2010/6/24

ジョン・コルトレーンも人の子・・・・  木曜:Jazz & Classic Library


今日はムッチャ早いブログ更新(いや、夜型の僕にしては、ですよ)。
まだ午前1時未満。
凄いですねー、早いですねー。

この後、ちょっとピアノを弾こうと思っているのですね。

その前に、襟を正して聴いたのが・・・

クリックすると元のサイズで表示します
『GIANT STEPS/John Coltrane』(atlantic/1959年)

ジャズの歴史の中に燦然と輝くアルバムとして誰しも認めるでしょう。
ジャズが好きなら。

このアルバムに対する評価というか反応はジャズファンが予想するものと一般の音楽ファンとの間では大きな違いがあります。

「ジャイアント・ステップス」と聞いただけで嫌悪感を抱いてその場から立ち去る人。わかります。
「ジャイアント・ステップス」と聞いただけで難しそうな顔をしてわかったフリをしながら聴く人。わかります。
「ジャイアント・ステップス」と聞いただけで目を輝かせて一音も逃すまいと聴き耳を立てる人。わかります。

このアルバムの反応はホント様々で、それは今の若い世代でも昔とちっとも変わりません。
ただ、少し違うのは、もうこれが「歴史」の仲間入りをしているという点で、「今の音だ」というリアリティーに関しては大きな違いがあるのは否めません。

先日ツイッターで昼間にこのアルバムを聴いてみたら案外しっくりと聴けた、とつぶやきました。
何人かからダイレクトメッセージを頂き、同感と。

コルトレーンの音楽は、ひょっとすると耳が成長してから聴くと面白くなるタイプの音楽なのかもしれない。

僕がジャズを聴き始めた小学五年の頃に参考書としていたスイング・ジャーナルを見るとやたらと「ポスト・コルトレーン」という言葉が氾濫していました。
1967年にコルトレーンが亡くなってまだそんなに時間だ経っていなかった為かもしれませんが、まだジャズの“ジャ”くらいしかわからない小学生ごときでも何かコルトレーンという人はとんでもない存在のようなレッテルを活字から植えつけられていたわけです。

そのまんまの形でこの『GIANT STEPS』に触れた時は、正直一刻も早くその場から立ち去りたい気分に駆られました。なにがなんだかわからない。
耳がコルトレーンの目指すタイムラインに着いて行けなかったのです。

中学生になって同級生からコルトレーンのアルバムを借りる頃には何となく理解できたのですんなりと受け入れる事が出来ました。
でも、それはコルトレーンのヨーロッパでのライブの海賊版(なぜかその頃“70年頃”は海賊版が流行ってました)でコルトレーンよりもエリック・ドルフィーの演奏に耳が行った感じで、本来のインパルスから出ていた『ライヴ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード』などはなぜかあまり楽しめなかった。

もっともコルトレーンのアルバムで聴いた『Ballads』と『John Coltrane & Johnny Hartman』(双方ともインパルスから発売)。
当時ジャズファンの間ではまことしやかに囁かれた「マウスピースの調子が悪く早いフレーズが吹けないからバラード集にした」などというゴシップねたとは関係なくプロデューサーの提言でより幅広いファン層にコルトレーンの音楽を聴いてもらう為の策略。
当時のジャズファンの気質を考慮すると、とてもコマーシャリズム(commercialism)をコルトレーンが意識しながらレコードを作っている、なんて言えなかったのだろう。
それはミュージシャンとして立派な事なのだ。

だからこの二枚は不思議と何の抵抗もなく受け入れられていたのに、それ以外のコルトレーンは受け入れるのに時間が掛かった。

常に挑戦、また挑戦の応酬。

コルトレーンは練習が大好きだった話は有名。
だから録音までに自分の曲はありとあらゆる角度から攻め抜いて“針の穴を通す”ような演奏を目指している。

その中でもこのアルバム『GIANT STEPS』は群を抜いてコルトレーンの強い姿勢が浮かび上がっていて、それに気付いた途端に僕はコルトレーンを好きになった。
明らかにココで共演している他のミュージシャンとは違うタイムライン上に一人孤独に立つコルトレーン。
それがとても愛おしい。

唯一、メンバーとの接点を見出せそうな“NAIMA”。
まったく他のメンバーと違うタイムラインに終わった“GIANT STEPS”。
僕はそんなコルトレーンの心情がわかる気がする。

なぜそんな事をこのアルバムを聴きながら思うのかと言えば、例えばモダンなベースペダルがコンテンポラリーなサウンドを生む“SPIRAL”。確かに共演しているトミー・フラナガン(p)もポール・チェンバース(b)も神様のように素晴らしいミュージシャン。しかしアグレッシヴさにスリルを求めるコルトレーンのアプローチに比べるとずっと平坦なソロに感じてしまう。

そんな中唯一コルトレーンが自由奔放に対向した演奏を繰り広げる“Countdown”はドラムのアート・テイラーとのバトルが殆どで後はテーマのみ参加というスタイル。

さて、今ではジャズのアルバムは復刻版が主体で新しいアルバムよりも月間に登場する数が多い。
これはもしも音楽を文化として捉えるならば消極的もいいところなのだけど、一つの歴史が形成される過程では悪い事ではない。
先の『Ballads』にまつわる“デマ”などを払拭するように、復刻音源やYouTube動画のような事実が残されるのは悪い事ではない。

と、言うのも、僕が買ったCDにはボーナストラックが8つも付いていて、本来7曲入りだったLPとはもう別物として聴く楽しみがある。

クリックすると元のサイズで表示します

例えばあの美しいバラード“Naima”。
アルバムとして収録された本テイクの他に2テイクが記録されている。
しかも本テイクではピアノがウィントン・ケリーだったのに対して今回付け足されたテイクではシダー・ウォルトンがピアノを弾き、さらなるオルタネイト・テイクも同じメンバーによるが、本テイクにはあるピアノ・ソロがこの二つのテイクには無い。当然ながら収録時間も短い。さらに神様ポール・チャンバースがエンディングに入り損ねていたりする。

なにもゴシップを探すのではなく、そこでコルトレーンがどういう配分でこの曲を発表したかったのかを窺い知る事ができる。

タイトル曲の“Giant Steps”でさえ本テイクの他に同じメンバーで一つ、さらにピアノがシダー・ウォルトンのテイクが一つ。

レコーディング・デイトを見るとこの曲はシダー・ウォルトンを加えて録音したのが実は最初で、どうもそれは気に入らなかったらしく、約一ヶ月後にトミー・フラナガンを入れて録音をやり直している。
こんな事はオリジナル盤だけではわかるはずもなかった事実だ。

シダー・ウォルトンはこの曲に関して全面降伏したようでバックに徹している。
トミー・フラナガンもオルタネイト・テイクではソロを殆ど放棄と言ってもよいようなコードだけを鳴らしていてすぐにコルトレーンが助け舟を出すが、本テイクでは果敢にソロにチャレンジしている。(もちろん練習を積み重ねて来たコルトレーンのレベルに達するはずはないのだけれど・・)

さて、プロデューサーのボブ・シールはこのレコーディング・セッションをどのように捉えたのだろう。

コルトレーンは自分のソロだけでも曲は成立する、と思っていたのかもしれない。
だからどの曲も没になったテイクはコルトレーンの独り舞台だ。

では、それはコルトレーンが暴走した結果なのか?

いや、それは違うと思う。
ちゃんとサイドメンがソロを取りやすい曲やシーンを準備しているもの。

“MR.P.C.”は正に敬愛するベーシスト、ポール・チェンバースに用意した曲だし、ベースのペダルがモダンな“Spiral”も見方を変えればペダル・サウンドを用意する事で容易く普段のトミー・フラナガンとは違うサウンドになるように作られている。

そういった面を客観的に捉えたボブ・シールの本テイクのセレクトは見事なものだったと思う。

この演出をシールが編み出したのか、コルトレーンが編み出したのかは定かではないが、それぞれの良さが生きるテイクを挟みながら、コルトレーンの描くタイムラインを「売りやすく」演出しているところが聴きどころだと思う。

コルトレーンも人の子、一人ではアルバムは成立しないのだ。

やがてコルトレーンは自分のお気に入りメンバーを集めてエネルギッシュでスピリチュアルな世界を探求して行く。
冒頭に書いた、タイムラインに着いて行けなかった世界がそこには待ち構えていたわけだけど、このアルバムから時間を置きながら辿って行くと、ひょっとするとそんなコルトレーンの世界に嫌悪感を持っていた人も、いつしか彼のあくなき探求の旅に自然と溶け込めるかもしれない。
音楽は聴き手次第。
演奏者は目の前に見えた山を登りやすく音で説明するだけだ。


世界のヴィブラフォン奏者と素晴らしい音楽仲間へ直結!
■赤松敏弘MySpace

そして、コチラはオフィシャルサイト
■赤松敏弘Vibraphone Connection

掲示板に替わって登場、オフィシャルな(?)つぶやきTwitter
■赤松敏弘 Vibstation's Twitter


auの方はコチラの赤松音源で
≪■着JAZZ!■取り放題≫
 カテゴリ(メニューリスト)>着うた>クラシック・ジャズ
 クリックすると元のサイズで表示します
≪着JAZZフル≫
 カテゴリ(メニューリスト)>着うたフル・ビデオクリップ>クラシック・ジャズ
 クリックすると元のサイズで表示します
タグ: Jazz ジャズ CD



teacup.ブログ “AutoPage”
AutoPage最新お知らせ