2006/4/6

時代と生きるジャズボーカリスト  木曜:Jazz & Classic Library

マイケル・フランクス(Michael Franks)と言うとジャズシンガーよりもAOR(アダルト・オリエンテッド・ロック)の重鎮として認知されていると思うけど、CDショップに行くとしっかりジャズボーカルのコーナーに置かれているんだな、これが

こんな事を言うと世のジャズボーカリストから顰蹙(ひんしゅく)をかうかもしれないけど、僕は歌は耳もとで優しく歌ってくれるのがいい。インストの世界にだって様々なスタイルと音楽があるように、ジャズボーカルの世界にもいろいろとあっていいんじゃないか? わけのわからない発音で英語の歌を聞かせるくらいなら、日本語で歌ってもジャズを感じられる音楽もあってしかり。壮大で壮絶なスケールの歌もあり、鼻歌のような歌もあり。スタイルじゃなくメッセージとしてのジャズボーカルが今日もっとほしいと思うのは僕だけだろうか 

好むと好まざるに関わらず、ポップスやロック、ラップの世界では日本語もその他の言語も分け隔てないレベルにまで歌詞として成熟しているというのに。。。

アナタは相変わらず「雰囲気」というものがわからないのねってツッコミがチト怖い。。。(^へ^

さて、マイケル・フランクスである。
1977年、ちょうど楽器を運ぶ為に必須の運転免許を取得し学生時代も後半をむかえ楽器を積んであちらこちらと演奏に出掛け始めた頃だ。
小学校から始まったジャズ遍歴はますます佳境を迎え、“ジャズ=命”と、顔に書いてあったかどうかは定かでないが、かなりのめり込んでその影響は24時間、生活や精神までをも蝕んで(?)いたかもしれない。

そんな頃の夏休みに帰省先の松山で、行き付けのレコード屋『まるいレコード』の店長“KANちゃん”(松山の音楽シーンでこの人の事を知らないジャズ、クラシック・ファンはいないほどの名物店長)のところに顔を出した時の事だった。
「これ、売れると思うかね?」と取り出した1枚。
いつも行くと刺激的な音楽の最新情報を僕に提供してくれるのだ。
「うん?」
いつものシビアでシリアスなジャズと違ってそこに広がったのは「ポワ〜ン」とした世界。こりゃいいや!
歌に続くソロやバックのサウンドは当時聞き慣れていたウエスト・コースト・サウンズ。「ピアノだれ?」「ジョー・サンプル」「サックスは?」「マイケル・ブレッカー」「へぇ〜〜」。

「ちょっとジャケット見せて」と取り上げたのがコレ↓
クリックすると元のサイズで表示します
「Sleeping Gypsy/Michael Franks」<Warner Bros/1977年>

KANちゃんが「売れるかね?」と言った数カ月後、その言葉通りに、このアルバムの中の「アントニオの歌」はあらゆるFMステーションで流れ、ジャズアルバムとしては記録的にヒットした。

もちろん、あの夏“KANちゃん”と会った日以来、僕の車のカーステレオにはいつもこのアルバムがセットされ、1970年代後半の日本の風景と空気の中を、演奏に、ドライブに駆け巡る僕のドライバーズシートに一服の清涼剤のような空気を吹き込んでくれた。
ジョアン・ジルベルト、チェット・ベイカーといったジャズ、ボサノヴァ・ボーカルが好き、という事からは遅かれ早かれマイケル・フランクスに直結するのも時間の問題だったかも

後にスタジオの仕事を始めた時に、このアルバムのサウンド・アイテムは様々なシーンで役に立った。スタジオに入って、目の前に簡単なコード譜だけ、オケを一回聞いて、さぁ本番を録音、という今日のスタジオワークの原点とも言えるエキスが垣間見えるアルバムでもある。それだけ好きで聞き込んでいたからかもしれない。

そしてその後に知り合った、たくさんのジャズミュージシャンのその殆どがこのアルバムを愛聴していた事実。

マイケル・フランクスはAORのシンガー・ソングライターである。しかし、それは今日のジャズボーカルのあるべき姿を具体的に綴った、紛れも無いジャズシンガーだと思う。
最新のスタジオ・サウンド、時代のエッセンスを、リラックスして聴きたい時には、
是非最新のマイケル・フランクスを聴いてみてほしい

昔全国に居た“KANちゃん”のような耳と知識を持ったレコード屋のジャズ番がいれば、今日の音楽はもっと豊かで面白いものになっているんだが・・・

全国でジャズファンに成りかけの人達は、何を探せば良いかわからずに、あても無くさまよっているかもしれないんだよ

おしまい



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