2013/4/18

横に流してくれるタイプのドラマー、アルド・ロマーノのドラミングはいつもハーモニカル  木曜:Jazz & Classic Library


Be-Bop、又は一部でHard-Bopとも呼ばれる、いわゆるモダンジャズの創成期のスタイルの音楽を今日のジャズの祖とする人は多い。
とても個人的な事なのだけど、僕はバップと言うと甘酸っぱい記憶の中にある音楽になる。

マスメディアに興味もあった中学の頃に、よく学校の帰りに立ち寄っていた近所の地元の民放局のウエイティングルーム(テレビやラジオの公開放送に立ち入る時に待機する部屋)の受付をしていたロングヘアーでミニスカートのよく似合う彼女とひょんな事からジャズ談義になり、レコードを交換したり一緒に帰ったりする事があった。

その頃の僕はラリー・コリエルを追っかけてハービー・マン、ゲイリー・バートン、ランディー・ブレッカー、さらにはキース・ジャレットが気になるチャールス・ロイド、マイルス・デイビスなど、いわゆる当時のジャズカルチャーの最前線の縁取りを楽しんでいたのだけど、その彼女が貸してくれたレコードはもっとオーソドックスなジャズで、オスカー・ピーターソン、JATP、そしてジャッキー・マックリーンなど、バップからモード直前までのミュージシャンのものが多かった。

僕からすればちょっぴり大人なジャズに聴こえた気がするが、それは当時僕よりも十歳年上だった彼女の印象とダブっているのかもしれない。
だから僕は今でもバップを聞くと、その時の甘酸っぱい記憶が一緒に甦って来る。
もちろんそれは音楽の道を選んで音楽科のある岡山の学校に行く事になって自然消滅してしまうのだけど。

お気に入りのドラマー、アルド・ロマーノの新作が密かに注目していたイタリアの若手ピアニスト、アレッサンドロ・ランゾーニを加えたクァルテットでリリースされたと言うので迷わずゲットしてみた。


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『ALDO ROMANO' New Blood』(dreyfus jazz/2013年)

01. Who Killed Cock Robin
02. Wigglin'
03. Music Forever
04. Time to Smile
05. Theme for Sister Salvation
06. Jim Dunn's Dilemma
07. O.D. (Overdose)
08. Murmur
09. Conception
10. Ballade for Jackie

Aldo Romano - drums
Baptiste Herbin - alto sax
Alessandro Lanzoni- piano
Michel Benita - bass

僕の記憶が正しければピアノで参加しているアレッサンドロ・ランゾーニは今年で二十歳くらいのはず。
イタリアの新人ピアニストで14歳でデビューしている、今、ヨーロッパで注目のピアニストだ。
他のメンバーもサックスのパプチスト・ハーピンが25歳とまた若手で、このところジャズ界では定番となりつつあるシニアジャズメン(ロマーノが72歳、ベースのベニータは80年デビューのミドル)と若手との組み合わせになる。

さて、ドラマーのアルド・ロマーノは昔からお気に入りのドラマー。
先週は若手ドラマーの最新アルバムだったので、今週はベテラン・ドラマーの最新アルバム・・・と、言うわけではないんだけどね。

ドラマーの中でも“横に流してくれるタイプ”のドラマーとして、僕はこのアルド・ロマーノとラリー・バンカーの二人が好きだ。縦の線をきっちりタイトに打ち出してくれるドラマーとは違って、彼ら“横に流してくれるタイプ”のドラマーは演奏がまるでハーモニーのように聞こえる瞬間がある。

ラリー・バンカーは小気味良くドライブするリズムをベースにキックとライドでハーモニックなアプローチを演出する名人だったと思うし、それらは彼が参加したビル・エバンス・トリオのアルバムを聞けば一目瞭然だ。
アルド・ロマーノの場合はもっと感覚的で他の楽器をフィーチャリングする為の御膳立てにライドとキックを使ってまるでビロードのカーテンのような背景を創り出す。スティーブ・キューンのトリオでのアルバムがその好例。

かたやビル・エバンス、かたやスティーヴ・キューンというどちらも個性的なスタイルのピアニストを実に巧みにサポートしていた。
また、ラリー・バンカーはヴィブラフォン、アルド・ロマーノはボーカルも上手い。

アルド・ロマーノと言うと、やはり僕はスティーブ・キューンとのコンビネーションが深く印象に残っている。

1969年にBYGからリリースされた『CHILDHOOD IS FOREVER/Steve Kuhn』は中学時代の愛聴盤だったし、2003年になって突如CDでリリースされた89年録音の『OCEANS IN THE SKY/Steve Kuhn』(0wl/2003年)は今でも僕の車のリスニングチューンのベスト・ラインナップ。もちろんこの二枚ともドラムはアルド・ロマーノだ。

今は驚くべき貴重なシーンをネットで目撃できるので上記69年のアルバム録音直後のスティーブ・キューン・トリオの動画をどうぞ。ベースがスティーヴ・スワロウではなくペデルセンなのだけど、スワロウが弾いたベースラインを再演しているかのような珍しい演奏は貴重。


さて、今回のアルバムは、バップ時代のピアニスト&コンポーザー、フレディー・レッドの作品を主に演奏しているところが珍しい。
ドン・チェリーやスティーブ・レイシーといったどちらかと言えば前衛色やコンテンポラリー色の強いバンドで名前を見るようになったロマーノのイメージとは正反対のバップに彼が着目したのはなぜだろう? と興味津々だった。

僕もバップを聞く事は殆ど無くなっていたから、冒頭のような懐かしい記憶も甦りつつ、聴き進んでみた。


アルバムは1曲目から7曲目までがフレディー・レッドの作品集と言うか、往年のジャッキー・マックリーンとレッドのコラボレーションを彷彿とさせるバップ・イディオム。
8曲目がアルド・ロマーノのオリジナル、9曲目はジョージ・シアリングの超有名曲(ただし、この曲は若きピアニスト、アレッサンドロ・ランゾーニのソロの為に用意された)、最後はそのアルトのハーピンのオリジナル、という構成になっている。

まず、なぜ21世紀の今日にバップ??

この疑問は決してアルバムを聴いて解決(納得)したわけではないが、アルトサックスという楽器が一番映える音楽がバップなのかもしれないと再認識させてくれた。

と、言うのも若きアルト奏者パプチスト・ハーピンが非常に若々しく張りのあるトーンでバップのフレーズを吹いているのが、ある種の清々しささえ感じさせるからだ。
もちろん、これまでもいろんなアルトサックス奏者の演奏を耳にしたけどハーピンは格別に明確な演奏技術を持っていて、バップ・イディオムに逆らう事なく達者な演奏を繰り広げる。

僕の中でチャーリー・パーカー以外でバップらしい印象を放っているアルトサックス奏者は二人いてジャッキー・マックリーンとフィル・ウッズなのだけど、この両者よりもクールながらアート・ペッパーよりも遥かにホットな演奏なのには感心した。

ただ、この手のスタイルの泣きどころとして、どの曲も同じフレーズが羅列され気味なのだけど、ギリギリ嫌味にならないところで上手くまとめている。
たぶんバップ好きの人が聴いても同じ事を思うだろう。

それよりももっと興味深かったのがピアノのランゾーニの演奏。
こちらは一貫して自分のスタイルでバップを奏でている。
少し大袈裟な言い方をすれば、ブラッド・メルドーと同じスタイリッシュなピアニストである事がよくわかって好印象。唯一無二の世界を奏でている。
決してバップに迎合する事なく、自分流に演奏しているから聴きやすい。

その成果は1曲目“Who Killed Cock Robin”に結実。
オリジナリティーに溢れたピアノのランゾーニからバップ・イディオムが炸裂するハーベンへのソロの流れは実にスリリング。オリジナルのジャッキー・マックリーンにも優るとも劣らない溌剌としたアルトのソロは好印象。また、その後ろで最良のクッションをロマーノが演出。
バップのスリルと楽しさに溢れたテイクだ。

だからこのフレディー・レッドの曲が21世紀の空気にうまく溶け込めていて、時代の写し鏡になっている。これが無いとアルバムを聞いた満足感と言うか、達成感が僕は得られない。

さて、後半の三曲はバップ・イディオムから離れた世界でホッとする。

アルド・ロマーノの“Murmur”はモダン、コンテンポラリーな美しいバラード。
ランゾーニの個性が見え隠れするところに注目のテイクだ。

ジョージ・シアリングの“Conception”はランゾーニのあっさりとしたソロ用に用意されたトラック。ちょっとしたところにこのかなり個性的なセンスのピアニストの魅力が聞こえる。

最後の“Ballade for Jackie”はアルトのハーピンのオリジナル。ジャッキーはこのアルバムのコンセプトでもあるフレディー・レッドとジャッキー・マックリーンのコラボレーションに捧げたものだろう。ハーピンは本来はこのような新主流派のサックス奏者。確かにバップ・イディオムで演奏している時とは違う世界を描き出す。
さらにピアノのランゾーニはギリギリの世界を行ったり来たりするスリリングな展開のソロでハーピンを刺激する。

アルド・ロマーノがなぜ21世紀にバップを??

ヨーロッパの若きミュージシャンの息吹を演出する為に一番説明が必要なかったからだって事だね。

スクエアなドラミングではなく、いつものように“横に流してくれるスタイル”も随所で見せつつ、ロマーノらしいエンディングでした。

この“横”方向、やはり気持ちいい。
まるでリズムによるハーモニーの縁取りのようだ。

ボーカルのアルバムまで出してしまうマルチな才能を持つドラマーの感性は、やはり一味違っていますね。

お薦め!






★☆★ 2012 BEST LIVE (動画) ★☆★

Nov/14〜15/2012

Toshihiro Akamatsu (vibraphone)
Hakuei Kim (piano)

1st set (9:30pm〜10:50pm)

1.Winter Festival---by Hakuei Kim
2.The Gleaner-----by Toshihiro Akamatsu
3.Stella by Starlight
4.White Forest-----by Hakuei Kim
5.Nagi Moca suite---by Toshihiro Akamatsu
6.Newtown--------by Hakuei Kim
7.Silent Butler-----by Toshihiro Akamatsu
8.(encore)O Grande Amor

2nd set (0:48am〜2:09am)

1.Winter Festival---by Hakuei Kim
2.The Gleaner-----by Toshihiro Akamatsu
3.Stella by Starlight
4.White Forest-----by Hakuei Kim
5.Nagi Moca suite---by Toshihiro Akamatsu
6.Newtown--------by Hakuei Kim
7.Silent Butler-----by Toshihiro Akamatsu
8.(encore)On Green Dolphin St

Rec, Nov/14〜15/2012 @ Okaido"COLORFUL", Matsuyama, Ehime, JP

※赤文字の演奏動画を公開しています

ビデオカメラビデオカメラ【Crew Camera Series】■赤松敏弘 vibraphone Best Live 2012/Akamatsu meets Hakuei Duo/Nov/15/1:00am's StellabyStarlight (Full version)

ハクエイ・キム(p)赤松敏弘(vib)

2012年11月14日四国・松山でのライブ第二部のもので第一部と同じ曲の深夜の演奏です。
まったく違うイントロから始まった瞬間から純粋な即興演奏に突入しました。
デュオという最小公約数にして最大の自由度を持つアンサンブルでしか出来ない衝動の記録となりました。
ソフトのアップロード時間制限の為に10分未満の暫定バージョンを年末にアップしていましたが今回フルバージョンに更新。


ビデオカメラビデオカメラ【Crew Camera Series】■赤松敏弘 vibraphone Best Live 2012/Akamatsu meets Hakuei Duo/Nov/15/2:00am's GreenDolphin

ハクエイ・キム(p)赤松敏弘(vib)

あらゆる意味で刺激的だったこの日のライブの最終アンコール。時刻は午前2時です。
第二部の会場は半分以上が地元のミュージシャンやピアニスト、音楽関係者で埋まっていましたから二人ともよりアグレッシヴなOn Green Dolphin Stに。午前二時にこんなガチンコなライブをやる街は日本でも珍しいでしょう。さすがは我が故郷です(笑)


ビデオカメラビデオカメラ【Crew Camera Series】■赤松敏弘 vibraphone Best Live 2012/Akamatsu meets Hakuei Duo/Nov/14/9:53pm's StellabyStarlight

ハクエイ・キム(p)赤松敏弘(vib)

赤松・ハクエイDUOでのStella by Starlight。
このバージョンは2012年11月14日四国・松山でのライブ第一部のものです。
前月の横浜ジャズプロムナード2012でも評判だったこのスタイルのデュオがさらに一歩踏み込んだところでの演奏に。次の深夜のステージの演奏と比較するとまったく別の曲です。ジャズライブの楽しみ方で僕らはとても大きな事にこの時気付いたのでした。


ビデオカメラビデオカメラ【Crew Camera Series】■赤松敏弘 vibraphone Best Live 2012/Akamatsu meets Hakuei Duo/Nov/14/9:46pm's The Gleaner

ハクエイ・キム(p)赤松敏弘(vib)

四国・松山でのライブ第一部でのオリジナル曲The Gleaner。この日は入替え制という事もあり第一部も第二部も同じプログラム(アンコールを除く)でしたが、考えてみればクラシックのコンサートやポップスのコンサートとジャズのコンサートが大きく異なるのは、たとえ同じ曲を一日に二度演奏したとしてもまったく違う演奏になるのが当たり前。このライブではその当たり前な事を随分長い間僕らは忘れていた事に気づかされて、久しぶりに達成感で満たされたのを覚えています。


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ビデオカメラ【Crew Camera Series】TOSHIHIRO AKAMATSU meets HAKUEI KIM 2012. presented by T.KOYAMA. "SOUND OF FOCUS" comp by T.Akamatsu. 2010's album 『AXIS』(VEGA)




ビデオカメラ【Crew Camera Series】赤松敏弘、道下和彦、ユキ・アリマサTWIN DUO × TRIO オープニング"Be my love"




ビデオカメラ【Crew Camera Series】赤松敏弘、道下和彦 DUO 2011 演奏順/2曲目"TRITON 2011" comp by T.Akamatsu. 1991's album 『Now's The Time Workshop vol-2』(BMG FunHouse)




ビデオカメラ【Crew Camera Series】赤松敏弘、道下和彦 DUO 2011 演奏順/4曲目"I LET A SONG"




ビデオカメラ【Crew Camera Series】赤松敏弘、ユキ・アリマサDUO 2011 演奏順/7曲目"DAA HOUD". 2005's album 『Synergy』(VEGA)




ビデオカメラ【Crew Camera Series】赤松敏弘、道下和彦、ユキ・アリマサTWIN DUO × TRIO 演奏順/9曲目 アンコール




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『BEST LIVE 2011(動画)』


2011年11月24日ブログ『超・満員御礼! 赤松敏弘(vib)meetsハクエイ・キム(p)25-25プロデュース第六弾』http://sun.ap.teacup.com/applet/vibstation/20111124/archive

TOSHIHIRO AKAMATSU(vib) meets HAKUEI KIM(p) w/TARO KOYAMA(ds) & KUNIO OINUMA(b) @ 25-25Presents Special Live Vol.6

25-25プレゼンツ・スペシャルライブVOL-6。
『“赤松敏弘meetsハクエイ・キム”with小山太郎+生沼邦夫』

Toshihiro Akamatsu(vib)
Hakuei Kim(p)
Kunio Oinuma(b)
Taro Koyama(ds)

Recorded live at KAMOME in Yokohama. Nov/23/2011

[YouTube版]※画像をクリックすると別窓で開きます

★第二部1曲目



★第二部二曲目[Tribute to 1964's Miles-vol.1]



★第二部三曲目[Tribute to 1964's Miles-Vol.2]




ガンバレ東北!

がんばろうニッポン!




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CDレビュー→http://www.jazzpage.net/rireki/cd/akamatsu_axis.html

CDレビュー→http://www.jazzfusion.com/cd2010/axis.htm

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