2007/11/15

カラフルな音を教えてくれた・・・M.DAVIS & G.EVANS  木曜:Jazz & Classic Library

このLibraryではコンボ(小編成のバンド)やデュオ、ソロ、の紹介が多いけど大編成のジャズバンドでももちろん好きなバンドがある。

ギル・エバンスのジャズオーケストラにはジャズで物心がついた高校の頃から惹かれていました。もちろんジャズの歴史で外せないカウント・ベイシーやデューク・エリントン、今日のビッグバンドの基礎となったサド・ジョーンズ=メル・ルイスなど、ジャズを聴くと一度は触れるビッグ・バンドの存在はあるが、コンボを聴いて育った耳に自然に響いてきたビッグバンドというとギル・エバンスとジョージ・ラッセル。

そんなギル・エバンスの作品の中で最も聴いたアルバムが
コレ
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『QUIET NIGHTS/Miles Davis』(CBS/1962〜3年録音)

あれれ?ギル・エバンスのアルバムと言っているのにマイルス・デイビスのアルバムじゃないかって?

そう。確かにマイルスのアルバムなんだけど、僕の中では一番ギル・エバンスらしさが発揮されたアルバムとして残っているんですね。

ギル・エバンスはマイルス・デイビスと何枚かの作品を残していますが、その中で一般にはあまり注目が集まっていないこの「QUIET NIGHTS」。その理由はコンセプトにまつわる印象でしょうか。二人の共作として名高い「スケッチ・オブ・スペイン」はスペインを題材としたもの、「ポギー&ベス」は御存知ガーシュインのジャズオペラ、と明確なコンセプトがありますが、このアルバムにはそういったものは見当たりません。
一部では当時流行っていたボサノヴァをマイルスにやらせようとして作られたアルバムという話しもありますが、今となっては憶測でしかありません。

さて、そんな下世話な噂は放っておいてこのアルバムが一連のマイルス&ギルの作品の中で優れている事について書きましょう。

70年代中期のマイルス・デイビスを好きな人なら「アイシャ」という曲を知っているでしょう。来日公演を納めた『アガルダ』にも入っていますが、マイルスは時々ボサノヴァを取り入れていました。スイング・ビートに比べるとパターン化されたボサノヴァのリズムは隙間がたくさんあります。そうなると、ギル・エバンスの構築的なスコアリングが細部まで聞き取れるのですね。

僕がこのアルバムで驚いたのはファゴットとハープの使い方でした。
ギル・エバンスは図書館で音楽の勉強をしたと言われます。殆ど独学で理論書を解明しスコアリングをマスターして行ったという事ですから、彼の頭の中で流れる音をアルバムから分析するのは楽しいものです。

ハープとファゴットの使い方で特徴があるのはストラヴィンスキーで(と僕は勝手に思っています)、この作品にはギルのストラヴィンスキーからの影響を強く感じるのです。
ジャズバンドの音楽はサウンドの点では縦方向にハーモニーを積み上げますが、ギルは横方向に音を繋いでいるんですね。その中でもメインのハーモニーに対してアプローチ的に絡むセクションの要としてハープとファゴットを多様しているのです。
これは「スケッチ・オブ・スペイン」や「ポギー&ベス」(この作品の一部でもストラヴィンスキーの影響がありますが)では見られなかった新しい動きです。

2曲目の“Once Upon a Summertime”や6曲目の“Corcovad”の要にファゴットがあるのに気付くでしょう。こんなにハーモニーのガイドにファゴットを使ったアレンジはジャズでは類を見ません。

3曲目の“Aos Pes Da Cruz”は6曲目と同じボサノヴァ色の濃い作品ですが、金管と木管のセクションをある時はリズムグルーヴのベースに、ある時は金管と木管を別個の扱いに、そしてその隙間をハープが結ぶという斬新さ。
変形の循環コード(|Gm7|Bbdim|F/A|Db7|BbMaj7|Bbdim|Abdim|Abdim|)が繰り返される8小節のBISでは木管とハープが代わる代わる常時Fの音を持続(アッパーペダルトーン)させるというドラマチックなエンディング。
恐らくギルが考えたポップという構図が明確に示されているのですね。
こんな不思議で心地よいサウンドは他にありません。

バークリー時代にこの辺りのサウンドをビッグバンド等の授業やプロジェクトでスコアリングする機会があったのでいろいろと試す事が出来ました。
アレンジして思ったのは、何とカラフルなサウンドだろう・・・という事。

このアルバムと共通する作品と言うと、僕はマイルスの「カインド・オブ・ブルー」を挙げたくなるのです。そのアルバムでビル・エバンス(p)が加わったトラックのスペース感がこれとまったく同じなんですね。スペースをカラフルに操る。マイルスもギルもその部分で大いに共感していたのでしょう。この素晴らしく平和な時間を楽しみましょう。

おまけのように1曲入っているヴィクター・フェルドマン(p)とのマイルス・クァルテットによる“Summer Night”も素晴らしく心地よい時間なんですね。
フェルドマンはヴィブラフォン奏者でもあるのです。

おしまい



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