2007/11/29

聡明な時・・・・・・・・谷川賢作(p)  木曜:Jazz & Classic Library

過去において影響を受けたミュージシャンはたくさんいる。

ただ聴くだけで影響を受けていた人、
近くにいて影響を与えてくれた人、
一緒に演奏して影響を受けた人、、、、、

僕らは音楽が生活の基準だからそういった影響は音に現れる。音楽以外の人からの影響もあるかもしれないけど、やはり音楽から受ける影響が一番先にくる。仕方ない、そうやって生きてきたのだから。

みなさんの周りにもいるでしょ?いろんな事で影響を与えてくれる人が。

今夜紹介するのは、遠い時の向こうの人でもなければ、遠い場所にいる人でもない。ある意味で僕らの音楽仲間の中の一人の作品。

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『PIANO SOLO Vol.3/谷川賢作』(Troubadour cafe/2004年)

1983年頃だったと思う、彼と最初に会ったのは。当時、南浦和の駅前にあった一風変わったライブハウス“歪珠亭”(ひずみだまてい)のオーナーC氏が出演していた池袋のライブハウスに訪ねて来られ「是非一度ウチでやってみませんか?」とお誘いを受けて出掛けた時の事だった。そこで初めて顔を会わし紹介されたまだ青年のピアニスト(自分もだけどね!)が彼だった。

ミュージシャンは最初の印象というのが大切で、その時に彼が出してきたオリジナル曲(Rain Drops)を弾きながら大いに感心した。初めて演奏する曲なのに自分が思い描く方向に音楽が流れて行く快感のような物を感じた。それはとても良い刺激で当時僕がまだ確立出来ていなかった音楽のある部分を彼はすでにちゃんと形にしていたのだった。
しばらくの間、お互いのオリジナルを出し合いながら一緒に演奏した。
演奏は日増しに熱くなり、感情をモロにぶつけるかのような演奏が当時のカセットテープに残されている。ピアノとヴィブラフォンという似通った性質からか、お互いに一歩引いた表現よりもぶつかり合いに快感があったのかもしれない。
僕は20代中盤、彼は20代前半だった。

うぬぼれでも何でもなく、当時僕が同世代のオリジナル曲で感心させられた唯一の存在で、彼の持つ「二面性」が生かされた音楽はどれも情熱的で好きだった。

しばらく一緒に演奏した後に、音楽仲間ではよくある事だけど、どうしても一緒になれない部分があってお互い納得が出来ずにそれぞれの道に進む事にした。
それから四半世紀。

今年の春先にあるライブハウスに忘れ物(販促用のCDサンプル)を取りに行った時、たまたま出演していたのが彼だった。
四半世紀を経て久し振りに彼の演奏を観て思ったのは、「あの時」を生きている逞しいピアニストだと。

久し振りなのでお互いのアルバムを交換して帰ったその時の作品がこのアルバム。

この中の何曲かは当時あの不思議なライブハウス“歪珠亭”で演奏した記憶のあるもので、「ああ、これは・・・」という懐かしさというだけでなく「あの時」の何とも言えない感情が渦巻く時代を今に蘇らせてくれる。“歪珠亭”とは若いミュージシャンに演奏の場を与えてくれて亭主も毎晩ライブを楽しみながら時に激論を交わす(深夜まで)事もあるという今では考えられない空間だった。富士山の花崗岩と大理石に包まれた生音で演奏する事を目的としたサロン。彼はその“歪珠亭”のハウスピアニストとして音楽の修行中だった。

谷川賢作の音楽をリリカルと言う人もいるけど、僕はそんなセンチメンタルな感じでは受けとめていない。

「スリル」

例えば転調ひとつ取っても彼の音楽には「スリル」や「快感」というものがある。
また、こらえきれないほどの「激しさ」で満ちあふれている時だってある。ピアニシモで弾いていても、その次に突然どんな表情に変貌するのか、ちょっとドキドキさせられる。
僕が好きな「どきどき」「わくわく」がいつでも存在しているんですね。

昔の広告コピーではないけど、「芸術は爆発だ!」という言葉のとおりなんだ。

もしも音楽に年齢があるとしたら、青々とした息吹を感じる年齢の音楽。
実際の年齢なんかどうでもいい。そこで出している音にそれがあるかどうかが僕は一番大切だと思う。年老いてイジケた音楽なんか聴きたくない。

ジャズ・ジャーナリストの小川隆夫さんが僕らの音楽を「どきどき。わくわく」という言葉で形容してくれた事がある。
四半世紀の昔に彼の音楽に感じたものもそれと同じものだったと記憶しているし、こうして最近の彼のアルバムを聴いて同じように感じるのは、「あの時」彼に影響を受けて広がった自分の世界なのかもしれない、と思いながら聞き返してみるのでした。

谷川賢作ホームページ

おしまい



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