2007/5/21

レコーディング・エピソード・・・ちょっとサプライズ  月曜:ちょっと舞台裏

アルバムのレコーディングとなると事前の打ち合わせは重要。レコーディングを如何にスムーズに進行させるかの事前作業はミュージシャンによって様々なんですね。

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僕らの世代以降であればみなネットを介して繋がっているのでメロディーやコード楽器の場合はメールと添付ファイルによって譜面の送受信が行われ、それによって相手がある程度曲のイメージを事前に把握する事ができますが、それでもリズムセクション、事にジャズの場合はリズムパターンで演奏するわけではないのでベースやドラムの場合は何かヒントとなるサンプル音源が必要になって来るわけです。

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かつて記録している過去の音源をiTuneからピックアップ

若い頃は毎晩のように共演者とライブで顔を合わせ、幾度と無く繰り返し演奏された曲を録音したり、何度もリハーサルを繰り返して曲をまとめて行ったりしました。その為の時間は無限にあったのかもしれません。でも今はみんなそんな時間はありません。
90年代はシーケンサーやパソコンを使ってサンプル音源を作っていましたが、(その頃は完璧主義だったので/笑)物によってはその音源がミュージシャンの発想を妨げている事もあり、最近は人間が演奏したサンプルがあればピックアップするけど他は譜面のみでサンプル音源無し。
パソコンで作った物は確かにイメージを明確に出来ますが、ある意味で余計な押し付けや威圧感を与えてしまう事もあります。「コレ、このままでいいじゃん!僕らが演奏するよりも機械のほうが完璧じゃん!」って。

メンバーの人選の段階で僕は相手がどんな演奏をしてくれるのかを最大限で予測します。過去に一緒に演奏した時の記憶、最近の音源、電話やメールで話したりやり取りしながらそれらを組み立てて行くのです。
今回、サンプル音源を事前に用意したのは2日目のセッションのみ。後は個別に会って僕がピアノを弾いたりしてその場でイメージを伝えただけ。ユキ・アリマサとのデュオなどはスタジオで初演奏でした。
作りこんだり、ライブでこなれた曲のレコーディングも良いのですが、僕はジャズのレコーディングはセッションこそが一番重要だと考えているのです。それはライブよりも強く。

その二日目のサンプルをまとめていた時に、ある曲でいくつか過去に残していたライブの音源(もちろんメンバーも編成もまったく異なる)を辿って行くと一番最初の音源に行き着きました。曲のニアンスが最も明確に残るのは作った当初、という事です。その後に演奏した物は演奏のクオリティーが向上するに連れ、演奏者それぞれのカラーが反映されているので「演奏のお手本」になってしまう危険性があるのです。
そこでもう20年も前の音源を採用して送ったのでした。感性豊かなミュージシャンに渡すサンプルは未完成な物であるべきなのです。
音源で誰が演奏しているというメモは特に必要ではないので添えていませんでしたが、それがあるサプライズになるとはこの時は思っていませんでした。

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さて、録音当日。
集合時間にスタジオで顔を合わすと、某君が僕に尋ねてきた。

「あの音源は誰が演奏してるの?」
なるほど、そう来ましたか。演奏者に興味があるのだろう。

「うん、最初の2曲はカクカクシカジカだよ」
「へえ〜、外人さんかぁ。なるほど」

「で、次のは後藤君(ゲスト)の名古屋のトリオの演奏」
「あ、じゃあ誰々だ。結構いいなあ、いや、この演奏カッコいいなぁ」

「で、もう一つのだけど・・・」
「ああ、これこれ、誰ですか?」



「誰だと思う?」


「いやぁ〜、こういう感じの人って、、、あんまり知らない、う〜ん、誰だろう??」


















「わからない?」






「うん、、、」


















「それ、」






「・・・・」




「20年前の君だよ!」



「え〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」

某君は飛び上がらんばかりに驚いた。
事の成り行きを見ていたメンバー、スタッフとも驚きと大爆笑。
みんな知らなかったのだから、そのサプライズは。

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ブレブレ写真をココに載せると某君捜しみたいだけど(笑)

「バークリー時代のリサイタルだ。確か1A(小ホール)」
DATで記録していた音源は20年経っても鮮明だ。
「こ、こ、こんなサプライズがあるなんて、、、、」

しきりに20年前の自分の演奏を分析する某君。

「ハハハ、もういい。今日は20年後の姿をお互いに録ろうゼ!」

確かにこの曲は1度しかやってない。特にバークリー時代はみんな次から次へと演奏する日々の繰り返しだから覚えているほうが不思議なくらいだ。
僕だってその頃やった他の人の曲なんてすっかり忘れてる。もしも誰かがそれを記録してて聞かせてくれても自分だという確証はなかなか持てない。ヴィブラフォンは数が少ないから聴く内に自分だとわかるとは思うが、今でも車で走りながらFMを流していて途中から「なんかこの曲知ってるような気がするなぁ」と間奏の所でヴィブラフォンのソロが聞こえてきて「あ、オレだ!」とか、人の事は言えた義理じゃありません(笑)。(言い訳するとレコーディングはオーバーダブが多く、完成品のサンプルを送ってくれなかった人の物は大概そうなる)

まだ興奮覚めやらぬ某君に、

「でもね、録音が終わってから教えようと思ってたんだよね。それ」(笑)


おしまい



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