2007/5/18

続・ヴィブラフォンから見たマリンバ  金曜:vibraphoneやmarimbaの為のジャズクリニック

毎週金曜日はVibraphoneやMarimbaをやっている人向けのお話し。この金曜特集の記念すべき第五十回目の今日はヴィブラフォンから見たマリンバのお話し続編です。

続編と言っても前回が昨年の7月14日のブログ(この金曜日特集の第十七回)でしたから随分と間隔の開いたものですが、その間に新作のレコーディングで自分もマリンバを弾いていろいろと感じた事もあるので一方的な文章にはならないでしょう。人間日々成長しているのです。

ヴィブラフォン人口の恐らく100倍のマリンバ人口があると思います。それだけ親しまれた楽器マリンバ。ヴィブラフォンを演奏している人間でマリンバを経由した数も多いはず。僕もその一人です。

クリックすると元のサイズで表示します
ヴィブラフォンはいつものペースでリラックス

先日のレコーディングの時、あらためてマリンバに襟を正して接する機会を持ちました。今までにもアルバムのいくつか(90年の『アンファンIII』や2005年の『フォーカス・ライツ』)やライブ番組(NHK−セッション505)でマリンバを弾いているシーンはありますが、あくまでも補助的に使ったもので作品(アルバム)の核としてマリンバを弾いたのは初めて。それと言うのもアルバムに参加してくれている松島さんやマリンバ王子を始め、僕の周りにいる弟子達やネットを介して交流のあるたくさんのマリンビストからの影響もあって、改めてこのマリンバに注目した事もあるでしょう。
もちろん、これでマリンバ道を究める!などと言うつもりはありませんから、松島さんや王子他「ヌヌヌ、でしゃばりヴァイビストめ!」と思っている人はどうかご安心を(笑)。似非マリンビストですから専業の人と今さら張り合っても無理です。

ただ、僕が四半世紀前に自分ではマリンバを弾くことに見切りをつけたというのには一つだけ理由があります。
当時(当時ですよ)僕がヴィブラフォンをやって、誰か一緒にデュオでマリンバを出来る人がいないかな〜ぁ、といろいろ周りを見たのですが、、、、、、

誰もいなかったのです。
そう言うチャレンジ精神に溢れたマリンビストは若手(と言っても僕も20代でしたが)にいない、でもこのプランは試してみたい、、と思って、恐れ多くもマリンバの師匠、安倍圭子氏に声を掛けて一緒に秘密裏にデュオを行っていたのです。
某音大で誰もいない時間帯に、あるのは楽器2台とマイクロフォンと録音用のデッキ。何度かのセッションを記録して終わりましたが、その時の体験はヴィブラフォンとマリンバの組合せとして自分の中では最高の緊張感に溢れて、回を重ねる毎に自然にいくつかの曲が生まれるほどでした。コンテンポラリーな音楽として。
それらが生まれる瞬間にあるような緊張感をもっと自分がやっているジャズに持ちたくて、それからは僕はヴィブラフォンとジャズに専念、安倍先生はマリンバの世界をさらに突進めて行かれました。

さて、四半世紀後の今日。
今度はジャズの側からマリンバという楽器を改めて見る事になりました。
すると、(完全な自負ですが)あの時と同じようなマリンバの存在感が具体的にイメージされたように思えたのです。

いくつかの発見がありました。

クリックすると元のサイズで表示します
マリンバとなると勝手が違うのでいろいろと思案作戦

まず、近年のレンジ(音域)の広がったマリンバ(5オクターブ)をどのように操るか、が録音が始まってからの緊急課題。

どんな楽器でも、その楽器の最も得意とする(特徴)帯域があるもので、3オクターブのヴィブラフォンと比較して一番マリンバが得意とする音域をフラットの状態で探りました。スタジオレコーディングですから完全にマイクによって楽器の“素”の音がアカラサマになります。コンサートホールなどではわからないマリンバの素顔は、中音域に集約されていました。低音域は魅力はありますが共鳴管によって作られた人工的な音、高音域は叩くマレット次第、という分析で、これは録音を担当したエンジニアも同じ意見で「この楽器はホールの残響を想定してかなり作られていますね」と。

この事から、ポイントは中音域をメインに低音域は効果音として操れば上手く行くだろう、という予測に。

マレットは中音域でレスポンスの良いものなら低音域でも応用出来るだろう。
中音域と言ってもヴィブラフォンよりも低めにポイントがある。
これと同じ帯域を有効に活用している楽器を他でイメージすると何だろう?

あッ


ジャズならアコースティックベースだ
そうだ、ベーシストと同じアプローチで曲を演奏すればいいんだ!
まずはその日スタジオの環境で得たこれらの分析を、録音をスタートさせる前に思考回路にインプット。

低音域は中音域に比べて音が伸び過ぎる。
共鳴管に細工するのは時間的に不可能だからマレットを振り下ろすスピードを変える事にする。ストレートに振り下ろすのではなく叩く寸前で一瞬ブレーキをかけるんだ。それによって中音域の残響とのバランスが取れる。
中音域より上はアクセントに手首のスナップを生かす。これで中音域用のマレットである程度の高音までカバー出来る。
ベーシストなんだから必要以上の高音は出さなくて良い。

演奏中にこんな事を意識しながらテイクを二つ録音。バランスの良いほうをOKに。
お気付きの人もいるでしょうが、要するに全体のバランス(特に残響)を音域毎に変える事で表情が落ち着く、というのが楽器のポイントを定めるのに有効だったというわけです。

もう少し僕なりに観察した事は次回にまとめましょう。
視点を変えると、僕と同じ結論を持つ人もいるんじゃないでしょうか。
面白いですよ、マリンバは。

おしまい



teacup.ブログ “AutoPage”
AutoPage最新お知らせ