2012/7/12

そう言えば、この人はフランスでいったい何をしてたのだろう? と思ったアルバム・・・  木曜:Jazz & Classic Library


アストラッド・ジルベルト、ミュウシャやシコ・ブアルキ、そしてエリス・レジーナとボサノヴァからMPB(Musica Popular Brasileira)への進化過程で登場するブラジルの女性シンガー。
みなそれぞれに魅力的で、前回は破天荒なエリス・レジーナがある日突然好きになったアルバムの事を書いた。

でも、まだ、重要な人物を一人忘れている。

ナラ・レオンだ。
大衆的で感情の赴くままに生きたエリス・レジーナとは犬猿の仲だった、ハイソサエティー出身のレオン。
まさに水と油、どちらかと言えばエリスが油でナラが水か・・・。

ボサノヴァ創成期の逸話には何度もナラ・レオンの名前が出て来る。
彼女の高級コンドミニアムに新しいブラジルの音楽を求めて連夜多くの若いミュージシャンが集っていたのは有名な話しで、ボサノヴァの“神”でもある、ジョアン・ジルベルトとアストラッドが出会ったのもナラ・レオンのコンドミニアムだったらしい。

彼女自身ボサノヴァの船出には大きく貢献し、自らもアルバムをリリースし若者から人気を博していたが、当時の軍事政権に反発してやがて歌詞はプロテストソング的となり、アレンジもボサノヴァからは程遠く、妙に勇ましいものや、おおいに皮肉めいたものなどが目立つように。

やがて軍事政権の締め付けから逃れるように、その頃の多くの若きブラジリアン・ミュージシャンと同じように国外へと一時的な亡命を果たした(例えばあの、大衆的なセルジオ・メンデスでさえアメリカへ一時亡命していた)。

亡命直前のアルバム『COISAS DO MUNDO』(Mercury/1969年)をCD化されてから初めて聴いたが、そこにボサノヴァと呼べるトラックは・・・・望むべくもない。

知的で才女で大きな目の童顔な彼女のうわべからは想像がつかないほど反骨精神に満ちていたのだろう・・・


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『DEZ ANOS DEPOIS/Nara Leao』(universal brasil/1971年)

1.Insensatez (Tom Jobim - Vinicius de Moraes)
2.Samba de uma nota só (Newton Mendonça - Tom Jobim)
3.Retrato em branco e preto (Chico Buarque - Tom Jobim)
4.Corcovado (Tom Jobim)
5.Garota de Ipanema (Tom Jobim - Vinicius de Moraes)
6.Pois é (Chico Buarque - Tom Jobim)
7.Chega de saudade (Tom Jobim - Vinicius de Moraes)
8.Bonita (Ray Gilbert - Tom Jobim)
9.Você e eu (Carlos Lyra - Vinicius de Moraes)
10.Fotografia (Tom Jobim)
11.O grande amor (Tom Jobim - Vinicius de Moraes)
12.Estrada do sol (Dolores Duran - Tom Jobim)

13.Por toda minha vida (Tom Jobim - Vinicius de Moraes)
14.Desafinado (Newton Mendonça - Tom Jobim)
15.Minha namorada (Carlos Lyra - Vinicius de Moraes)
16.Rapaz de bem (Johnny Alf)
17.Vou por aí(Baden Powell - Aloysio de Oliveira)
18.O amor em paz (Tom Jobim - Vinicius de Moraes)
19.Sabiá (Chico Buarque - Tom Jobim)
20.Meditação(Newton Mendonça - Tom Jobim)
21.Primavera (Carlos Lyra - Vinicius de Moraes)
22.Este seu olhar (Tom Jobim)
23.Outra vez (Tom Jobim)
24.Demais(Tom Jobim - Aloysio de Oliveira)

ずらりと24曲、たっぷりとアルバム二枚分だ。
ナラ・レオンのボサノヴァというのは実はそんなに多く聴けない。
YouTubeなどで来日した時の動画など貴重な映像を見る事が出来るが、アルバムとしてボサノヴァをこれだけピックアップしたものも珍しい。

自身ギターをつま弾きながら歌う事もあるが、伴奏者を携えるスタイルが標準。
で、その歌声にボサノヴァを感じるか? と言えば、これがストライク、ジャストミートなのだ。
ただし、これはその人の持って生れた才能の一つだから変えられないのだけど、やや知的な発音が鼻に付く時もある。
音楽って不思議で、僕はポルトガル語などさっぱりわからないのに、微妙な音、いや発音のニアンスで十分楽しめてしまうし、それが訳詞を見るまでも無く、なんとなく察している歌なんだな。

それは、インストの音楽を聞いている耳とまったく同じで、ちょっとしたニアンスの変化に、音が伝える想像を遥かに超えたメッセージをキャッチ出来てしまうのだ。
ボサノヴァであれ、ジャズであれ、そういうメッセージが伝わりやすい音楽であれば器楽であろうが歌であろうが垣根はない。
僕は子供の頃からラヴェルが大好きなのだけど、その好きさ加減に含まれる音のニアンスの広がりはまったくジャズもボサノヴァも同じなのだ。

たぶん、自分が発する音にも、きっとそれがあるはずだし、それをキャッチしてくれる人がいる限りこの壮大で人生を掛けた旅に終わりは無い。
ライブ偏重傾向を危惧するのも、そういった音の持つニアンスがちゃんと聞こえる環境とほど遠い場所で、面白い音楽を聴いた試しがないからだ。
耳を澄まして音を聴くなら、中途半端なライブよりもCDのほうが良い場合がある、という事だよ。

曲目のリストアップを見るまでも無く、聞こえて来る音楽はボサノヴァ全盛期のナンバー、つまりこのアルバムが録音された1970年の時点でも“懐メロ”と呼べるものばかりだ。

これに、ナラ・レオン、又は彼女のブレーンが原曲にちょっぴり施す“リハモナイズ”(部分的にコードを新たに置き換える事)や“りメロディー”(部分的に小節や音符を伸ばしたり削ったりして旋律をリニューアルする事)が、ある時は効果的に、ある時は考え過ぎで失敗しながら、1970年という息吹を伝えようとするのだけど、どう転んでも作曲家のアントニオ・カルロス・ジョビンの足元にも及んでいない。

この事は何を示すのか・・・・?

反体制派としてその名を馳せた亡命前のナラ・レオン。
それが古典的なボサノヴァを唄うとは・・・・

それはジョン・コルトレーンがプロデューサーと相談の上にミリオンセラーを意識したアルバム『Ballads』を制作した姿とダブってくる。
過激なステージを展開し、ある意味ではスピリチュアル・ジャズの頂点を極めていたコルトレーンが“売れ線”のアルバムを出すなどとは当時口が裂けても言えないマスが「どうしても気に入ったリードが見つからず仕方なく軽く流す曲ばかり録音した・・・」というデマまで流して発売した、あの永遠のヒット作を。

ナラ・レオンの場合、本当はいつごろまでプロテストソングを本気で歌っていたか、実はちょっぴり疑ったりしている。
それが当時の売り文句だった可能性がないわけでもない。
機転の利く彼女の事だ。

亡命をいい事に、その“すこし重たくなった衣装”を脱ぎ捨てたのかもしれない。
このアルバムの録音が亡命からそんなに時間が経っていない時に行われているのが、ついついそう思わせてしまうのだ。

それに、このレパートリー。
本当はコレ、ずーっと唄いたかったんじゃないの? って意地悪く思ってしまう。(笑)

アルバムは12曲目まででひと区切り。
録音状態が異なるので、ここからは別のアルバムを聴くつもりで良いと思う。

だからと言ってブラジルの新しい音楽の潮流でもあったトロピカリア度がグッと濃くなるかと言えば・・・
13曲目の“Por toda minha vida”が「おや? 70年代半ばに耳にしたMPBの雰囲気への期待大!!」となるのだけど、続く“Desafinado”が余りにも有名曲である事に肩すかし。多少のリハモナイズどころでは僕らの期待は満たされないのだ。
カルロス・リラの“Minha namorada”が再びMPBやトロピカリアを連想させてくれる。
明らかに60年代のボサノヴァと異なる、それでいてしっかりとボサノヴァ感を感じるこの不思議なMPBの世界。
より、ボサノヴァが音楽、ブラジル音楽としての原点へと近づいた成果かもしれない。
これはジャズにも言える事で、フリージャズまで到達した表現方法からコンテンポラリー、フュージョンへと表現方法が再構築していた1970年代らしい世界的なムーブメントだったのだろう。

ちょうど僕らはそんな姿を見ながら音楽に入って来たので、間口の狭い今の音楽では十分に満たされないのかもしれない。

このアルバムを聞いて思うのは、もちろんナラ・レオンという一人のシンガーのボサノヴァ表現の結晶という事は大前提として、それを遥かに超えたところに存在する、トム・ジョビン、つまりアントニオ・カルロス・ジョビンの存在だった。

スタン・ゲッツはかつてコンサートのMCで「ブラジルのコール・ポーター」とジョビンの事を紹介していたが、その言葉に間違いは無さそうだ。

良い曲とは、誰がどんなに表面を装っても消えない“らしさ”を持った曲、作曲家の存在があるものだと思う。
だから、いつの世も、音楽を作曲家がリードしていた。

ところが・・・・

「隣りのお嬢さん」みたいな感覚のアイドルを造成し始めた頃から「即席」が世の中の表面を覆い尽くしてしまって、本当の“美”が見えなくなってしまった。
その代表が、今や“美人”なんて言葉には何の特別な意味も無くなってしまった事に表れている。

音楽も同じで、いつの頃からか作曲家が育たなくなってしまい、クラシックから派生した音楽はもう行き場すら無くなってしまった。
本当に優れたシンガーソングライター以外に例を見るまでも無く、今では何の価値も無いオリジナルという言葉が表面的に溢れている。

プロテストソングという鎧が重たくなって、そんなのどーでもいいよ、私はシンガーなのだから、、、とナラ・レオンが異国でリセットした時に選んだものが、「これだけトム・ジョビン」の作曲家としての大きさだった、とすれば、このアルバムはナラ・レオンという一人のシンガーの分岐点ではなく、改めてトム・ジョビンの大きさを発見したナラ・レオンの肖像のようなものだと言えるんじゃないかな。

そうなると、今の世の作曲家諸氏はどんどん我々が思いも付かない世界を書き続けてくださいよ、と、祈らずにはいられないなぁ。。。。



『BEST LIVE 2011(動画)』公開中!


2011年11月24日ブログ『超・満員御礼! 赤松敏弘(vib)meetsハクエイ・キム(p)25-25プロデュース第六弾』http://sun.ap.teacup.com/applet/vibstation/20111124/archive

TOSHIHIRO AKAMATSU(vib) meets HAKUEI KIM(p) w/TARO KOYAMA(ds) & KUNIO OINUMA(b) @ 25-25Presents Special Live Vol.6

25-25プレゼンツ・スペシャルライブVOL-6。
『“赤松敏弘meetsハクエイ・キム”with小山太郎+生沼邦夫』

・当日のセットリストは以下の通り

[1st set]

1.Trisoniqe......(by Hakuei Kim)
2..White Forest......(by Hakuei Kim)
3.Sound of Focus.....(by Toshihiro Akamatsu)
4.[duet] Newtown......(by Hakuei Kim)
5.Ruby, My Dear.....(arr Toshihiro Akamatsu)
6.Axis.....(by Toshihiro Akamatsu)

[2nd set]

1.The Gleaner.......(by Toshihiro.Akamatsu)
2.[Tribute to 1964's Miles]......So What
3.[Tribute to 1964's Miles]......Stella by Starlight

4.[Tribute to 1964's Miles]......Walkin'
5.[duet] Silent Butler.....(by Toshihiro Akamatsu)
6.Kuala Lumpur......(by Hakuei Kim)

[Encore]

1.Dear Old Stockholm
2.O Grande Amor

Toshihiro Akamatsu(vib)
Hakuei Kim(p)
Kunio Oinuma(b)
Taro Koyama(ds)

Recorded live at KAMOME in Yokohama. Nov/23/2011

・セットリストの赤文字の演奏をアップしています。
・動画は従来通りMySpace版と、プラグインの関係でMySpaceビデオがご覧になれなかった人向けにYouTube版もアップしています。
・MySpace版YouTUbe版とも、どちらも同じ内容です。


[YouTube版]※画像をクリックすると別窓で開きます

★第二部1曲目



★第二部二曲目[Tribute to 1964's Miles-vol.1]



★第二部三曲目[Tribute to 1964's Miles-Vol.2]




[MySpace版]※画像をクリックすると別窓で開きます

★第二部二曲目[Tribute to 1964's Miles-vol.1]



★第二部1曲目



★第二部三曲目[Tribute to 1964's Miles-Vol.2]






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