は同時に発せられる音の数が少なければ少ないほど減るわけで、ピアノとの組み合わせほど細かい選択を迫られる事がないからです。つまり二つの楽器が揃っても最初からサウンドに隙間がある、という事ですね(初級以外の音楽ではこの“隙間”の演出が最大のポイントになります)

ジャズのギターとヴィブラフォンの組み合わせで、その面白さを最大限に引出した演奏と言うと、僕はラルフ・タウナー(g)とゲイリー・バートン(vib)のデュオだと思います。

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『MATCH BOOK/Ralph Towner & Gary Burton』(ECM/1974年)

曲によってはタウナー氏がギターをオーバーダブしいますが基本的にはデュオそのものです。74年5月のバートン氏のクァルテットの来日公演にタウナー氏がゲストで加わったステージで初めてこの二人のデュオを聴きましたがバートン氏もさる事ながらタウナー氏がギターで奏でるそれまでのジャズギタリストが弾くコードサウンドとは明らかに違う世界に驚いたものでした。

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『SLIDE SHOW/Ralph Towner & Gary Burton』(ECM/1985年)

前作から約10年を経たこのデュオの二作目は、よりワイルドでダイナミックな音作りとなりタウナー氏の曲作りが益々冴えています。いわゆるエレクトリック・ギターの世界とは違うアコースティック・ギター(クラシック・ギター)のコンテンポラリーな作品としてジャズと締めくくるにはもったいないほどの作品が並びます。ここではタウナー氏のオーバーダブに加えてバートン氏も曲によってはマリンバを使っています。
89年にボストンでこのデュオのコンサートを見ましたが、CDそのままのサウンドがステージに並べられたタウナー氏のエフェクト・セッティングから聴こえて来るのでエンジニアの友達と「凄いねぇ」と感心しました。スタジオとライブは異なるんじゃないかと思ったんですが、ホントそのまんまでした。エフェクトも含めて「楽器」なんですね。

これらの作品ではこの二つの楽器の隙間にどのようなスリルを与える作品(曲)が相応しいのか、その作品をジャズの用法(つまりはコードインプロ)を使って何処まで高められるのか、それらの極限が聴こえてきます。もちろんジャズのスタンダードもその「隙間」の演出にかかるとまるでマジックのように変身しています。そう、あくまでもこれはジャズなんです。


おい!じゃあ、日本じゃどうなのよ・・・・




はい、いますよ






僕(笑)




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『Nows The Time Workshop - Vol.2』(BMGファンハウス/1991年)

帰国直後にリリースされたオムニバス・アルバム(リーダーセットで3曲収録)。この中に1曲ギターの道下和彦君とのデュオがあります。タウナー〜バートン組とは違いますが、これも「隙間」の組み合わせとして何処かで見掛けたら聴いてみて下さい。自分でもこのトラックは残しておいて良かったと思っているのです。ギターとのデュオ、いいですねぇ。今ちょうどいろんな若手ギタリストを聞きに出掛けてるところなんです。

おしまい



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