2008/6/26

波長が合うまで待て!・・・・・Jan Garbarek  木曜:Jazz & Classic Library

MySpaceのフレンドで繋がったヨーロッパのミュージシャンを聴いて(見て)いると、サウンドの端々に聞こえてくるミュージシャンがいる。そう、やはりこの人の音楽の影響は絶大なんだろう。

久し振りに引っ張り出して聴いているのは・・・

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『WAYFARER/Jan Garbarek』(ecm/1983年)

ヤン・ガルバレクがジョージ・ラッセルの元で音楽的な理念を修得してジャズ・シーンに飛出してきたのは1960年代の終わり。

当時、渾沌としていたジャズや現代音楽などのインストミュージック・シーンに沿う形で、ともすればアヴァンギャルド的な印象の強いエリアからのデビューだったけど、それは70年代に入ってドイツのECMレーベルが世界的なディストリビューションを確立させて行くのと同じ速度でガルバレクのオリジナリティーに溢れる音楽も浸透して行った。

決定的にガルバレクに注目が集まったのはピアニスト、キース・ジャレットのヨーロピアン・カルテットによるものだと言っていいでしょう。

70年代半ばからキース・ジャレットはアメリカのミュージシャンによる“アメリカン・カルテット”(デューイ・レッドマン/ts チャーリー・ヘイデン/b ポール・モチアン/ds)と、ヨーロッパのミュージシャンを集めた“ヨーロピアン・カルテット”(ヤン・ガルバレク/ts ペリエ・ダニエルソン/b ヨン・クリステンセン/ds)という異なったコンセプトを持つグループを作っていた。

日本ではその後のピアノ・トリオ(スタンダーズ)ばかりに注目が集まるけど、キース本人がやりたい音楽を暗中模索の中で具体化させたとは言いがたいので、僕はこれらのグループに本論があると思っています。ある意味でアメリカン・カルテットはその後のピアノ・トリオ(スタンダーズ)に通ずると言えるでしょう。

その“ヨーロピアン・カルテット”のサウンドカラーをキースよりもかもし出していたのがフロントをつとめるヤン・ガルバレクのサックス。アメリカンカルテットとヨーロピアン・カルテットのどちらが好みかと言うとこれが難しい。どちらも個性的なキースの音楽が聴けるからだ。

でも、あえて言えばヨーロピアン・カルテットのほうが音楽として楽しめる部分が多かった。(キースのヨーロピアン・カルテットによるアルバム『MY SONG』のタイトル・チューンはミュージシャンズ・スタンダードとしてあまりにも有名)

さて、そのキースのヨーロピアン・カルテットの顔とも言うべきヤン・ガルバレクの音楽。これがまたいいんですね。

言い方としては的確さを欠くかもしれないけど、ある種の「トランス」状態を演出する事に長けていて、気ぜわしく音楽に接していると「ちっともその良さ」に気付かない。
ところが、ひとたび精神的に自分を解き放つような時とか、リラックスした時間とかに聴くと、これがピッタリと気ぜわしい時空の回転をロックオンしてしまうんですね。

ヤン・ガルバレクの音楽は状況設定からまずは始まる。
この状況設定の時間に自分の波長が合わないと、その時はエンジョイするのを諦めます。
突然結論から入ったり、美味しいワンフレーズでリスナーをデコレートするような「お節介」さはまったくありません。

しかし、クラシックを聴く時のような仰々しさは不要で、そこまで「重い」音楽ではないのですね。やはりそこがジャズである証しです。状況設定がいくら上手でもジャズになっていないものは聴くと妙な疲ればかり残るから不思議です。中途半端な音楽というのはそういう疲れを伴う音楽の事を指すのでしょうね。

ひとたびヤン・ガルバレクの発する波長に一致してしまえば、何のストレスもなく自分の中で流れて行くサウンドと演奏、これがガルバレクの音楽が持つ素顔ではないかと思うのですね。

このアルバムも最初は自分の波長が合わないと途中で席を外したくなる面があります。明らかにさっきまでジョギングしてたような人には向かない状況設定から始まるんです(笑)。

のんびりとコーヒーなどを入れながら、リラックスしつつ、そのガルバレク達が演ずる状況設定を見るでもなく聴くでもなく、それでいて部屋の中の空気に余計な動揺を起こさず、第三者的に静観しながら「少しずつ耳を傾けて行く」と・・・・・・

そこには、この世の楽園のような音世界が、これまたとても小さな扉を開けて手招きしている事に気付きます。小さな入口ですから気ぜわしく「居酒屋タクシー」がどーのこーのとか騒いでいると見過ごしてしまうのですね。

このアルバムでは2曲目のタイトル・チューン“Wayfarer”の様々に展開するシーンの演出と突然熱く燃え上がるコントラストが心地よく、3曲目のまるで美の女神の憂鬱を映すようにマーベラスな“Gentle”がイチ押し。間違いなくヤンのトランス状態に浸れます。

アルバムの参加メンバーもECMレーベルの一時代を築き上げた重鎮ばかり。

Jan Garbarek(ts,ss)
Bill Frisell(g)
Eberhard Weber(b)
Michael DiPasqua(ds)

1980年代という時代の音。そう、もうそれは過ぎ去った時間のお話し。その時代の中でヤン達に熱中した僕らのようなミュージシャンもいれば、まったく興味を持たなかったミュージシャンもいる。そうだからいい。

現在のヨーロッパのミュージシャンに絶大な影響を与えたガルバレクの音楽。今の耳で聴くとこれはタイムマシーンかもしれません。

僕らはもう決して振り返らない時代の音だけど、そこにこのような素晴らしい音があった事を知っておく必要があるでしょう。

さあ、これから僕らに何が出来るか、これを聴いてますます楽しみになってきたところです。

世界の今を観ながら聴こう!
赤松敏弘MySpace
チェキラ

おしまい



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