2011/10/13

ローランド・ハナとジョージ・ムラーツのデュオは想像する心を呼び起こす・・・  木曜:Jazz & Classic Library


1960年代の終りから1970年代後半まで、ジャズという音楽が最も普及していた国は日本だった。
それは来日するジャズ・ミュージシャンが日本で残して行く音源の数を見てもわかる。
けっして本国では取り上げないような組み合わせ、内容、をライセンスが許諾する範囲で制作していたのを目撃しながら僕らは育った。

その裏には、一にも二にも、ジャズ・アルバムは発売すると必ずコンスタントな数売れる、という社会的な図式があったからだ。

当時小学生でジャズを聴き始めた僕でさえ、学校までの通学路に「ジャズ喫茶」と冠する喫茶店が4〜5軒ある事に気付き、街全体でカウントしてみると13〜14軒はあった。

ジャズを聴くなら「ジャズ喫茶」、時々ホール公演のジャズコンサート。
今のようなライブハウスというものは極限られた店でしか行われていなかった。
つまり、音楽は社会的に「聴いて想像する」文化だったわけで、そのようなカルチャーの一番手頃な発信地が全国のジャズ喫茶だったわけだ。

そんなだからジャズのアルバムというのは、最低でもこのラインというボトムの安定した産業だったと言える。
とにかく、ジャズ喫茶が店内で流して広報活動してくれるのだから、こんな心強い応援団はいない。

ただし、1970年頃に日本で制作されたアルバムは、本当に未来を向いた意欲作であったかと言うと、そこには疑問も含まれる。

なぜかと言えば、ジャズアルバムにはもう一つの販路としてオーディオファイラーの存在が大きく、この人達は音を「鳴らす」事に興味を持っているわけで、「鳴らす素材」としてクラシックとジャズは恰好の標的でもあった。

それが証拠にビブラフォンに限って見てみても、僕が当時日本制作盤として買ったアルバムは特殊な用途も含んだもので、単純に音楽を聴くには少しだけ「物足りなさ」を感じた。(小生意気な小僧だね/笑)

ハービー・マンのバンドで来日していたロイ・エアーズ(vib)をリーダーとしてアルバムはミロスラフ・ヴィトウス(b)ソニー・シャーロック(g)ミッキー・ロッカー(ds)によるジャズスタンダードを並べたアルバムだったのだけど、こいつが45回転のLP。LPは通常33回転なのだけど、音質を向上させる為に45回転にしていた。
さらにアルバムのサイドキャップにはロイ・エアーズの事よりも大きく、「ダイレクトカッティング・45回転ハイ・クォリティー」の文字が躍っていた。
だから、フル・アルバムなのに回転数の関係で収録時間が半分しかない。
聴き応えの点でとても中途半端だった。
だからその後このアルバムは何処かへ行ってしまって行方不明だ。
今であれば貴重なロイ・エアーズのジャズプレイの記録であるのだけど・・・・

もう一つはゲイリー・バートンの東京公演を収めた日本だけで発売されたアルバム。

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『LIVE IN TOKYO/Gary Burton』(atlantic/1971年)

これは普通サイズのフルアルバム。
しかし、、これには次のようなシールが貼ってある。

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“QUADRA SONIC”
オーディオ機器のメーカーだったパイオニアが4チャンネルスピーカー・ステレオを売りだす為に、トラックを4チャンネルに分けてミックスしたアルバムで、通常の前の二つのスピーカーに加えて、後ろ側にエキストラスピーカーを二つセッティングするシステムで「ホールで聴いている臨場感を再現」するというものだった。

残念ながら(?)実家のスピーカーにはエキストラスピーカーが無かったので、その威力は体験出来ず、録音もやや乱反射した感じに小じんまりと聴こえたものだ。

この事例から見てもわかるように、国内制作となるとなにか新技術とのタイアップが無ければ成立しなかったようで、その辺りが今起こっているジャズをガッツリと聴きたい層には「中途半端」な印象となった。
このゲイリー・バートン・クァルテットの録音も、サム・ブラウン(g)ビル・グッドウィン(ds)はともかく、ベースが“あの”トニー・レヴィン(el-b)である事など、今となっては信じられないような組み合わせの貴重な記録なのだけど・・・・

前置きが長くなってしまったけど、実はそういう状況を知った上で今日のアルバムを聴いてみると、じつに面白いし、日本のジャズ・アルバム制作がようやく軌道に乗り始めた頃の息吹を感じられるかもしれない。


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『1×1/Roland Hanna & George Mraz』(東宝レコード1974年)

東宝映画の東宝レコードがディストリビュートしたジャズ・アルバムというのも珍しい。
当時、サド・ジョーンズ=メル・ルイス・ジャズ・オーケストラの花形プレーヤーだったピアニスト、ローランド・ハナとベーシスト、ジョージ・ムラーツという組み合わせからわかるように、サド=メルの来日公演のオフを利用して作られたアルバム。プロデューサーはジャズ評論家でもある悠 雅彦さん。

この人選は素晴らしいと思った。

こんなにジョージ・ムラーツがテクニカルてハートフルなベースプレーヤーであったのか、と驚かされてしまう。
どちらかと言えばライトな印象が濃いローランド・ハナのピアノをこれだけガッツリと受け止められるベーシストはいなかったんじゃないかと思えてしまう。

1.C Jam Blues
2.In A Sentimental Mood
3.Scrapple From The Apple
4.Perugia
5.Oleo
6.MyFunny Valentine
7.Wisful Moment

1974年3月9日、11日、東京録音。

4曲目と7曲目がローランド・ハナのオリジナルである以外はお馴染みの曲が並ぶ。

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なぜジョージ・ムラーツがジャケットに写っていないのだ?
ひっくり返すと後ろのジャケットに写っているのだけど、「どちらも正面」とでもしたかったのだろうけど・・・・どうもこれは企画倒れ、海外では通用しませんね。

いわゆる「スタンダード」と「オリジナル」のミックスサンドを食べさせられるわけだけど、これが意外にも消化不良を起こさない。
もしもドラムが入って、通常のピアノトリオの形態であったら事情は変わったと思うのだけど、デュオでドラムレスであった事がこの絶妙の密着感を生んでいて、なかなか飽きさせない。

「スタンダード」と「オリジナル」のミックスサンドは実はとてもリスキー。
どちらに比重を置くかで、スタンダードのやり方(アプローチ)は180度変わってしまう。

このアルバムは「スタンダード」7.5割、「オリジナル」2.5割のミックスサンド。
なので「スタンダード」を聴く耳で聴ける「オリジナル」が並んでいる。

どの曲のテイクも良い、な〜んで随分甘いようだけど、こんな軽快で聴きやすいアルバムが1970年代の半ばに日本で誕生していた事に嬉しさすら感じる。

凄い、ベタ誉めじゃん!

そう。

でも一つだけ不満はある。
なぜA面も、B面(5曲目からがLPのB面)も馴染みの曲で始めたのだろう?

全曲の中で突出した出来はハナのオリジナル“Wistful moment”だ。
二人のデュオという形がどの曲よりも有機的に機能しているし、この充実感がこの二人の華なのに、なぜか最終曲とされている点。

せめてB面の最初(5曲目)にでも持ってくれば、このアルバムの印象と言うか格調がグンとアップした。
A面も、B面も馴染みの曲で始まったら、C調なウケ狙い臭に包まれてしまう。
それではもったいない。
本当にそう思うくらい上出来の演奏ばかりなのだ。

もしもこれが日本全国のジャズ喫茶でかかっていたなら、その空間は躍動に満ち溢れたものになったでしょう。
もしもこれが日本中のオーディオファイラーのシステムから流れたら、一つ一つの音像がまるで目の前で楽器を奏でているように聴こえたでしょう。

わかります?

想像心。

たった二人の出す音の世界だけど、そこには想像のドラマーや想像のサックスや想像のヴォーカルを描けられる隙間があるんです。

そして聴き進む内に、それらの想像を超えたところにいる二人のミュージシャンの姿が浮かび上がって来るのです。

全国のジャズファンが「想像心」に満ちていた時代の記録がここにあると、言えますね。

音を聴いて想像する心。

音楽を聴く人はもちろん、音を出す人間に、今一番欠けている事です。
このアルバムは、今の日本人への一種のアンチテーゼかもしれませんね。




ガンバレ東北!

がんばろうニッポン!




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