2011/2/18

コードネームではなくサウンドとしてのディミニッシュ表記について・・・  金曜:vibraphoneやmarimbaの為のジャズクリニック


毎週金曜日はVibraphoneやMarimbaをやっている人向けのお話し。
金曜第二百四回目の今日は、前回の『アプローチ・ノートとターゲット・ノートで飾り付け・・・』の続きです。

ココまでの金曜クリニックをご覧になりたい人は左のカテゴリー(またはこの記事のタイトル右側にある)「金曜:vibraphoneやmarimbaの為のジャズクリニック」をクリック。この記事に続いて過去の記事全てを見る事が出来ます。チェキラ!

さっき帰りの車の中で大音量で聴いてみました。

コレ。

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『Astral Traveling/Lonnie Liston Smith』(sony/1973年)

2011年の、週末の夜のラッシュでノロノロ運転の首都高速。
そんな中で、このスピリチュアルなロニー・リストン・スミスのデビュー作を大音量で鳴らしてみたかったのです。

ロニー・リストン・スミスの話題は先週木曜ブログ『“旬”が最高なのは食べ物だけではないよ・・・ロニー・リストン・スミス』をチェキラ!→http://sun.ap.teacup.com/applet/vibstation/20110210/archive

いやはや、今までに味わった事のない興奮がありました。
サウンドは遥かアフリカ大陸を展望するようなスピリチュアルな世界。
アフリカを音楽で感じるのはなかなか珍しい。
それが、この、どうしようもない国の週末で大混乱の首都高速の渋滞を、あっと言う間に吹き飛ばしてくれたんですね。渋滞すればするほど「どうぞ、どうぞ」なーんて感じで気が大きく持てて(笑)。
音楽は聴くシチュエーションを変えると、どんどん新鮮な興奮が湧いてくるからいい。

さて、そんな興奮覚めやらぬ内の更新(どんな興奮や!/笑)




音楽は聴く楽しみの他に、想像する楽しみもあります。

音楽を聴きながらいろんな事を空想するのもその一つだし、演奏する曲を生み出すのも、奏でる前の大きな楽しみ。

ここであれこれジャズの成り立ちについて説明しているのも、想像へのサポート。

ヴィブラフォンのレッスン生がこんな質問をしてきました。

「コードには複数の解釈があるって本当ですか?」

それは、ある意味正しく、ある意味では曖昧な答弁。

僕は常々「曲に選ばれたコードにはそれぞれ一つのコードスケールしか存在しない」とレッスン生に告げている。
だから「いろいろ予想される中で、たった一つの正解を見出さずに演奏すると誤魔化しになるよ」と。

実はこの世界に入った最初の頃、コードの解釈でいろいろと論議をやった時期がある。
みんな音楽には真摯だったから演奏の後で酒を飲みながらでもこんな話しを明け方までやったものだ。
そこで、いろんな人がいろんな事を言う。
もちろんいろんな個性があってしかり。
しかし、自分は一つの答えを持って真摯に音楽に向き合わなければだめだ。いろんな意見に左右されると迷ってばかりになる。
そのいろんな意見も、若ければ若いほどよく聞けばいろんな矛盾をはらんでいるもので、自分が信ずるものは何事も常にちゃんとクリアーにしておかなければならない。
まぁ、ミュージシャンなんて私生活とか社会的な信用はほとんど無いから(笑)、せめてそのくらいは芯を磨けって事だ。そうしなきゃ、自分が世の中で成立しなくなる。

ここでの解説を読めばわかると思うのだけど、コードスケールの判定には優先順位がある。
コードトーン、メロディー、調号や調性・・・これらの順に可能性を絞って行く。
だから、オルタード・ドミナントやオグメント(オギュメント)などは順位が低い。
これらのコードは「サウンド」の一部を切り取っているだけの場合が多いからだ。
例えばオルタード・ドミナントスケールと安易に決めつけているコードでベーシストが5th(P5/完全五度)を弾いていたら、それはオルタード・スケールではなくなる。
単純だけど、疑問に思ったら徹底的に解明しないと“おかしな”事になる。

それと同じように、コードの勉強を少しすると「アウト」という言葉を得意になって発する人がいる。
「アウト」をするなら「インサイド」で解決出来る事を全てマスターしなければどこからが「アウトサイド」でどこまでが「インサイド」だか見分けがつかなくなってしまう。
中途半端に「アウト」と言っている人の演奏を聞くと、どの曲も同じフレーズの繰り返しで終わっている場合がある。それでは「アウト」しているのではなく、単にリハモナイズしているだけだ。
使い様によっては素晴らしい発想へと結び付くいろいろなアイデアも、やり方を間違うとつまらないものになってしまうから注意が必要だ。

さて、いろんなアイデアを音楽に持ち込む事には反対どころか大賛成。チャレンジ精神なくして音楽の発展などあり得ないのだ。

で、先週は「飾り」の話しをしたのだけど、今日は「飾り」としてのコードネームについて書いてみます。




コードネームには音符と等しいくらいの決定権があります。
コードトーンとよばれる四つの音は、たとえ調が転調していて臨時記号で溢れようが「絶対的」に定められた音程を示しています。その音程とはコードシンボルによって決められたサウンド、つまりメジャーセブンスコード、ドミナントセブンスコード、マイナーセブンスコード、マイナーセブンス・フラッテッドフィフスコード、そしてディミニッシュコードの基本的な五種類のコードです。

一部にはマイナーセブンス・フラッテッドフィフスコードの事をハーフ・ディミニッシュという名称で示す場合もありますが、コードをコードスケールで分析する上では「半分ディミニッシュ」は意味としてあり得ないのであまり使わないほうが良いと思います。
ただし、今日はこれに非常に近い話しをします。

コードネームでこんな時に困った経験、ありませんか?

Cm6 と書かれていてセブンスがどうなっているのかわからない。
C9 と書かれているのはメジャーセブンスコードなの? それともドミナントコードなの?
C/A と書いているのはベースがAを弾くからAm7じゃないの?

他にもいろいろでしょう。たぶん。

一つ一つをココで解説している時間はありませんが、みんなそう書かれるには、必ず「理由」があるはずなんです。

その意味では、、

C7(alt)
Caug7

なども同じ意味合いを持っている場合が多く、それらは今日お話しする視点から理解されると「正しい」回答が得られるでしょう。

■dim???でも本当は・・・・

タイミングよくこのブログのユーザーの方からディミニッシュの解釈について書いた記事へのコメントをいただきました。

2010年1月29日ブログ『カモフラージュされたコードの素性を見破ろう・・・』→http://sun.ap.teacup.com/applet/vibstation/20100129/archive

上記のブログではベニー・ゴルソンが天才トランペッター、クリフォード・ブラウンに捧げた美しいバラード“I Remember Clifford”に潜む矛盾した「dim」の解説を行っています。
ディミニッシュは「コード」と考えるよりも一種の「サウンド」として捉えるべきなのですね。

なぜそんな「サウンド」がコードネームに紛れこんでいるのか?
その例を今日は「作曲者」の視点から解説してみます。

題材には僕の作品を引っ張り出してみましょう。
なぜなら作曲者自身が曲の解説をするほど正確なものは他にないからです。(笑)

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『SYNERGY/Toshihiro Akamatsu』(vega/2005年)Amazon他タワレコ等CDショップ&サイトで発売中!

2005年のアルバム『シナジー』。
僕のアルバムとしてはドラム、ベースを入れないチェンバー・ジャズスタイル初のアルバムとなりました。
その中の曲に僕のオリジナル“I've Seen Your Face Before In My Touch”があります。
英題が長いので邦題は“ジョビンに捧ぐ”としました。

ブラジルの作曲家、ボサノヴァの創始者の一人、アントニオ・カルロス・ジョビンが1994年に亡くなった時に捧げて作った曲で、当時六本木ピットインなどのバンドライブの途中でギター、ヴィブラフォン、ピアノのトリオで演奏していました。子供の頃から慣れ親しんだジョビンとボサノヴァに対する特別なオマージュとして作った曲です。
僕なりにジョビンの音楽を消化した音作りを目指しました。
普段ならサクサクと決めて行くコードサウンドに関しても、何度も吟味を繰り返し、選択肢のあるところでは何度も立ち止まって「ジョビンならきっとこれを選ぶよなぁ」という発想で曲を固めて行きました。

例によってしばらく寝かせた後、2005年のレコーディングにあたってはマリンバ(松島美紀)、ヴィブラフォン(僕)、ピアノ(村井秀清)のトリオ用にアレンジしています。
JASRACの資料によれば、昨年はNHKのテレビ番組のBGMに使われたようで僕の登録作品の中では2010年の「稼ぎ頭」(笑)。

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3曲目に収録

実は、このアルバムの中のライナーノーツを取りだすと・・・

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右端にこの曲の譜面が印刷されているのです・・・!

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ほらね!

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全曲の譜面はアルバム購入の特権として(笑)、今日の事に関わる部分を以下にピックアップしてみます。

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(クリックで拡大/以下同じ)

曲のセクションで言えばテーマの最後の部分「C」セクションの八小節。

ここのコードを見ると二小節目にGbdimとあります。
なぜここにGbdimというコードネームを置いたか。
作曲者の弁です。

題して、『わたしはこのような理由からディミニッシュと書いた』です。

元々この「C」セクションは次のようなスケッチから始まりました。

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メロディーとサウンドのスケッチとしてEbとDb、ベースラインはGbから下降する予定で、最初のGbはMaj7、次は同じGbベースでもマイナーか何かで次に繋がる・・・と、

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仮にGbMaj7-Gbm7-Fm7-E7とベースラインの下降に合わせて常識的なコードを並べてみました。
四小節目は次の小節がEbm7と決めていたのでドミナント・モーションを想定。そのままだとBb7になるがベースラインをEとしたので同じトライトーンを持つE7に置き換えた。

このコード進行が悪いわけではないが、なにか釈然としないものがあった。

特に二小節目のGbm7はひっかかる。
なぜかと思えばb7thのFb=Eの音がどうにも飛び出している感じで納まらない。
しかも、メロディーとして浮かぶのが「F」を伴うもの。
ちょっと考える余地あり。

四小節目はすんなりとメロディーとコードが落ち着いた(同時にメロディーに9thと#11thが入るのでココのコードスケールはリディアン・フラットセブンに決定)。

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ならば、二小節目はマイナー・コードで長七度音程を入れるとどうだろう?

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ううん。。。。

僕の中で今ひとつ釈然としないのが、Gbmというサウンドの冷たさだ。
本当にココで鳴っていてほしい音・・・・

・・・・

今鳴っている音ではない、本当にほしい音を選ぶためにその小節で鳴っている音を音程順に整理すると下からGb-A-Db-Eb-Fとなった。
曲の流れの中でこの音を鳴らすと、、、、

一つほしい音が見えて来た。

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ほしいのは・・・「C」。

Gbmがこの流れの中では冷たく聞こえていたのだけど、「C」を加えると求めていた「温かい」サウンドになった。

ここまでに二小節目としてほしい音をもう一度整理してみよう。

ほしいのは、下からGb-A-C-Db-Eb-F。
これを眺めていると、ある事に気付いた。

この音列を既存のコードに限りなく近い形に選り分けてみるとわかる。
つまり、F-C、A-Eb、Db-Gbという三組。

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F-C、A-EbはF7というコードのコードトーンになる。
DbとGbはF7というコードのテンションとして成りうる。
つまり、Db=b13th、Gb=b9th。
それ以外の音を調号との整合性から割り出すとハーモニックマイナースケール・パーフェクトフィフス・ビロウ(HMP5)が考えられる。
しかし、それでは「Ab」の音は完全に無くなってしまうのだけど、自分が予測するサウンドの中に「Ab」は完全に存在している。
そこでHMP5と良く似たスパニッシュ・フリージアン(HMP5+#9th)が有力候補となる。

スパニッシュ・フリージアンのコードスケールの中にある音をピックアップして「サウンド」として鳴らすと・・・

これがGbdimという事になるわけです。

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わたしがディミニッシュと書いたのは、コードと言うよりも「そこにほしいサウンド」を音符で書くようにコードネームで代用した、という事なのです。

もしもここに F7(b9)/Gb というコードが書いてあったとしたら、はたして僕が望むサウンドを誰もが容易く弾いてくれるだろうか?

そういう思いから、視覚的に分かりやすい「Gbdim」という表記を選んでいるのです。

続けてコードを厳選すると、次の三小節目のFm7というコードもどこかよそよそしい感じになります。
なぜならば調号からすればこの位置にFm7を置くとアヴォイドノートが多過ぎるからです。
Gb=b9th、Db=b13th、と七音階の内二音も響きを阻害する要因があるコードを選ぶのは気がすすみません。

メロディーとサウンドの骨格を流しながらこの部分のコードを探ってみましょう。

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するとDbがこの小節でも鳴ってほしいサウンドである事からベースのFと組み合わせると、ココは転回形のDbMaj7である事が特定出来ます。

合わせて六小節目のコードはメロディーを考えると#9thが入る事になり、この部分のコードスケールはコンデミである事が特定できます。
コードネームには#9を付けてコンデミである事を示します。

さらに最終小節のG7はメロディーが#9thが含まれているので#11thを表示する事でコンデミである事を示唆します。

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このような「サウンド」の具現化の過程に於いて、一番適切で簡素に「サウンド」を示す表記としてのdim表示がある事を自らの曲の例で解説してみました。

作曲側の心理をコードネームの振り方から予見出来るようなインプロヴァイザーを目指しましょう。
また、言いかえれば、「たった一つの正解のコードスケール」を吟味してコードネームの表記を選択しなければならないのが今日のジャズでの作曲者としての責任であり義務でもあるのです。

作曲ではそれぞれのコードに一つのコードスケールしか存在しないものだ。
それを演奏者の都合で勝手に書き換えてしまったら、その曲を演奏している意味が無くなってしまう。

そうやって手垢のついたような俗っぽい音を平気で出すような演奏は、昔から嫌いなんだよなぁ。。。(笑)


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