2008/3/7

曲集は活用するもの・・・  金曜:vibraphoneやmarimbaの為のジャズクリニック

毎週金曜日はVibraphoneやMarimbaをやっている人向けのお話し。第八十五回目の今日は「曲集の活用法」のお話しです。

この金曜特集はヴィブラフォン奏者に限らず多くのマリンバ奏者の人も御覧になっているので、今日はそちらに向けた内容。

昨年9月にヤマハから発売した曲集『レパートリーで学ぶジャズマリンバ&ヴィブラフォン』(amazon.co.jp他全国の書店、楽器店で発売中)は大変反響をいただいて、上記amazon.co.jpの「マリンバ」全般カテゴリーで発売以来上位ランクインと誠に嬉しい限りです。

しかし、この曲集は従来の「教則本」とは違った内容なので、時々ユーザーから「使い方」についてお尋ねもありました。

「今度演奏したいが編成が異なった場合、どのように使えば良いか」等。

この本をどのように使うかはユーザーの自由。冒頭でも「あとは貴方のアイデア次第!」と書いている通り、コードミュージックやジャズの演奏への入口として使ってくれる事を祈って書きました。
本当はコードネームだけで書きたかったのですが、それではコードネームに慣れていない人にはチンプンカンプン。そこで譜面に必要最低限の音符とコードネームを記入し、曲毎にコード演奏のガイダンスを付属し、さらに基本的に知っておくと音楽で仕事をする時に役立つベーシックなコード理論を付けています。

どう贔屓目に見ても、日本のクラシック音楽の教育は情操的には満たされるものの、論理的に成立たせる部分が未だに満たされているとは思えません。「風のように」とか「情熱的に」という抽象的な表現(イメージ)だけで音楽を語ってしまう傾向が強く、海外の演奏家に比べると和声(ハーモニーやコード)に対する感覚に応用力が欠けています。
クラシックもポップスもジャズもロックも唯一共有しているハーモニーなのに、です。

この本をまとめるにあたってその部分での応用力を付けられる本を目指しました。
付属させているのは全てその応用力を付ける為の基本的な事です。
ジャズでも、クラシックでも、ポップスでも使える事とヒントなのですね。

前置きが長くなりましたが、一つの例として冒頭のアルベニスの曲での応用法を記します。

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(クリックで拡大/以下同じ)

本ではマリンバorヴィブラフォンが主旋律を担当し、ピアノとの共演を想定してデュオ用のスコアに編曲しています。
これを、主旋律をヴィブラフォン、ピアノのパートをマリンバ一人で演奏する時にどのようにマリンバパートをまとめれば良いか、という質問です。

ピアノパートを、1台のマリンバを二人で演奏する場合はこの譜面のままでもOKですが、一人となるとアレンジが必要です。
そのアレンジに必要なガイドはスコアに記したコードネームにあります。
また、コードネームだけでは(コードトーンだけでは)歯抜けの状態ですから曲のガイダンスにコードスケールを解説しています。(この曲のガイダンスは本文p11〜p13に)
これらをガイドとしてピアノが奏でているサウンドが「何と呼ぶ和音」なのかを把握出来るとアレンジは簡単です。

譜面をそのまま演奏するだけなら世の中には1億人以上同じような演奏者がいるでしょう。その中から飛出さなければいけない状況をひしひしと感じている人、「どうにかしたい」と思うでしょ?

まず、各小節に記されたコードネームとガイダンスに記してあるコードスケールを弾いてみましょう。
その中の音であれば「その部分」の和音を崩さずにマリンバで演奏しやすい他の形のアルペジオが作れるのです。
メロディーを変える事は出来なくても、正しく和音の流れを理解していればハーモニーの「形」は変えても音楽が崩れる事はないのです。
ピアノとマリンバではまったく違う機能を持った楽器ですから「そのまま」で満足するのは自分の楽器を正しく理解していない事になります。
逆に言えば、マリンバでしか表現出来ない手法も良いですが、他の楽器で出来る事がマリンバでも出来なくてはプロになれません。

さて、一つの例として冒頭の部分の和音の大まかな流れをピックアップしてみます。

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コードネームの構成音(root,3rd,5th,7th/各b含む)だけでアルペジオを考えるのが基本ですが、それだけではこの曲の流れ(ハーモニーの)を表現出来ない場面もあります。
ピアノパート全体の音とコードスケールを整合させて、4分の3拍子の曲なので3つの音に絞ってコードの連結を想定します。
この曲の場合、ベース(コードの最低音)にAbが持続してムードを作っているので、実質ベース音を除いた2音をピックアップする事になります。

ここで選んだのはテンションも含めて「それぞれのコードが著しい跳躍を行わない」音です。
このようにベースが限定されたアルペジオを作る時のポイントは、近い位置にあるコードのキャラクター音を見つける事なのです。ベースを限定する、という事は、この部分に躍動感を作曲者が求めていないというわけで、それに沿った形が曲を守る為に維持させるのです。
また、持続音のないマリンバですから、ヴィブラフォンが奏でるメロディーの音をできるだけ除いて構成する事でハーモニー感が高まります。(一音に意味が重要)

さらに、アルペジオでは、最低音と最高音をなるべく持続(共有するテンションも含めて)させて内声の変化でハーモニーの流れを表現するとハーモニー的な効果が高まります。シンプルである事が一番大切なので「確信」を持てる音を探すところからチャレンジ(=アレンジ)が始まります。
決して「雰囲気」で音を選ばない事です。

では、ピックアップした音を使って実際にアルペジオで書いてみましょう。

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演奏する時の注意として、ベースとなるAbの音が際立つように、つまりは他の音は優しく弾くのがコツで、持続音のないマリンバでもハーモニーを感じさせる事が出来ます。
カツカツのマレットよりも深みのあるマレットが理想で、低音ほど音の減衰時間が長いという楽器の性質を利用して演奏する事です。

ちなみに、次の小節はE7/Abですから、ピックアップする音は下が「D」、上が「B」になりますね。それにベース音「Ab」が加わった3つの音。
この部分のエキゾチックなサウンドはこのようにアレンジすれば良いのです。

アルベニスが何を描いていたのか、、、わかってくると思いませんか?
僕なんかはどんな音楽でもこの時間が最高に楽しいのです。
他人が描いている事に触れられる、、、、発見の連続です。

どのようにまとめるかは「貴方次第」。
センスを生かして貴方の音楽を奏でてください。

おしまい



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