2008/2/21

ピアノトリオの冠以外でも・・・Bill Evans(p)  木曜:Jazz & Classic Library

ジャズ・ピアニスト、ビル・エバンスと言えば誰しも「Bill Evans Trio」名義の名盤の数々が思い浮かぶでしょう。

そもそもビル・エバンスが今日でも多くのミュージシャンに影響を与えているのには理由がある。
「Bill Evans Trio」が登場するまでのジャズ・ピアノトリオは三人が同じリズムの中で平行してジャズを演奏する印象が多かった。ピアノトリオそのものもメインとなるフロント(管楽器や歌)が抜けた状態の軽快な編成であったり、超絶技巧のピアニストに対してベースとドラムが追従しながら演奏する形が多かった。

よくビル・エバンスはハーモニー感覚に優れたピアニスト、という印象を持つ人がいますが(勿論それも間違いでは無い)、僕は「バンドで自由に演奏する先駆け」を作った人だと思っています。

上記のようなピアノトリオの形を「三者三様」で成立させたもの、その先駆けが「Bill Evans Trio」。共演者がピアノに対して追従するのではなく、ベースはベースで主張しながら、ドラムはドラムで主張しながら、この「ながら・・・」と言うのがその後のジャズを大きく発展させたわけです。

当時同じ方向でジャズを作っていたのがマイルス・デイビス・クインテット(M.デイビス/tpジョージ・コールマン/tsハービー・ハンコック/pロン・カーター/bトニー・ウイリアムス/ds)で、ありきたりのスタンダードソングを自由にその場でリユニオンさせていたのですね(但しウェイン・ショーター/tsが加わってからは違う路線に進む)。

この二人のリーダーに共通しているのが「並外れたハーモニー感覚の持ち主」。
ハーモニーはありきたりのコードヴォイシングでは得られないスペースを生むわけです。そのスペースでその場でベースやドラムが何をするか、共演者は毎回相手を聞き合ってアイデアを重ねるわけです。大筋はリーダーが決めていても、そこに到達するまでは毎回が冒険。それがこれらのバンドの魅力、はたまたモダンジャズが次のステップに向かって進化する動機に繋がっているわけです。
ハーモニーという表現にはコードサウンドという狭い意味だけでなく、ベースやドラムから出る空間を演出する音や様々な倍音も含み、ピアノ一つでは作れない「ハーモニー」をピアノトリオで作り上げた、それがビル・エバンスだったという事です。

さて、そんな「自由な」ビル・エバンスのトリオ以外でのお気に入りはなんでしょう。
70年代のジョージ・ラッセルとの大編成による『リビング・タイム』が僕は筆頭ですが、このアルバムにも愛着があるのです。

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『INTERPLAY/Bill Evans』(riverside/1962年)

メンバーは
Bill Evans/p
Freddie Hubbard/tp
Jim Hall/g
Percy Heath/b
Phill Joe Jones/ds

ジャズを少しでも演奏する人ならわかると思いますが、この編成、実に厄介なものなのです。
まず、ピアノがリーダーであるのにそれよりも主旋律で遥かに目立つトランペットがいる。
さらにコード楽器としての役割りを持つ楽器としてピアノとギターがいる。
ピアニストのリーダー作と考えると「どのようにリーダーを演出」するかが大問題になる編成なのですね。

初めて聞いた時にはそこに興味を持って「待ち構え」ました。
ヴィブラフォンでも同じような事が起こるからです。(Vib+sax+p+b+dsとか)

1曲目のスタンダード“You And The Night And The Music”を聞いた瞬間にこの答えが明確に示されていてビックリしました。
ヘッドアレンジによってビル・エバンスらしさをイントロやインタールードに演出し、しかもピアノソロはまるでヴィブラフォンのよう。ピアノの左手のブロックコードを廃してメロディーの中でハーモニックに演奏してるのです。
当時まだ駆け出しでスイングの演奏に悩んでいた僕は、このエバンスのソロをお手本にしてヴィブラフォンを演奏してみました。そういう意味でも大きなヒントをもらった演奏です。

続く有名曲“When You Wish Upon A Star(星に願いを)”もエバンスらしいリハーモナイズが頭からシャワーのように降り注いでスペースとパルスをどのように作れば原曲の流れを壊さないで新しい解釈を生むかを示してくれました。
リハーモナイズの楽しさを知ったトラックです。

一番好きだったのが3曲目の“I'll Never Smile Again”。
この軽快なスイングは憧れを持って聞きました。
もちろん原曲を損なわないアレンジが軽快なソロと流れを生んでいます。

今回再発されたCDにはこの“I'll Never Smile Again”の別テイクがボーナスされています。
面白いのは最初のセクションでベースがペダルでCの音(曲のKeyはF)を弾く部分でオリジナルはリズミックに演奏しているのに対して別テイクではストレートにペダルを弾いていた事です。
クレジットによればオリジナルはテイク7、別テイクはテイク6との事。
個々のソロは、実はエバンス以外はオクラになっていたテイク6のほうが良いというのも発見です。ラストコーラスで8バース(掛け合い)が崩れたのはご愛嬌(笑)。このテイクがボツになったのはこのせいでしょう。

きっとテイク6まではCペダルの部分はストレートにやっていたけど、上記の理由でそのテイクの「ボツ」が決まってから、「あそこはさっきのラストテーマみたいに最初からリズミックにやろう」と徐々に構成が変わって行ったんじゃないでしょうか。

10代の時に憧れを持って聞いた演奏を今改めて聞くと、いろんな事がわかってきてまた違う楽しさになってきました。こういうボーナストラックというのはあまり感心しなかったのですが、このアルバムに関しては「聞けてよかった」と思いましたよ。

おしまい



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