2011/2/10

“旬”が最高なのは食べ物だけではないよ・・・ロニー・リストン・スミス  木曜:Jazz & Classic Library


この週末の天候は大荒れのようです。
連休でお出掛の方は気を付けて。
って、明日の夜のライブ、雪だったら大変だなぁ。。

ロニー・リストン・スミスというキーボード奏者の名前を御存知の方はなかなかジャズでも広範囲の見識をお持ちかと。

初めて彼の名前を見たのは1970年代初頭のマイルス・デイビス(tp)のアルバムでした。
賛否両論沸騰のマイルスのアルバム『ON THE CORNER』(1972年)は世間一般の見識の遥か先を行ったアルバムで、このアルバムの評価が正当に得られたのはずっと後のヒップホップが市民権を得た頃になって、というのだからとんでもなく革新的なジャズだったわけです。

さて、そのリリース直後の来日公演を高校生になったばかりの僕は広島の郵便貯金ホールに観に行きました。隣りに座った客の話しでは「先日のサンタナよりも音がデカイ!」と。
有名な『アガルタ』『パンゲア』公演の一つ前の来日のお話しです。

その時のチラシには来日メンバーの中にロニー・リストン・スミスの名前もありました。
しかし、来日したのはマイルス(tp)、デイブ・リーブマン(sax,fl)、レジー・ルーカス(g)、ピート・コージ(g,ef)、マイケル・ヘンダーソン(b)、アル・フォスター(ds)、ムトューメ(perc)という布陣。
実は『オン・ザ・コーナー(邦題は“ジ”ではありません)』やそれに続く『IN CONCERT』を聞いて密かに期待していたのが所々で活躍するオルガンのサウンド。
主に一つのベースラインに対してのライン・クリシェなんですが、一度聞くとそのラインの選び方にちょっと興味を惹かれて、どんな仕組みで演奏しているのかとても気になっていたのです。

残念ながらそのオルガンのぬしでもあったロニー・リストン・スミスは来ませんでしたが、その代理と言ってはなんですが(笑)、マイルス自身がステージ中央に据えられたヤマハ・コンボオルガンを弾きバンドに様々なサインを送っていたのは印象的でした。

ロニー・リストン・スミスの事になると、どうしてもこの時期のマイルス・デイビス・バンドの事を思い出してしまいます。

さて、そんな「気になる」ロニー・リストン・スミスのアルバムが日本で発売になったのは、マイルス・デイビスが再び来日して『アガルタ』『パンゲア』を残した時期と重なっていました。

僕が当時最初に買ったのが75年の『Visions Of A New World』(bmg)でした。
ちょうど彼のBMG時代の終盤の作品だったわけです。
その後少し遡って一つ前のアルバム『Expansions』(bmg)を買って僕のロニー・リストン・スミスのリアルタイム・コレクションは途絶えていたのですが・・・

少し前にロニー・リストン・スミスのBMG時代のコンビレーション・アルバムがリリースされて迷う事なく購入。
それから少し経ったと思ったら、今度はボックスと別レーベル時代の2 in one アルバムが発売されているのです。

ヘエー? 最近そんなに注目されてたの? うそー?

そんな気持ちでボックスとツーインワンを購入したわけです。

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『LONNIE LISTON SMITH/5 CD』(sony/2009年)

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『LONNIE LISTON SMITH/2 CD』(sony/2009年)

5 CD のほうは1974年から76年にBMG(フライング・ダッチマン)からリリースされた5つのアルバムのボックス。オリジナル・カバーで復活している。版権をソニーが買い取ってリリースさせている。
2 CD のほうはソニーに移籍してからの2枚のアルバムをツーインワンとしたものだ。

面白いのは年代を追うごとに悪い意味でポップになっている事だ。
特にソニー原盤のツーインワンのほうは完全にコンセプトがバラバラでロニー・リストン・スミスの長年のファンでもある僕でさえ悲しくなるようなテイクが含まれている(必死で踏み留まっている優良テイクも含まれるので価値はある)。恐らく制作サイドとの認識にズレが生じたか、アイデアが枯渇したか、のどちらかだ。

やはりこの人を聞くならBMG盤をお薦めする。

何がこの人の魅力なのか?

一口に言えば、ジャズファンならわかると思うけど、ファラオ・サンダース達がやっていたスピリチュアル・ミュージックの近代版で、その後のヒップホップやアシッド・ジャズが示す「ジャズのカッコいい部分」を多分に含んだサウンド・テイスト。

一言にしちゃ長いな(笑)。

良くも悪くも1970年代後半のジャズ周辺のサウンドを放出してくれる。
だから好きな人には“たまらない”音楽だ。

この、好きな人には“たまらない”という部分があるのをジャズだと提言しておこう。
これが無く、誰でも好きになれるものはジャズではない、という極論だけど、それくらい言い切ったほうがいい。

ソニー原盤の二枚には、どうもその点でパンチが無いのが不満。
まるでマイケル・フランクスのカラオケのようなサウンドになっていて「それは違うだろーよ」、と言いたくなる(僕はマイケル・フランクスのファンでもある)。
本人が違う方向に目覚めたか、時流に乗ったか、だ。

その点では時流とは無関係に「自分がやりたい事」を具現化していたBMGのボックス5枚はいい。
ただし、最後の一枚(『Reflections Of A Golden Dream』1976年)はいわゆるフュージョン的要素が濃くなっているので、それに続くソニー原盤二枚とかなり近いかもしれない。

さて、5枚について一気に話すのは無理。
一部サンプルの聞ける以下のリンクページを参照にされると良いでしょう。

Lonnie Liston Smith And The Cosmic Echoes Discography→http://www.discogs.com/artist/Lonnie+Liston+Smith+and+the+Cosmic+Echoes

全体を総括する形でロニー・リストン・スミスの音楽に触れてみると、先に挙げたスピリチュアル・ミュージックとかなり密接な関係が。
ある意味、そのスピリチュアルな形を彼の中から抽出したと思われるのが74年の作品『Cosmic Funk』。まだ方向が一つに定まっていないものの、当時のマイルス・デイビスのバンドの中枢として彼が抜擢されていた理由がこのアルバムでは色濃く表れている。

前後するがBMGのデビュー作となった73年の『Astral Traveling』は逆にスピリチュアルな原点が披露されているアルバムで、時にファラオ・サンダースの世界も垣間見えるのが面白い。マイルス・デイビスはファラオ・サンダースの事はあまり好意的に論じていないが、根底には共有するものを持っていたのだろう。洗練されたスピリチュアルな世界を既にこの時点でスミスは表現している。

先にBMG最後となるアルバム『Reflections Of A Golden Dream』(1976年)について。
あらゆる意味で1976年という時代の音が凝縮されているアルバム。ポップな方向ももちろんある。でも、やはりこの人の持ち味はスピリチュアルなスペース・ミュージックなんだと感じさせてくれる。
ドナルド・バードのヒットアルバム『ブラック・バード』(blue note)などに近いサウンドもあり、これもなんかロニー・リストン・スミスのファンとしては「違うだろーよ」と思ってしまうのが残念。

さて、こうやってボックスまで買って、少なくとも現時点で聴けるロニー・リストン・スミスからベストを挙げて、といわれるとやはりこの二つのアルバムに行き着く。

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『Expansions』(bmg/1975年)

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『Visions Of A New World』(bmg/1975年)

“旬”が最高なのは食べ物だけではない。

このアルバムがリリースされた年、マイルス・デイビスは新年明けに再び来日し全国各地を巡り、宿泊と会場が同一という最高の環境だった大阪フェスティバル・ホールで70年代バンドの集大成となる『アガルタ』と『パンゲア』を残した。

その少し前にマイルス・デイビスのバンドから巣立ったひとりのキーボーディストが二枚の前哨戦のようなアルバムの後に決定打とも言えるアルバムを放った。
それがこの二枚。

スピリチュアルという表現は誤解を呼ぶかもしれないので補足しておくと、彼はコード感がとても洗練されたキーボーディストで、一歩踏み外すとただのジャズファンクになってしまいそうなビートを「かなり制御」する事で時空を超えて聴けるサウンドに仕上げている。

スピリチュアルというと、何かが過度に詰まった印象を持つかもしれないが、ことこの二枚のアルバムに関してはとても洗練されてバランスが取れていて「聴く=心地よさ」を伴える。

だから好きな人には“たまらない”音楽であり、初めて聴く人には“古臭く感じない”音楽なのだ。

どちらかと言えば、僕はより洗練度の高い『Visions Of A New World』をイチオシ!
一曲目は中途半端にビートミュージックを狙った感じでちょっとコケますが(笑)、二曲目“Love Beams”や“Sunset”“Summer Nights”のメロウな感じなんて今の音楽が狙っても出来ない美学があるし、三曲目の“Colors Of The Rainbow”や六曲目“Visions Of A New World(p-1)”のスペース感なんてファラオ・サンダースの洗練版、僕が一番好きな古臭いギリギリのアンニュイなベースラインが大好きな四曲目“Devika”とか、秀作だらけ。

もっとも、ボックスで買えば2500円前後でここに書いている「あーだ、こーだ」の全部を聴けるのだからお得と言えばお得ですね。



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