2013/5/16

ヴィブラフォン弾きが聴いたビブラフォンの巨匠たちが若手と呼ばれた時代の音・第二回ゲーリー・バートン  木曜:Jazz & Classic Library


ヴィブラフォン弾きが聴いたビブラフォンの巨匠たちが若手と呼ばれた時代の音、第二回めはゲーリー・バートン。

ジャズを聴き始めた頃(実家一階のテナントに入ったジャズ喫茶の換気口から漏れ聞こえて来る不思議な音楽に興味を持った小学校五年生の頃)からしばらくの間は、トランペットやサックスの“騒々しい”音楽の印象がしていたジャズでも、なかなか覚えやすく、それでいてずっと頭の中でループしている曲に出会うようになった。

特にフルートは音が透るからよく聞こえた。

最初に覚えたのはそんなフルートの曲で、後に判明したのはハービー・マンの“Comin' Home Baby”。続いてトランペットのリー・モーガンの“Sidewinder”などで、なかなかヴィブラフォンがメインとなったものは出てこなかった。

しかし、毎夜自分の部屋で宿題をしようとしてもガンガン聞こえて来るこの“騒々しい”音楽、ジャズ。
僕らの世代標準のビートルズやレッド・ツェッペリン、BS&Tやシカゴなどのロックに比べると上品なもので、まぁ、これなら疲れないな、と子供心に思ったものだ。

今聴けば、このアルバムの何処がロックなのだろう? 初めての人はきっと思うだろうなぁ。
ロックビートがガンガン効いている曲なんか一曲もない。
でも、当時からしきりにこのアルバムをして『ジャズとロックが初めて融合した歴史的なアルバム』と形容されている。マイルス・デイビスよりも誰よりも早くロックを導入したと言われるのだけど、聞けば聞くほどしっくり来るどころか、今日のコンテンポラリージャズの原型に近い。たぶん、そう思うだろうな。

実はここで言う『ロック』とは、いわゆる8ビートを前面に出したビートポップの事ではなく、もっと違うロックの事を形容していたのだ。実は僕もそれに気付くまで随分と時間が掛かったのだが・・・・

それまでのジャズの表現と言うのは多少リズムがスイングからワルツに代わろうと、五拍子になろうと、アフロキューバンが聞こえて来ようと、いわゆる横の流れの中での“お約束”みたいなジャズ特有のフレーズ遊びというものがあった。それが聞こえて来ると「通」は“イェイ!”と頷いたり何らかの反応を示すのが音楽(ジャズ)としての楽しみ方、コミュニケーションにもなっていた。

ところが、このアルバムではそれらをまったく感じさせない。
自分達が思う通りに個人個人が演奏するのだ。
その自分達が自由に表現する、つまり何らかの横の流れに“お約束”を持たない演奏。
その代わりに曲一つ一つが独自のカラーを発しているのだ。
あるものはクラシックやコンテンポラリーに接近し、あるものはフォークソング、あるものはポップ・・・
実はそれこそがロック・スピリッツだったのだ。
つまり、このアルバムは、それ(ロック・スピリッツ=慣習にこだわる事なく)を初めて具現化したアルバムという意味で「ジャズとロックの融合」とされたわけです。

今ではミュージシャンがオリジナル・ソングを書き、思うように演奏し、メディアに発表する。
それが可能になったのも、実はこのゲーリー・バートンのアルバムの成功があったからなのです。


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『DUSTER/Gary Burton』(rca/1967年)

1. Ballet
2. Sweet Rain
3. Portsmouth Figurations
4. General Mojo's Well Laid Plan
5. One, Two, 1-2-3-4
6. Sing Me Softly of the Blues
7. Liturgy
8. Response

Gary Burton (vibe)
Larry Coryell (guit)
Steve Swallow (bass)
Roy Haynes (drums)


今ではゲイリー・バートンと活字で書くのが当たり前になっているのだけど、当時の表記はゲーリー・バートンだった。
もちろん僕を中学の頃からヴィブラフォンへと導いてくれた存在であり、後に唯一のヴィブラフォンの師匠でもある。
そんな師匠の事をあれこれと書くのもヘンだけど、このアルバムの事については今の時代だからわかる事がたくさんある。

実は僕にとっては三枚目のゲーリー・バートン。
1枚目はこのアルバムの次に出ていた『Lofty Fake Anagram(邦題:サイケデリック・ワールド)』(rca/1967)。フルートのハービー・マンの『Memphis Underground』(atlantic/1969年)で聴いたギターのラリー・コリエルに惹かれ追っかけで入手したもの。

2枚めはそれに続く『Carnegie Hall』(rca/1968年)。

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ちょうどこの写真に写っているアルバムだ。(スイングジャーナル1968年10月号広告より)

そこまで来てやっとこのアルバム『DUSTER』。


1曲目“Ballet”はモダンバレーのアクションやポーズを思わせるワルツ。実はEbのブルース・フォーム。サラリと駆け抜けたゲーリー・バートンに続いてギターのラリー・コリエルがブルースフレージングを引っ提げて登場する。メンバーがソロでそれぞれのカラーを出すところがいい。続くスティーブ・スワロウのベースソロの後ろではアンプを外したラリー・コリエルのカッティングがまた違った味わいを出す。

2曲目“Sweet Rain”はコンテンポラリーなバラード。この二曲はマイケル・ギブスによる曲だ。実はアルバム中、一番熱いソロを行うのがゲーリー・バートン。彼のリリシズムに反応するアンサンブルが聴きもの。ラリー・コリエルのソロは例えこれがある程度厳選された音使いによるものとしても時代を超えて響く。ハーモニクスの効果的な使い方がこの曲の決定的な魅力となっている。

3曲目“Portsmouth Figurations”はスティーブ・スワロウの作った曲。ドラムのロイ・ヘインズが大活躍。昔聴いてもわからなかったが、今聴いてもロイ・ヘインズのソロは独特のニアンスに満ちていて不思議だ。

同じくスティーヴ・スワロウの“General Mojo's Well Laid Plan”はフォークタッチ。このゲーリー・バートン・クァルテットはビートルズ、ボブ・デュランなど、当時のアメリカン・ミュージックをよく反映しているので聴くとホッとさせられるナンバーが多い。ゲーリー・バートンのメロディックなソロに続いてラリー・コリエルが少しC&W風なソロを取るのが面白い。続くスティーブ・スワロウのベースソロでは再びコリエルがアンプを外してフォークタッチなソロが続く。初めて聴いた時にこのアルバムのジャケットが脳裏に焼き付いた。

レコードだとB面の1曲目だったゲーリー・バートン作の“One, Two, 1-2-3-4”はアバンギャルドな世界に突入する為に用意されたもの。ラリー・コリエルがフィードバックから始め様々なロックギターの手法・奏法で一暴れ。続くゲーリー・バートンはメカニカルに空間を埋めつつ徐々にアグレッシブに。翌年のカーネギーホールでのライブ盤でも演奏していたが、あちらはさらに精度と迫力と過激さを増した最終形だった。それと比べるとこちらはまだ初々しさすら漂っている。

“Sing Me Softly of the Blues”はカーラ・ブレイのカーラらしいブルース。ラリー・コリエルのブルース・フィーリング炸裂かと思いきや、ゲーリー・バートンとソロをバースしながら展開する非常に理知的でジェントルな演奏。曲そのものが全てを表現しているのでこのようなスタイルの演奏でも十分にストーリーが生れている。

印象深い曲の多いこのアルバムだけど、このマイケル・ギブスの“Liturgy”に僕はこのバンドの全てを見たような気がする。短いながらもそれぞれのソロの内容は濃く、時に衝動的に、時に情熱的にメロディーをサウンドに乗せる。それでいて長過ぎず、いつまでも聴いていたいような気持にさせる魅力的な演奏。

ちょっぴり抽象的でコンテンポラリー・ミュージック的なバラード“Response”はゲーリー・バートンの作。
ここまでのどの曲にも無いニアンス。前々作『The Time Machine』(rca/1965年)を思わせるような実験的で哀愁のある世界。


久しぶりに全編聴き通して思うのは、曲の重要性だ。
このアルバムで取り上げられている曲全てに「ここだけにしかない世界」があり、それが一つのバンドという形態で奏でられるというところに魅力がある。

ロックというのは、自由を象徴する音楽だったから、8ビートで演奏するだけがロックではないという事を、このアルバムは1967年の段階で立証している。
それは、決して他のバンドが真似出来るものではなく、それぞれの個性と曲が一つの世界観を生むジャズの新しい方法論でもあった。

やがてこのやり方が世界中に浸透すると、彼等はそれぞれの道を歩み始め、次なる1970年代へと飛躍して行ったようだ。

自由に/曲を書き
思うままに/演奏し
発展的解消。

正にロックの精神、そのものだよ。

ヴィブラフォンの奏法に関しては前々作『The Time Machine』で一応の完成をみていたのだけどどうやらラリー・コリエルのチョーキングに刺激されたようでヴィブラフォンでのベンド(マレットを使って音程を変化させるテクニック)が新しく聴こえている。
ビブラフォンの歴史の点でも見逃せないアルバムだ。

今年70歳になったゲイリー・バートン。
誕生日にお祝いのメールをしたら半日と経たない内にレスが届いた。
そして6月に日本に行くよ! と。
もちろん昨年の夏前には知っていたので
6月に逢いましょう!と。

人間願えば叶う事がある。
諦めない事だ。
そしていつでも努力を惜しまない事だ。

こうしてゲイリー・バートン氏と師弟関係になるなんて、このアルバムを聴いていた中学の頃は思いもしなかったけれど、当時聴きながら心の中では、僕は必ず何処かで彼に巡り会う、ずっとそう思っていた。








★☆★ 2012 BEST LIVE (動画) ★☆★

Nov/14〜15/2012

Toshihiro Akamatsu (vibraphone)
Hakuei Kim (piano)

1st set (9:30pm〜10:50pm)

1.Winter Festival---by Hakuei Kim
2.The Gleaner-----by Toshihiro Akamatsu
3.Stella by Starlight
4.White Forest-----by Hakuei Kim
5.Nagi Moca suite---by Toshihiro Akamatsu
6.Newtown--------by Hakuei Kim
7.Silent Butler-----by Toshihiro Akamatsu
8.(encore)O Grande Amor

2nd set (0:48am〜2:09am)

1.Winter Festival---by Hakuei Kim
2.The Gleaner-----by Toshihiro Akamatsu
3.Stella by Starlight
4.White Forest-----by Hakuei Kim
5.Nagi Moca suite---by Toshihiro Akamatsu
6.Newtown--------by Hakuei Kim
7.Silent Butler-----by Toshihiro Akamatsu
8.(encore)On Green Dolphin St

Rec, Nov/14〜15/2012 @ Okaido"COLORFUL", Matsuyama, Ehime, JP

※赤文字の演奏動画を公開しています

ビデオカメラビデオカメラ【Crew Camera Series】■赤松敏弘 vibraphone Best Live 2012/Akamatsu meets Hakuei Duo/Nov/15/1:00am's StellabyStarlight (Full version)

ハクエイ・キム(p)赤松敏弘(vib)

2012年11月14日四国・松山でのライブ第二部のもので第一部と同じ曲の深夜の演奏です。
まったく違うイントロから始まった瞬間から純粋な即興演奏に突入しました。
デュオという最小公約数にして最大の自由度を持つアンサンブルでしか出来ない衝動の記録となりました。
ソフトのアップロード時間制限の為に10分未満の暫定バージョンを年末にアップしていましたが今回フルバージョンに更新。


ビデオカメラビデオカメラ【Crew Camera Series】■赤松敏弘 vibraphone Best Live 2012/Akamatsu meets Hakuei Duo/Nov/15/2:00am's GreenDolphin

ハクエイ・キム(p)赤松敏弘(vib)

あらゆる意味で刺激的だったこの日のライブの最終アンコール。時刻は午前2時です。
第二部の会場は半分以上が地元のミュージシャンやピアニスト、音楽関係者で埋まっていましたから二人ともよりアグレッシヴなOn Green Dolphin Stに。午前二時にこんなガチンコなライブをやる街は日本でも珍しいでしょう。さすがは我が故郷です(笑)


ビデオカメラビデオカメラ【Crew Camera Series】■赤松敏弘 vibraphone Best Live 2012/Akamatsu meets Hakuei Duo/Nov/14/9:53pm's StellabyStarlight

ハクエイ・キム(p)赤松敏弘(vib)

赤松・ハクエイDUOでのStella by Starlight。
このバージョンは2012年11月14日四国・松山でのライブ第一部のものです。
前月の横浜ジャズプロムナード2012でも評判だったこのスタイルのデュオがさらに一歩踏み込んだところでの演奏に。次の深夜のステージの演奏と比較するとまったく別の曲です。ジャズライブの楽しみ方で僕らはとても大きな事にこの時気付いたのでした。


ビデオカメラビデオカメラ【Crew Camera Series】■赤松敏弘 vibraphone Best Live 2012/Akamatsu meets Hakuei Duo/Nov/14/9:46pm's The Gleaner

ハクエイ・キム(p)赤松敏弘(vib)

四国・松山でのライブ第一部でのオリジナル曲The Gleaner。この日は入替え制という事もあり第一部も第二部も同じプログラム(アンコールを除く)でしたが、考えてみればクラシックのコンサートやポップスのコンサートとジャズのコンサートが大きく異なるのは、たとえ同じ曲を一日に二度演奏したとしてもまったく違う演奏になるのが当たり前。このライブではその当たり前な事を随分長い間僕らは忘れていた事に気づかされて、久しぶりに達成感で満たされたのを覚えています。


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ビデオカメラ【Crew Camera Series】TOSHIHIRO AKAMATSU meets HAKUEI KIM 2012. presented by T.KOYAMA. "SOUND OF FOCUS" comp by T.Akamatsu. 2010's album 『AXIS』(VEGA)




ビデオカメラ【Crew Camera Series】赤松敏弘、道下和彦、ユキ・アリマサTWIN DUO × TRIO オープニング"Be my love"




ビデオカメラ【Crew Camera Series】赤松敏弘、道下和彦 DUO 2011 演奏順/2曲目"TRITON 2011" comp by T.Akamatsu. 1991's album 『Now's The Time Workshop vol-2』(BMG FunHouse)




ビデオカメラ【Crew Camera Series】赤松敏弘、道下和彦 DUO 2011 演奏順/4曲目"I LET A SONG"




ビデオカメラ【Crew Camera Series】赤松敏弘、ユキ・アリマサDUO 2011 演奏順/7曲目"DAA HOUD". 2005's album 『Synergy』(VEGA)




ビデオカメラ【Crew Camera Series】赤松敏弘、道下和彦、ユキ・アリマサTWIN DUO × TRIO 演奏順/9曲目 アンコール




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『BEST LIVE 2011(動画)』


2011年11月24日ブログ『超・満員御礼! 赤松敏弘(vib)meetsハクエイ・キム(p)25-25プロデュース第六弾』http://sun.ap.teacup.com/applet/vibstation/20111124/archive

TOSHIHIRO AKAMATSU(vib) meets HAKUEI KIM(p) w/TARO KOYAMA(ds) & KUNIO OINUMA(b) @ 25-25Presents Special Live Vol.6

25-25プレゼンツ・スペシャルライブVOL-6。
『“赤松敏弘meetsハクエイ・キム”with小山太郎+生沼邦夫』

Toshihiro Akamatsu(vib)
Hakuei Kim(p)
Kunio Oinuma(b)
Taro Koyama(ds)

Recorded live at KAMOME in Yokohama. Nov/23/2011

[YouTube版]※画像をクリックすると別窓で開きます

★第二部1曲目



★第二部二曲目[Tribute to 1964's Miles-vol.1]



★第二部三曲目[Tribute to 1964's Miles-Vol.2]




ガンバレ東北!

がんばろうニッポン!




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■New Album『AXIS/赤松敏弘』(VEGA)
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VGDBRZ-0044/3.000円(税込)

赤松敏弘(vib)The NewQuartet
guest:森川奈菜美(vo)

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CDレビュー→http://www.jazzpage.net/rireki/cd/akamatsu_axis.html

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