2007/7/19

熱帯のジャングルもこの人にかかると・・・Carla Bley  木曜:Jazz & Classic Library

70年代の始め頃だったと思うけど、やたらと「熱い」トーンが売りのサキソフォン奏者ガトー・バルビエリがスイスのモントルー・ジャズ・フェスティバルを沸かせていたのは。
その後、映画「ラスト・イン・パリ」の音楽を担当して一躍有名になっていったけど、トロピカルという言葉が似合うサキソフォン奏者として一番印象が強い。
70年代から80年代にかけて、インストルメンタルの世界で突出した印象を作っている一人だと思う。他に僕はチャック・マンジョーネ(フリューゲルホーン)がいる。

ジャズの王道からは少し外れるかもしれないけど、ガトー・バルビエリとチャック・マンジョーネの二人はこの時代に無くてはならない存在なのかもしれない。この時代にヒット曲と呼べるものを持っている数少ないジャズメンだからだ。

さて、なぜ突然ガトー・バルビエリが出てきたかと言うと、今夜紹介するアルバムの要所でバルビエリが活躍していて、しかも、今聞き返してみるとそれがとても味わいのあるサウンドだった事に気付いたからだ。少なくとも僕は当時バルビエリに対して持っていた印象よりも今のほうが良く聞こえてくるから実に不思議。

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『Tropic Appetites/Carla Bley』(WATT/1974年)

カーラ・ブレイは作曲家として子供の頃から好きなアーチスト。最初はヴィブラフォンのゲイリー・バートンのアルバム(邦題『サイケデリック・ワールド』)で聞いたカーラの曲が頭に残って離れなかった。なぜだかわからないけど、この人の書く曲は僕のツボにピタリとハマる。

フリー・スタイルの曲でも起承転結がわかりやすくて苦にならない。また、この人の曲を他の人が演奏したものには秀作が多い。ポール・ブレイしかり、アート・ファーマーしかり、ゲイリー・バートンしかり。このアルバムを買った頃は、まだカーラ自身が演奏する本人の曲よりも周りのミュージシャンが彼女の作品を取り上げた物のほうが多く、このアルバムが僕のカーラ歴の中で彼女自身が演奏している初めてのリーダー作になる。

作家ポール・ヘインズの詩にインスパイアーされて出来上った熱帯のジャングルをテーマとした作品で、ここで取り上げられるジャングルが東洋である事が音楽からもわかる。

ヴォーカルで参加しているジュリー・ティペッツのヴォイスは魅力的で、当時のロック・シンガーのようなストレート・ヴォイスが耳に馴染む。ヨーロッパ一円を翔る歌姫。カーリン・クローグといい、ティペッツといい、ヨーロッパのヴォーカリストは興味深い人が多い。
ベーシック・トラックをアメリカで録音し、ロンドンに住むティペッツに送ってオーバーダブ、再びアメリカに送られてきたトラックにミックスして出来上がるという凝りようだ。

メンバーは
Julie Tippetts(vo)
Gato Barbieri(ts)
Howard Johnson(voice,tubas,clarinets,sax)
David Holland(cello,bass)
Michael Mantler(tp,val-tb)
Toni Marcus(viola,violin)
Paul Motian(ds,perc)
Carla Bley(p,voice,recorders.clavinet,org,marimba,celeste,perc)

エキゾチックに流れるリズムにのせてシンプルなブラスアレンジがスリリングでゾクゾクさせてくれる。そこにディペッツ、バルビエリらの好演がジャングルの川の流れのように続く。

トロピカルであって普通にトロピカルでないカーラの世界。

最近はこの種のテーマを掲げるとミュージシャンも構えてしまって、音楽も状況設定も凝り過ぎてリスナーには面白味が感じられない作品が多いなか、これだけシンプルに、それでいてしっかりと東洋のジャングルに仕立て上げ、さらにカーラの個性がクッキリとしている辺りが凄い。

この先の音楽が無限大に感じられていた時代だからだろうか。
そんな少し羨ましいような自由なスケッチに、バルビエリのトーンは必要不可欠な存在だったんだなぁ、と30年後に改めて再認識の今日このごろ・・・・

おしまい



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