2008/7/3

前も後ろも・・・・Gil Evans(arr)  木曜:Jazz & Classic Library

どちらかと言えば典型的なコンボ(小編成)型人間。
それでも強く影響されているジャズ・オーケストラの一つが

コレ

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『PORGY AND BESS/Miles Davis』(cbs/1958年)

ヲイヲイ、こりゃマイルスのアルバムじゃんかよぅ、前にもこんな事あったゼ、ってツッコミありがとうございます。
確かにリーダーはマイルス・デイビス氏ですが、アルバムのカラーを決定しているのが作編曲家のギル・エバンス。ジョージ・ラッセルと並んで僕が惹かれ続けたスコアラーだ。

このアルバム、タイトルの通り、作曲家ジョージ・ガーシュインのオペラ『ポギー&ベス』の音楽をギルとマイルスが発展させたもの。
原曲にはないインプロの部分でマイルスのトランペットが冴える。

でも、オリジナルのオーケストラ版と聴き比べると、その殆どのパートをギル・エバンスは「創作」している事がわかる。原形を残すのはメロディーとムードだけと言ってもいいくらい。これがまた凄い。

僕も新作(『STREAM OF LIFE』08年1月発売)でガーシュインを2曲取り上げてみたのですが(同じ「ポギー&ベス」の中から1曲はMy Man's Gone Now、1曲はヴァイブ・ソロでI Loves You, Porgy)、辿ってみるとその動機はこのマイルスとギルのアルバムを初めて聴いた中学〜高校の頃になります。

高校の時、毎週オーケストラの授業では打楽器が担当だったのでオーケストラを後ろから見渡す環境にいました。上手い下手は別として、その位置からオーケストラを毎回聴くというのは新鮮な体験で、おのずとレコードを聴いている耳も正面からの音(当たり前ですが)の他にちょっと後ろからの音の想像も付くようになったのですね。

あまり大編成に興味の沸かなかった人間でも聞こえて来る位置によってサウンドが違うのは面白かったわけです。それで例えばストラヴィンスキーとかマーラーとかを正面じゃない位置の耳で楽しむという事をその頃に覚えたんですね。

その耳で当時このアルバムを聴くと、最初は真正面のマイルスの音に覆われていた内声の動きなどというハーモニーに関連したパートがよく聞こえるように。
すると、クラシック版のオーケストラと聴き比べてみると、このギル・エバンスという人が何にこだわってサウンドを作っていたのかも手に取るようにわかってきたのですね。

ギル・エバンスは図書館でアレンジの勉強をしたと伝わります。音楽の理論書を片っ端から読んで独自のサウンドを生み出したのです。
なのである意味、彼のスコアリングは数学的。ちょっと強引な部分は全て数式のような割切りなんですが、これが他のジャズ・スコアラーとは一線を画していました。

なので大きな方程式と小さな方程式が同時に進行するスリルがあります。
その隙間を、これがまたマイルスのトランペットによる至高のフレージングで繋いでいるのですから、あたかも計算通りに仕上げたような出来。

もちろんその計算はマイルスの頭の中にあったもので、ギルはそれを「何も言わなくても」形に出来る男だったわけです。このコンビの作品の魅力はそこにあります。

それが「相性」という計算では出来ないものだったから音楽になっているんですね。

一部、アレレ?これはストラヴィンスキーそのもののサウンドじゃないか、というギルの思い入れ(敬愛したストラヴィンスキーに対する)まで聞こえてくるこの作品は、原曲があるので聴き比べによって、今度はギルが図書館で学んだように僕らもサウンドについて学ぶ事が出来るのです。

音楽は聴いて楽しむもの。
でも、音楽を発する為には聴いてどんどん学ぶもの。

そんな事を発見した思い出のアルバムです。

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赤松敏弘MySpace
チェキラ

おしまい



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