2007/5/25

続・続・ヴィブラフォンから見たマリンバ  金曜:vibraphoneやmarimbaの為のジャズクリニック


毎週金曜日はVibraphoneやMarimbaをやっている人向けのお話し。第五十一回目の今日は先週の“続・ヴィブラフォンから見たマリンバ”の続編です。

先日から弟子界隈でも話題に上っているヴィブラフォンのマイク・マイニエリ氏率いるSTEPS AHEADの日本公演。僕は行ってませんが、珍しく弟子界隈でも賛否両論半々。日程、セット、店の雰囲気、聞いた人の気分によって大きく左右されると思うし、万人が一つのモノを好むとは限らないけど、それぞれの記憶の中に大切に残しておきましょう。何しろマイニエリ氏はジャズでは貴重なムッサー・グリップの達人。インディペンデント・グリップは音量が出ないのでジャズでは敬遠されますがマイニエリ氏はアタッチメントやシンセヴァイブを駆使してハンデを克服したイノベーター!
もっともマイニエリ氏はソロが盛り上がると両脇の二本は邪魔と見えて楽器の横に括り付けた篭に「えいや〜!」とばかりにマレットを投げ込む“マレット投げ”が一つの見ものでもあるのですが(笑)、今回はど〜よ?と聞くと「大人しく入れてました」。

STEPS AHEADは日本でデビューしたバンド。AHEAD(STEPSでデビューしたところアメリカに同名のロックバンドがいる事で急遽STEPS AHEADと改名)が付く前の“STEPS”として大々的に売り出したのは、今は無き懐かしの「六本木ピットイン」の企画だったのです。僕らが出演していた六ピ最期の時にステージに上がったピットインの店長さんの告白(?)でこの事が判明して、一番びっくりしたのは僕ら出演者でした(2004年7月13日@須藤満STEPS NIGHTのステージで)。六本木ピットインの階上にはレコーディング・スタジオがあり、そこと店を繋いで記録されたのがファンの間でも未だにSTEPSの名盤と言われる“SMOKI'N IN THE PIT”。

さて、本題に入りましょう。

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ヴィブラフォンとマリンバでちょっとデュオをやってみました、という人が「でも、何だか音がまとまらなくて・・・・」とお悩みの様子。
マレットは何を使ったの?というと今日みんながよく使っているマレットのようです。原因はそれかもしれないね、と告げた。

近年のマリンバの音は硬くなり過ぎる傾向にあるのかもしれません。
好みもあると思いますが、独奏には向いても他の楽器とのブレンドには向かないものもある、というのが僕の感触です。
メリハリが利く必要のある音楽では有効でも、他の楽器とブレンドさせる必要のある音楽では浮いてしまう。これは演奏する人の趣向やセンスに大きく左右される事です。

今回後発のアルバム第二弾のレコーディングに参加してくれた“マリンバ王子”が録音前にこんな質問をメールしてきました。

「赤松さんが描くマリンバのイメージってどんな感じですか?」

それに対する僕の答えは

「大地のように大らかで温かい。
ヴァイブとは好対照だと思ってるんだよね。
言い換えれば、ヴァイブで出来ない事がマリンバだと思うんだ」(原文のまま)

僕がヴィブラフォン専業だから見る角度の違う発言は容赦してほしいのだけど、核心は十分に伝えたと思う。

近年、自分でもヴィブラフォンの音はソリッドになり過ぎたと思い少しソフトな方向へシフトしている。その切っ掛けは随分前にスタジオで超ベテランのレコーディングエンジニアの方が言った一言かもしれない。十分心地良い音に録れてると思っていたんだけどエンジニア氏曰く「いい音です。楽器のいい音がします。でも赤松さん達の世代の音は硬いほうなんですよ」。「ええ〜ッ!ホントに?」。
超ベテランエンジニアの人は百戦錬磨。内外の大御所をたくさん録ってきた経験がある。その耳の持ち主が言うのだからね。

考えてみれば他人の生音を何時間も聞き続ける事なんて無い。他人との比較基準と言うものを本人は持ち合わせていない。大音量のバンドの中でやっていると少しでもメリハリの利くマレットに手が伸びる。少なくともPAに通りが良いマレットが残って行く。それに合わせて自分の音色に対する基準もソリッドな方向へと向かう。一度ソリッドな方向へ進むとそれが基準となり、さらにソリッドな方向へ進む。

帰って昔の録音を聞き返したら確かにソリッドな方向へと踏み出しているのがわかった。これは得るものと同時に失うものもある。



今回自分でマリンバを録音する時に短い時間ながらいろいろな試みとアイデアを。
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「大地のように大らかで温かい。ヴァイブとは好対照・・・」
自分でマリンバ王子に告げた事を実践するわけだからドジは出来ません(笑)。

近年マリンバの録音で気に入らないのがリミッター処理。どの音も押さえつけて均一にされて無表情。上手く聴こえる裏技としても魅力ある音じゃない。ならばフォルテのピークを狙うんじゃなくてピアニシモを有効に使ってダイナミクスを出せば良い。
じゃフォルテ用ではないマレットを使えばいい。

使ったのは低音域用のマレット。これで中音域の上くらいまでを常用音域として演奏すればいい。先週述べたマリンバをどの音域をメインとした楽器として扱うか、と連動してる。

次に奏法にちょっと手を加える。
通常ヴィブラフォンを演奏している時は不要な“肩”から振り下ろすストロークを必要な時に用いる(ヴィブラフォンを肩から振り下ろして叩くと表情がノッペラボウでジャズには向かない)。
マリンバは手首のスナップだけで演奏しても良い音がしない。しかし演奏上の起伏やフレーズアタックを素早く出したい時にはスナップが効果的。
より深く響かせたい時は“アーム”、素早くコントラストを付ける時は“スナップ”。

ヒントはそこにあります。

続く



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