2008/2/14

やはりエレピが似合う・・・・・Joe Farrell  木曜:Jazz & Classic Library

70年代前半のジャズシーンを少しでも御存知の方ならジョー・ファレルと言えばピンと来るでしょう。

そう、もはやジャズの歴史上に欠かせないアイテムとなったチック・コリアのリターン・トゥ・フォーエバーの第1作『return to forever』(ecm/1972年)と第2作『light as a feather』(ecm/1972年)で情熱的なフルートやソプラノ・サックスを聞かせてくれた、「あの」リード奏者。
これら初期のリターン・トゥ・フォーエバーから飛出した「ラ・フィエスタ」「クリスタル・サイレンス」「スペイン」「500マイルズ・ハイ」などをこれまでに一体何度セッションで演奏する機会があっただろう。
完璧にジャズのスタンダードとなった曲達だ。

その情熱的なフルート&サックスがリターン・トゥ・フォーエバーから消えフロントにギターが入った第2期の「リターン・トゥ・フォーエバー」に突入してから僕自身はあまり興味が無くなってチック・コリアは単独名義のアルバムばかり聞いていたのだけど、ある時FMの音楽番組「ジャズフラッシュ」を聴いていたら、突然“Times Lie”という曲が流れてきて「ハッ」とした。
そう、そのサウンドこそがジョー・ファレルのリーダーアルバム『MOON GERMS』(cti/1972年)だった。それは正に「あの」初代リターン・トゥー・フォーエバーの延長上にあるジャズだった。(ファレルの他はハービー・ハンコック/pスタンリー・クラーク/bジャック・ディジョネット/ds)

しかし、その記憶が覚めやらぬ内にジャズシーンは大変動が起こり、次々と新しいジャズが誕生するものだから、高校に入ったばかりの僕はいろんなジャズの冒険に出掛けている内にそのアルバムの事もジョー・ファレルの事もすっかり置き去りにしていた。

やがて東京に出て来て演奏活動も始めバークリーに行くチャンスを得て演奏の傍らに渡米の準備をしていた時の事だった。
出演していたライブハウスにあったジャズライフに「リード奏者ジョー・ファレル永眠」という小さな記事を見つけて驚いた。まだ40代という若さだ。
その時以来、CDショップに行くとファレルのパテーションはいつも覗くようになった。

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『SONIC TEXT/Joe Farrell』(cti/1980年)

前置きが長くなってしまったが、随分と空白のあった僕のジョー・ファレルの記憶を埋めてくれたこのアルバム。

前半の2曲はファレルがストレートなジャズと向き合った僕の知らない一面が楽しめた。ある意味でランディー・ブレッカー(tp)やマイケル・ブレッカー(ts)と同じ目線でストレートにジャズを捉えていたんだなぁ、と思う。

メンバーは
Joe Farrell(ts,ss,fl)
Freddie Hubbard(tp.fh)
George Cables(p,elp)
Tony Dumas(b,elb)
Peter Erskine(ds)

79年11月にLAで録音

古くはブルーノート、ファンタジー、ヴァーブと同じように70年代以降のジャズにもレーベルの音というのがあった。
CTIはドイツのECMと並んでこの時代を代表するレーベル・サウンドを持っていた。
名立たるジャズの名門レーベルが苦戦していたこの時代にこの二つのレーベルが残したジャズはしっかりとコンセプトが打ち出されていてジャズ史に残る名盤が多い。
アコースティック重視のECMに対してCTIは徹底的にアメリカンナイズされたソリッドなサウンドが特徴だった。

このアルバムも中間の2曲(3曲目The Jazz Crunch、4曲目If I Knew Where You're At)になるとリズムセクションがエレピ、エレベに持ち替えてCTIの王道的なソリッドなファンク・ジャズになる。それもそのはず、3はCTIの看板スターだったフレディー・ハバードの曲。
でもなぜかファレルの演奏がノリノリに聞こえるんですね。リターン・トゥ・フォーエバーの時もそうでしたが、この人のサックスはエレピとの相性がすこぶる良いのです。

後半になると、再び楽器はアコースティックに統一されているものの、5曲目などは「あの」初代リターン・トゥ・フォーエバーを彷佛とさせるようにエキサイティングとリリカルの間を行き来するものだから僕なんかはソソラレっぱなし。但し作曲はピアノのジョージ・ケイブルス。(余談ながらこの頃来日したジョージ・ケイブルスと新宿の京王プラザで一緒に飲んだ事がある。その時はこんなファンタスティックな曲を書くピアニストだとは思ってなかった・・・笑)

最終曲のMalibuは驚く事なかれ、この時代の後に登場する「ステップス(ステップス・アヘッド)」と共通するモーダル・ファンク・アイテム。
この要因はドラムがピーター・アースキンという事だけではなさそうだ。
ちなみに、最終曲のアースキンの演奏が珍しく落ち着かない感じがする。どうもよく聞くとキック(バス・ドラム)が途中から聞こえなくなるので、ひょっとしたらぺダルが演奏中に壊れたかな?最後のドラムソロの直前でパンチインした形跡があるのでず〜っとキック無しで演奏してたのかもしれない。何があっても演奏のモチベーションを下げないのはミュージシャンの掟とは言え、さぞや冷汗が出たでしょう。さすがです。

ともあれ、3つに区切られたファレル。
その目線に写っていたジャズがこのアルバムで閉じられてしまった事がとても残念に思えてならない。

おしまい



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