2008/7/31

“AOS PES DA CRUZ”の聴き比べ・・・  木曜:Jazz & Classic Library

今夜は外を歩いているとなぜか秋を感じてしまいました
これから夏本番というのに、確実に季節は秋に向かっているのですね。
それともあのジメジメした梅雨からやっと解放されて、忘れかけていた清々しさがこれなのでしょうか。

ちょっと早いですが、秋と言えばBOSSA NOVA。
夏の夜から秋にかけて僕のモードはボサノヴァに切り替わります。

そんな好きな季節の兆候を歓迎して、今夜は珍しく“夏の夜の聞き比べ”など。

“AOS PES DA CRUZ”という曲が先週末くらいから頭の中で何度も再生されているんですね。ボサノヴァのナンバーとして有名な曲ですが、“WAVE”や“CORCOVADO”などのポピュラー全集に載るような大ヒット曲ではありません。少しボサノヴァに興味がある人にとっての有名曲。

“AOS PES DA CRUZ”(アオス・ペス・ダ・クルス)はどんな意味の曲名なんだろう?とちょっと調べてみたら、“十字架のもとで”という邦題がありました。
ボサノヴァの曲はポルトガル語なので僕にはさっぱりわかりません。
でもこれまでで一番長い時間聴いている音楽かもしれません。
だから歌詞を聴いて楽しんでいるとは到底思えないのですが、なぜか相性の合う音楽なのですね。

訳詞があったので見てみると、、んまぁ、この音楽に“つきものの”恋愛沙汰です(笑)。
ある意味で女々しい音楽なのかもしれませんが、ここまでベタな歌詞だと、かえって哲学的かもしれません。だって殆どの歌詞には“おネィさん”しか出てきません(爆)。
もっとも訳詞ですから、、、、いや、訳して何とかしてもこれが限界だったりして(笑)
要するにボサノヴァは軟派で肯定的な音楽、いや、ラブソング。後年のBPMとしての発展では哲学的でもあるんですが、源流には「ありのまま」「本能のまま」があります。

“AOS PES DA CRUZ”を演奏している手持ちのアルバムで一番古いのが、やはりボサノヴァを作った神様のこのアルバム。

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『THE LEGENDARY JOAO GILBERTO』(EMI/1995年)

発売は10年ほど前ですが収録されているのはボサノヴァがこの世に躍り出た1958年から61年の間に記録された音源が集められています。
大ヒット曲のオリジナル録音からひっそりと録音された(当時はレコードなのでB面が該当)名曲まで、実に38曲も録音されているお宝。ボサノヴァが知りたければ一家に1枚の必需品。

“AOS PES DA CRUZ”(1959年録音)はこのアルバムの中でも比較的地味な曲の部類に入ります。ジョアン・ジルベルト27歳の若き歌声。
「歌は祈るように歌わなければならない」という彼の言葉のとおり、無駄に大声を張り上げる事なく、淡々と、それでいて正確に難しい音程を苦もなく軽やかに。
ボサノヴァ唱法がすでに完成している初々しい“AOS PES DA CRUZ”。

ちょっとこの神様の“AOS PES DA CRUZ”を聞き比べてみましょう。

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『AO VIVO/JOAO GILBERTO』(epic/1994年)

ジョアン63歳の時のライブアルバム。(1931年6月10日ブラジル、バイーア州ジュアゼイロ生まれという説が有力)
いきなりブリッジ(サビ)の部分から歌い始める“AOS PES DA CRUZ”。
オリジナル“AOS PES DA CRUZ”から35年後の姿。
確かに声もキーも下がったけど、「祈るように歌わなければならない」という彼のポリシーは少しも変わらない。
ボサノヴァ唱法を作っただけでなく、今日でもボサノヴァといえばみんながギターで奏でるあのシンコペイトしたリズムも、実はサンバで使われるタンブリンの奏法をギターに応用してジョアンが作った。
円熟の歌と共にギターもここでは情熱的。

さらに“AOS PES DA CRUZ”となると、ジョアンが続く。

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『JOAO GILBERTO in Tokyo』(universal/2004年)

突然やって来て僕らを驚かせた2003年9月の“初”来日のライブ盤。
もちろん行きました。神様が来るなんて予期してませんでしたから。
会場にどれだけ知り合いのミュージシャンがいた事か・・・・そんなアーチスト公演は他にありません。
広い東京国際フォーラムを埋め尽くした聴衆が1時間遅れで到着(これは毎度の事で文句を言うような奴は一人もいない)した神様を熱烈に歓迎してから5年の歳月が流れた。

このテイクでは「祈るように」にさらに磨きがかかっているように聞えます。
ジョアン72歳。
この人ほど年齢なんてどうでもいいと思わせてくれる人はいません。
歌手の多くは歳と共に歌う歌が変わって行きますが、ジョアンはまったく変わりません。
歌は一生の変化が一番現れる“声”と共にあるわけで、若いときだからとか歳をとったからとかはただの言い訳にしか過ぎないようです。

“AOS PES DA CRUZ”はアルバムで最終曲になる事が多い。
やはり何かこの曲に対しては本人も思い入れがあるのだろうか。

ある日本の歌手の人が「日本語の歌詞であるがゆえに世界進出できなかった」と言う話しを聞いた事がありますが、それは間違い。
皆目わからないポルトガル語を歌う神様にどれだけの人間が惹かれている事か。
歌は歌であると共に音楽として聴かれているわけですね。
音楽が良ければ世界中で受け入れられるはずです。


さて、ジョアンばかりでは聞き比べとはいえませんね。

もうひとつはコチラを・・・

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『QUIET NIGHTS/MILES DAVIS』(cbs/1962年)

マイルス・デイビス(tp)とギル・エバンス(arr)の共演の中でも一番地味な評価のこのアルバム。制作側がボサノヴァ・ブームに乗ったアルバムを作らせたいと持ちかけたという逸話も聞きますが、その思惑とは裏腹にマイルスとギルの個性がこれほど光るアルバムも珍しい。
ハープまで使ったジャズ・オーケストラの作品は滅多にありません。
僕はコレ、愛聴盤です。

“AOS PES DA CRUZ”は3曲目に収録。
その前の“ONCE UPON A SUMMERTIME”(2曲め)があまりにも感動的に美しい作品に仕上がっているので、次にくる曲は難しいと思うのだけど、“AOS PES DA CRUZ”が何とも自然に入ってきます。

メロディーにはオリジナルでジョアンが口笛を吹いていた部分も現れるので『THE LEGENDARY JOAO GILBERTO』に収録された1959年のジョアンの演奏を元にギルがアレンジしているのでしょう。
聞き比べの最後に相応しい“AOS PES DA CRUZ”です。

世界のミュージシャンを聞き比べ
赤松敏弘MySpace
“AOS PES DA CRUZ”で検索するといろんな演奏が聴けるゾ!

おしまい



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