2007/5/24

究極に凄い!・・・・George Russell(comp)  木曜:Jazz & Classic Library


ジョージ・ラッセル(George Russell)は今年84歳になるジャズの作曲家。屈指の理論家でもあり、1953年に発表した理論「リディアン・クロマチック・コンセプト・オブ・オーガニゼーション」はラッセルの友人だったマイルス・デイビス(tp)を始め、ジョン・コルトレーン(ts)、ビル・エバンス(p)等、当時どん詰まりにあったBe-Bopのコードチェンジ(リックによる決まりきった短いフレーズの羅列)から解き放たれて束縛されないモーダル・ジャズへの進展を促す大きな要因となった。

そればかりか、クラシックの世界で多くの謎を含んでいた12音技法や民族音階を使った現代音楽的技法(例えばバルトークを分析した学者エルネーが唱えた説よりも)の解明にも寄与し作曲家武満徹にも影響を与えている。

難しい言葉を並べるよりも、単純にラッセルの音楽を聞いてみると良いでしょう。
今夜はとにかく驚異的にワープするイカしたビッグバンド!

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『The 80th Birthday Concert/George Russell and The Living Time Orchestra』(Concept Pub/2003年録音)

もしもココにスイングおじさん(ジャズ誌スイングジャーナルの論評に登場するキャラ)がいたら、僕はメガホンを放り投げてイスから飛び上がって目をグリグリにしたスイングおじさんを書きます。こんなにエモーショナルなビッグバンドは最近聴いた事がない。

ラッセルの音楽に初めて触れて大いに触発されたのはピアニスト、ビル・エバンスの異作中の異作『Living Time/Bill Evans & George Russell』(CBS/1972年)を聴いた時でした。当時僕は高校で独学でやってきたヴィブラフォンをマリンバの基礎からみっちり修正していた頃で音楽に関してもジャズでも何にでも興味があり、少しでも自分が知らないものを吸収したくて学校のライブラリーの中にあった「見知らぬ」音楽を無心に聴き漁っていた状態で、バルトークやヒンデミット、ストラビンスキーや武満徹の音楽にどっぷりと触れた耳でジャズを聴くとジャズに欠けているもの、ジャズにしか無いもの、がより鮮明に浮かび上がって発見だったのです。そんな時子供の頃からファンだったビル・エバンスが「何処かの強面のオジサンのビッグバンドと何やってるんだろう?」(裏ジャケットの写真を見て)と気軽に買ってきたこのアルバムを聴いた時は腰を抜かしそうになった。

「不意打ち」

まさにショック。

ジャズのビッグバンドがココまでやれるとは想像もしていなかった。当時のマイルス・デイビスの音楽と共通する時代の音だったのですね。

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『Living Time/Bill Evans & George Russell』(CBS/1972年)

衝撃はそれまでまったく無関心だった大編成による演奏(僕は典型的な室内楽・コンボ型人間だった)に耳が広がり、カウント・ベイシー、デューク・エリントン、ギル・エバンス、サド=メル、クラーク=ボーランといったビッグバンドのアルバムも興味を持つように。


さて、とは言うものの、ジョージ・ラッセルのアルバムはこの『Living Time』以降それほど目立った宣伝がされたわけでも無く、またビル・エバンスとの組み合わせのような話題性もなく、この衝撃がつい最近まで30年以上も鮮明に残ったままブラックホール化。
CDショップに立ち寄ると必ずラッセルのパーテーションはチェックするものの1960年代初期の再発ものばかりでその後のラッセルはどうなっているのか知らず(僕は殆どの場合アーチストの最新アルバムを買って気に入れば時代を遡る)、久し振りに覗いたらこの80歳記念コンサートに出会した。

聞きもしないで購入したのはバンド名に、あの衝撃のアルバム名、「リビング・タイム」が付けられていたから。

80歳を迎えたラッセル。
どんな爺さまになったのでしょーか。
期待と、少しの不安(ファンだから)を宥めての1曲目

ギョギョギョ〜!

いきなり静寂だぜ。

ハッハハ、見ればタイトルも“Listen to the Silence”と。
この美しさは、まるで僕のような長年御無沙汰しているファンに「君たち、ちゃんと21世紀流にやってるか?」と軽〜い先制パンチ。

アナウンスの後の曲には注目した。
ラッセルとメンバーによるラップで始まるのは明らかに“Electronic Sonata for Souls Loved by Nature”。このブログのヤン・ガルバレクの時(2007年2月1日)に紹介した1971年に発売された同名のアルバムそのものなんだけど、ココにいるのはラッセルのリビング・タイム・オーケストラ。
後ろに流れるテープ音楽は68年に制作したものと最近挿入されたと思われるものがミックスされていて面白い。時々グランジ系のミックスも混ざるなど、ラッセル、80歳とはとても思えない感性。

確かに僕らが30年以上前に聴いたベースラインの断片(シーン毎にベースパターンがリードしてゆく手法)だが、確実に今日のタイム感に変形させている。

驚いた事に、その変形されたベースパターンはやがてマイルス・デイビスの“イン・ナ・サイレント・ウェイ”のベースラインと重なり再びオリジナルの変形へと戻ってブラスを煽る。このパワフルさはあのアルバム「リビング・タイム」の今日版だ。
ライトになったリズムは難解さを過去のものとして30年前のオブラートを取り除いてくれラッセルとマイルスが友人であったという事が改めて音で確認できた。
そう、この連続演奏やサウンドはマイルスが自分で指揮していた最後のアガルダ・バンドのコンセプトそのものだ。

凄い。音楽は前向きに「わくわく」させなければ意味がない!

同オケのメンバーHiro Honshuku(fl)はバークリー時代の同期生。アメリカに残った彼等の活躍が聴けたのも大きな収穫だった。

おしまい



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